第二十四話【子育て奮闘】
遅くなって申し訳ございません。次話、やっと完成しました。更新頻度あげれるように頑張ります。笑
「おぎゃーおぎゃー」
私は赤子の泣き声で目を覚ました。
いけない!出産を終えてそのまま寝てしまっていた!
「大助!?」
「お、目覚めたか。良かった」
「信繁様…ごめんなさい。出産を終えて気がつけば寝てしまっていました…」
「なに、気にするな。もちろん最初は何か問題があったのではないかと心配したが、医者が疲れによるものだと言っていたから安心した。前柴殿から藍姫の母親が出産時に亡くなったと聞いていたから本当に心配した。前柴殿もかなり動揺していた」
「皆様に申し訳ないことをしてしまった」
「誰もそなたを責めていない。出産とは本当に命がけなのだな。藍姫、大助を生んでくれてありがとう。そしてお前も無事で良かった。心から感謝する」
「信繁様…そのように言って頂けただけで私は嬉しいです。信繁様、大助を見せてくれませんか?まだ立ち上がれそうになくて…」
「あぁ、存分に抱いてやれ。私は皆に目が覚めたと報告してくる」
初めて抱く我が子…可愛すぎる。あの痛みはとても耐え難いが、こんなにも可愛い愛おしい子の顔が見れるなら我慢は出来る。
大助という名の子どもは実際に真田信繁の長男として存在している。別の名も考えたが、何故か史実通りしないといけないような気がして私から信繁様へ大助という名を提案した。
すくすくと育ちなさいよ、と思いながら子を眺めていると廊下が騒がしくなった。
(殿!お子様が居るのですよ!静かに歩いてください!)
『あ、すまない』
どうやらお父上が急いでこちらに向かっているらしい。香乃さん、主君に遠慮なく怒ってる。肝が座っているな。
『藍姫!大丈夫か!』
「お父上、心配をおかけして申し訳ございません。たった今、目を覚ましました。体は痛いですが、無事ですよ」
『左様か…良かった。妻と同じ道を歩むのではないかと本当に心配になった』
「不安に思わせてしまってごめんなさい。出産がこんなにも大変で体力を使うものだとは知りませんでした。まさに命がけですね」
『あぁ、私は女性に頭が上がらない』
「私もだ…痛がる藍姫に何もしてやれなかったし、壮絶だった。一人で痛みと戦い、子を生む女性は本当にすごい」
「ふふ、その気持だけで私は頑張った甲斐があるというものです。大変でしたが、こうして愛おしい信繁様との子を拝めることが出来ましたから。私は今、幸福感で一杯です」
「本当によく頑張った。改めて言おう。ありがとう」
「こちらこそですよ。妊娠中も出産時も私を支えてくださり、ありがとうございました」
「いや、私はずっと無力だったよ」
ゴツン!という音とともに信繁様の頭へ拳が振り下ろされた。
「痛い!前柴殿、何をするのですか!」
『情けない言葉ばかり述べやがって。お前は娘に何か悪いことをしたのか?何故に娘が感謝を申しているのにそんな言葉を吐くのだ?藍姫の気持ちを素直に受け止めんか』
これには私も心から同意いたします。
信繁様は人質生活が長いのも影響しているのか、自分を蔑むところがある。もっと自分を色んな意味で大切にしてほしいんだけどな。
「信繁様、一言だけ申し上げます。もう少し自分自身を愛してくださいませ。あなたは誰よりも素敵でお優しい。だから私はあなたを好きになったのですよ?あまりご自身を否定されますと、私のこの気持ちも否定されている気になってしまいます。それでも構わないのですか?それとも、信繁様はそれをお望みですか?」
「すまない!時より、私は存在していて良いのか分からなくなるときがある。でも、そなたを愛している気持ちは嘘じゃないし、誰にも負けない。大助にも同じように誰よりも負けぬ愛情を持っている。情けないことを言って申し訳なかった。夫として、父親としてもっとしっかりせねばならんな」
「頼みますよ、お父さん」
「むっ!?もう一度、その名で呼んでくれないか!」
『お父さん』
「はっ!嬉しいけど、どうして前柴殿が!私は藍姫の口から聞きたかったのに!」
『お前がうるさいからだ。娘は出産を終えて間もないのだ。騒ぐな』
「お言葉ですが、お父上も廊下で香乃さんに怒られてましたよね?」
『あ、あれはだな…』
「前柴殿も我が子には叶わんのですな!はは!」
『昌幸殿もか?』
「えぇ、信之にも信繁にも叶いませんよ。反論してみるが、無駄な抵抗で結局折れてしまう。我が子は可愛くて仕方ありませんからね」
「初めて聞いた。そうだったんですか?」
「あぁ、恥ずかして今まで言ってこなかったがな。この気持ちはお前もすぐに分かるようになるだろう。覚悟しておけよ」
そう言ってにやりと笑う昌幸。昌幸は九度山からの家族だが、とてもいい関係を築けている。ここにいる皆が私は大好きだ。
(藍姫様、ご出産のお祝いとしていつもより豪勢なお料理を用意しています。お食べになられますか?それともまだお休みになられますか?)
「お腹すいた!食べる!」
(ふふ、かしこまりました。起こすのを手伝わせていただきますね。ついでに着物も正すので、男性陣は出ていってもらえますか?)
「言い方に棘があるように感じたが、気のせいだろうか?とりあえず、我々は先に居間で待ってるぞ。藍姫、ゆっくり来いよ」
「ありがとうございます、信繁様。すぐに向かいます」
信繁様は何故か、ムッとした表情をして出ていった。あら?何か怒らせるようなことを言ってしまったかしら…
(お気になさらないでください。ゆっくり来いと言ったのに!と思っておられるんだと思いますよ)
「あっ!そういうことか」
信繁様の意図を汲み取った私たちは笑いあった。
香乃さんが用意してくれたご飯はかなり美味しかった。出産の疲れが癒やされていくのが分かった。
皆もいつもとは違う豪華な料理に舌鼓をうっていた。
それから育児が始まった訳だが、大助は夜泣きもせず、あまり手のかからない賢い子だった。でもそれは赤子の時だけ。一歳になるころには立派なやんちゃ坊主に育っていた。
信繁様は我が子が可愛くて仕方ないのか、怒ることが出来ないらしい。それだけならまだ許せるが、一緒になって悪さをするから二人に私が怒るという関係が出来上がってしまった。それを私たちの父親は微笑ましそうにしている。
どんどん体力が奪われるが、それでも幸せな暮らしだった。
高橋さんとも交流を続けていて、信繁様が大助を連れて外に出かけて私と高橋さんは子育ての悩みや互いの夫の愚痴を言い合っていた。
「ほんと、男ってしょうもない悪戯をするよね。しかも懲りずに何回も」
「激しく同意します!怒りすぎて喉が枯れそうです」
「わかる!でも幸せなんだよね」
「そうそう。母親だな、家族だなーと実感しています」
育児、子の成長とは恐ろしいもので時があっという間に過ぎていった。大助が三歳になる頃には信繁様が一緒に悪さすることはなくなった。父親二人の怒りに触れ、大人しくなった。子どもの成長に悪影響だからね。
見捨てないでくれー!と泣いて懇願してきた時は驚いた。そんな事するわけないのにね。でも、心から愛されていることが実感できて嬉しかった。
史実では、真田信繁には大助以外にも子はたくさん居たが、何故か私とは大助しか身籠らなかった。
大助が八歳になる頃に信繁様からとある相談を受けた。
「なぁ、藍姫。お父上の体調が優れないように感じるんだが、私だけか?」
あまり自分のことをさらけ出さないし、強がる昌幸だが、私もどことなく体調が悪いように感じる。今は一六〇九年。史実の昌幸が亡くなる年まであと二年。
晩年は病に伏していたとされているが、まさかこの年から病が?
少し声をかけてみるか。素直に話すとは考えにくいが。




