第二十五話 【真田昌幸】
私は朝食時に昌幸に話があると言って誘い出した。果たして本音を話してくれるだろうか?
どうしてそんな心配をしてるかというと、昌幸は強がりなのである。自分の弱みをあまり見せようとしない。優しいことに変わりはないし、信頼してない訳では無いと思う。
武士だから故なのだろうか?
「話とは珍しいな。どうした?」
「お義父さん、この頃、体調が優れないのではありませんか?私も信繁様も少し気になっておりまして」
「........やはりお前たちにもバレていたか」
「どこか痛みがある?苦しくなることがある?」
「よく分からんのだ。気分が滅入ることが増えた」
確か史実では病疫とだけ書いてあって病名は特に明かされてなかったな。精神の可能性もあるのか?
「思うように身体が動かなくなってきた。痛みはないんだが、すぐ疲れる。主君をころころと変えてきたツケが回ってきたのだろうな」
「身体がうまく動かないから気持ちが滅入る?」
「武士としてずっと動き回ってきたからな。大助と信繁に稽古でも....と思ったが、どうも難しくて」
身体も思うようにいかなくて、モヤモヤ。少し焦りもあるのだろうか。少しでも私に役立てることがあるなら、頑張りたい。
「何かして欲しいことや、手伝って欲しいことがあればいつでも仰ってください。香乃もいくらでも使ってください。お義父さんも私の家族なんですから」
「心遣い感謝する。だが、私は大丈夫だ」
「また強がって!大丈夫な顔じゃないんですよ!」
「うっ........すみません....」
素直でよろしい。
主君をころころ変えたツケか。
確かに昌幸は武田信玄、武田勝頼、織田信長、北条氏直、徳川家康、上杉景勝、豊臣秀吉、そして今は豊臣秀頼に仕えてる訳だが。
しかし、それが間違った選択だと私は思わない。それが昌幸の戦略で、正しかったからこそ真田家は今日まで滅ばずに済んでるのだから。
それが悪だとされるならば、戦国武将は誰も生き延びていないはずだ。
「お義父さんは主君をたくさん変えてきたから今、体調が悪くなってるとお考えなのですか?」
「……それだけではないが、身体的よりも精神的に不調な気はする」
「私は人生において間違った選択など一つも無いと思っております。それにお義父さんの戦略がなければ、真田家はもう滅亡していたかもしれません。あなたのその選択がなければ私は信繁様と出会えてなかったのです。だから自信を持ってください」
「そうか。信繁と出会わなければ、私がそなたの義父義父になることもなかったのか」
「そうですよ」
「すまない。話をして少し気持ちが楽になった。私はまだまだ懲りずに生きようぞ。大助の成長も見届けねばならんしな」
どうやら前向きになってくれたようです。良かった。
その後、昌幸の体調は改善した。しかし、私は知っている。もう回復することが無いということを。
史実に記されているのだ。一度は回復したものの、急変して亡くなると。
つまり....私はもう心構えをしておかなければならない。昌幸の回復を嬉々としている信繁様には伝えることは出来ない。昌幸の死は私自身も悲しいが、信繁様の心が心配だ。支えられるように頑張らないと。
1年後
(昌幸様!?分かりますか?大丈夫ですか?しっかりしてください!)
香乃さんの叫ぶ声が聞こえる。その日がきてしまったか。




