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第三話 【夢恋人】

少し更新が遅くなってしまいました…

これからも不定期更新にはなると思いますが、気長に待っていただけると幸いです。

 香乃さんの言葉に甘えて自室で休憩する。

 といっても来客の予定がまだある以上、着物を脱ぐ訳にもいかないので、じっと座るのみ。これは休憩と言えるのか?


(姫様、昼食の準備が整いました。お食べになりますか?)


「そんな時間なのね。もちろん、食べるわ」


 この時代に時計はない。日の出から日没を基準に明るい時間を昼、暗い時間を夜と判断し、それぞれ6等分にして、2時間を一刻としていた。

 そのことは知っていたが、実際に経験するとなかなか難しい。


 香乃さんの指示に従うしか方法がない。文化の発展は凄いなと改めて実感する。


 昼食を頂いて、また少し自室で休憩する。

 もう一人の来客者は忙しい人だから時間の指定はないそうだ。今日中という事しか聞かされていない。


 忙しいってどういった類の忙しいなんだろう?大名とか?

だとしたら、また頭を抱えなきゃいけないのか。えらく緊張してきたな。


 昼食後、2時間経っても客人が来ないため、香乃さんが桃山小袖を持ってきてくれた。


 軽い。めちゃくちゃ楽だ…。

 動きやすさに感動していると急に睡魔に襲われた。それも当然か。


 自分の部屋で寝ていたはずが、いきなり戦国時代に来ていて。状況が飲み込めないまま最推しの仇に求婚されて。これからまた別の武将に求婚されなくちゃいけない。沢山、頭を使ったのだから、疲れていても不思議ではない。


「香乃さん、少し眠たくなってしまって…しばらく仮眠を取らせて頂いても良いかしら?」


(考えることが多すぎて疲れてしまうのは無理もありません。客人が来られましたら、お越しに参りますので、それまではゆっくりとお休みになってください)


 布団に寝転がった瞬間に私は眠りについた。

 夢を見た。

 父と叔母、そして知らない男性二人と私は笑い合っていた。


 現代に帰りたい。二人に会いたい。

 また目が覚めた時にはいつもと変わらない現代での生活に戻っていないかしら。

 推し二人に会いたい気持ちはあるが、こうして夢に父と叔母が出てこられると、帰りたい気持ちでいっぱいになる。


 どうか、このまま…


(…姫様!…藍姫様!!)


 名前を呼ばれて目を開ける。

 そこは先程まで居た津之江城の自室。ダメだったか…


(大丈夫ですか?客人は来られていませんが、姫様の様子を伺いに来たところ、うなされておりましたので、起こさせていただきました)


「そうなのね、ありがとう。大丈夫よ。夢を見ていたの。なんだか凄く懐かしい夢をね」


(しかし、お気持ちが晴れないご様子。今は見たくない夢だったのですか?)


「そう…だね。悲しくなっちゃった」


(相当、お疲れのようですね。今日のところは客人にお断りしますか?)


「それは相手に失礼じゃない!私のことは気にしないで。本当に大丈夫だから」


(…かしこまりました。あまりご無理をなさいませぬよう)


 心配そうな顔をしながら香乃さんは自室を出ていく。

 申し訳ないことをしてしまったかしら。父と叔母の夢を見て少し心に余裕がなくなった。

 ちゃんと謝らないとな…


(姫様、客人が来てしまいました。お部屋に入ってもよろしいでしょうか?)


 寝起きで乱れた着物を直していると、香乃さんがやってきた。

 起きてから十分ほどしか経ってないけど!?


「分かりました、どうぞお入り下さい」


(失礼します。お着物を直されていたのですね。申し訳ないのですが、打掛に着替えて頂かねばなりません。よろしいでしょうか?)


「もちろんよ。お客様に失礼ですからね。待たせることになるけど、そのあたりは大丈夫なのかしら?お忙しい方なのでしょう?」


(説明して了承を頂いているので、大丈夫です)


 既に対応済みでしたか。さすが、香乃さん。

 現代で香乃さんに向いてる職業はきっと秘書だろうな。優秀な秘書になるに違いない。


(頷いていらっしゃいますが、どうされましたか?)


「あ、気にしないで。香乃さん、さっきは冷たい態度を取ってごめんなさいね。夢を見たことによって心に余裕がなくなってしまったの。本当に申し訳ない」


(そんな!姫様が私に謝る必要などございません!どんなことでも姫様を支えるのが私たち侍女の努めでございます。ゆえに気になさらないでくださいまし)


「ありがとう。また冷たい態度を取っちゃうことがあるかもしれない。でも、香乃さんたちのことが嫌いという訳じゃないからね。」


(そのお気持ちだけで私たちは幸いにございます)


 話しながらも手を止めず、テキパキと私に着物を着させていく香乃さん。

 やっぱり優秀だわ。


 十分ほどで打掛姿に変身。急いで客間に向かう。


 そこには男前な武将が居た。

 戦国時代でここまでイケメンとは…そして忙しい人物。

 かなりの大物に違いない


「そなたは藍姫であろう?やっと会えた…ずっと探していたのだぞ」


 何故か泣きそうになっている武将。

 いや、誰ですか。どういう状況ですか、これ。


「私が藍姫にございます。あなた様の名をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「誰か分からないのか!?夢でずっと一緒に過ごしていたではないか…」


 いや、分かるか!

夢でこんなイケメンに会ってるわけがない!会ってたら覚えてるって。


「申し訳ございませぬ…本当に分からなくて」


「そんな顔をするな。急に夢で過ごしていたと言われても困るよな。同じ夢を見ていたとは限らないしな。申し訳ないことをした、許してくれ」


「いえ、とんでもございませぬ。して、お名前は…?」


「私は陸奥国の伊達政宗にございます」


 えっと…今なんて?推しの名前が聞こえてきた気がするのですが。


「だ、伊達政宗様ですか?」


「左様。」


 はい、まさかの推しが登場しました。

 戦国時代に来て初日だよ?初日に推しに会えるの?そんなことがあって良いの!?

 政宗は確かに忙しい武将だ、納得。


「さっきの夢の話を聞いてはくれぬか?姫に会ってこの話をしたかったのだ」


「是非、お聞かせください」


 政宗から夢の話を聞いた。正直、かなり驚いた。

 内容はこうだ。


 2年ほど前から政宗は良く夢を見るようになったそうだ。

 その夢に必ず、現れる女性が居た。

 夢を見る度に出てくるその女性のことを政宗は段々と気になり始めていた。


 そこで政宗は女性に色々と質問するようになった。

 どこに住んでいるのか、名前は、年齢は、好きな食べ物は、と様々だったと。


 好きな食べ物や趣味などは難なく聞き出せたが、肝心の所在地と名前は聞き出すことが出来なかった。女性がその質問に答えようとすると目が覚めてしまうという状態を繰り返していたそうだ。


 半年間、粘りに粘ってやっと夢の女性である私の情報を集めたらしい。

 執着が凄い…でも、めちゃめちゃ嬉しい。

 まさか推しが私を必死に探していてくれたなんて…


「私はそなたを好いておる。是非とも私の正室になって欲しいのだが」


 なるほど、政宗の目的も求婚でしたか。

 推しである以上、政宗の正室になれるなんて夢のようであるのは間違いないが、心からの本心で言えば、信繁様と結ばれたい。これまた困る展開になってしまったな…


「私はそなたの意見を尊重する。無理強いはしないから安心してくれ」


 あら、優しい。


「すぐに答えを出すのは難しそうです…」


「悩まさせてしまって申し訳ないが、よい返事があることを願っている。…これは無理強いになってしまうか?」


「いえ、そんなことはございませぬ。気持ちが決まらない以上、曖昧な返事はしたくありませんが、政宗様に好かれているという事実は非常に嬉しいです。それだけは嘘偽りないので、お伝えさせていただきますね」


「いやはや、そなたが喜んでくれたのなら、私も嬉しい!返事はいつでも良いし、どんな結果であれ私はずっとそなたを好いておる気持ちは変わらぬ。待っておるからな!」


 爽やかな笑顔を向ける政宗。

 えっと…尊すぎて天に召されそうなんですけども。


『藍姫様、申し訳ございませぬ。お伝えしたいことがあるのですが…』


 意識が遠のきそうになっていると香乃さんがやってきた。

 伝えたいこととは…?


 さらに頭を抱える展開が藍佳を待ち受けていた




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