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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第五章 令和最小のミステリー
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5-4 わたしのパーパはКГБ(カーゲーベー)

КГБ(カーゲーベー)……‼」

 折笠さんが白目をむいて叫んだ。


「知っているんですか。折笠さん」


「ロシアでКГБを知らない人間はいないわ。旧ソ連国家保安委員会。

 ロシアの秘密警察であり、諜報機関。泣く子も黙るКГБ。一般にはKGBとして知られているわね。ロシアの現大統領もКГБ出身といわれているわ。現在は解体されたけどね」


「ちなみにあたしは政策にはノータッチよ。世界中の人が仲良くすればいいのにって思っている。そのパーパは森でホッキョクグマと戦って相打ちになって亡くなったわ」姫川マーマは語った。


「すご……!」


「あたしは大っ嫌い。みんなの嫌われものだよ。軍人なんて、命令を免罪符に悪いことも平気でする人類の恥部だね。建設的の反対語だよ」

 天音さんは不機嫌になった。

(※КГБ職員は軍属になる)


「またそんなこと言って。家族の悪口を言うもんじゃないわ」姫川マーマがいさめた。


「だから天音さんは軍人が嫌いだって言ってたんですね」


「とりあえずハッピーバースデイしません?」

 黒咲ノアちゃんが提案した。


「なにか忘れていると思いました。お姉さまのお母さまのインパクトが強すぎます」

 村雨さんもわれを取り戻した。


 天音さんの私室に案内される。32インチテレビにゲームハードが複数接続されてコードが動脈のようだ。電源を入れれば脈打っても相異ない。


 本棚には書籍と攻略本が無秩序にひしめき合っている。天文関係、スピリチュアル、パソコンスキル関係、格闘ゲームの攻略ムックや古いゲームの攻略本たちが共存している。コミックは一冊もなかった。


「あんたの部屋散らかってるわね。少しは片づけなさい。おまえ何型だ?」

 折笠さんはしかめっ面。


「A型だけど?」


「A型は公共の場は片づけるけど、自分の部屋は散らかってるのよ」

 折笠さんは持論を展開した。


 天音さんは反論しなかった。思いあたるふしがあるのだろう。


「見たことのないゲーム機があります」

 わたしこと鳴海千尋は黒いハードを指さした。


「三〇年位前のゲームハードだね。このころはネットに繋がらないゲームが主流だった」


「ネットに繋がらない? それじゃバグがあっても修正プログラムを流せないじゃないですか」


「そうだよ。致命的なバグがあると回収騒ぎになったりしたの」


「まじか。デバッグ大変ですね」


「ネットがないから対戦はすべてリアル対人。友だちがいない人はぼっち」


「寂しいですね」


 骨董品レベルのゲーム機が現役で稼働している天音さんはハードゲーマーだった。

 

 ぜんぶ彼女の想い人の男性が行方不明になったときに譲り受けたという。彼の父親がゲームコレクターだったという。


「あたしのお気に入りはヴェガネプチューン。ヴェガのゲームは面白い」


 ヴェガとはソフトメーカーである。大昔は自社ハードも発売していたとか。


「パソコンスキル系の書籍はなんのために?」


「あたしパソコンの資格五つ持っているから」


「えええ? すごいですね」


「スピリチュアルの本は?」


「宇宙と繋がるため」


「宇宙?」


「そう。瞑想では宇宙と繋がることが大切なの。毎晩宇宙と繋がってサインをもらっている」


「宇宙の大切さをアンダスタンド(ノア言語ではよく英語を盗作する)しているマスターはボクと同じ光の騎士ですね。ちなみにボクは毎日アカシックレコードにログインしています」 


 黒咲ノアちゃんがここぞとばかりにアピール。


「詳しいわね、ノア」


「アカシックレコード?」わたしは素っ頓狂な声をあげた。


「宇宙の過去・現在・未来がすべて記録された領域のこと」

 天音さんが教えてくれた。


「天音さんはコミック読まないのですね。意外です」

 わたしは本棚に視線を移した。


「コミックは全部電子で買ってる。コミックを紙で買う人は〇〇(侮蔑用語)だね。

 紙は劣化するから永遠には持っていられないし、新しい作品を読みたくなったときに古い作品を手放すことになる。本棚のスペースは有限だからね」


「それはちょっと待ってください! お姉さまでも聞き捨てなりません! 紙の書籍という『物』で所有することが作家への最大のリスペクトなのです。それはコミックでも変わりません! 電子書籍にサインができますか?」


 小説家志望の村雨さんが声を荒らげる。彼女と天音さんが口論しているところをはじめて見た。


「サイン本を売っちゃう人もいるからね」


「そんな所業は許せません! 創作者に対する冒とくです! 地獄の果てまで追いかけて仇をとります」


「ファンはドライなんだよ。熱しやすく冷めやすい。それが読者なんだよ」


「お姉さま……! いくらお姉さまでもこの仕打ちはあんまりでございます」

 村雨さんの目元に熱い液体がにじみでた。



つづく



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