第二十二話 【再会】
家康に仕えてから半年ほどが過ぎた。
ある日、九度山から忍びが文を持ってやってきた。藍姫に何かあったのか?とても嫌な予感がした。
しかし、嫌な予感が的中することはなかった。
ーーーーーー前柴義昭様へ
お父上!ご無沙汰しております。体調の方、お変わりはございませんか?
急な文で驚かせてしまったことでしょう。申し訳ありません。でも、文を出さずにはいられませんでした。
前柴家の秘密、非常に驚きました。未来人と分かっていながら私を愛し、大切にしてくれたこと。本当に嬉しかったです。ありがとうございます!
では、本題へ参るとしましょう。どうして文を出したかったか。
この度、信繁様との子供を授かりました!
愛する人との証。発覚した時、心は喜びに満たされました。
すぐにでもお父上に報告したかった。
しかし、私が文を出すことによってお父上に危険が及ぶのではないかと心配になり、お知らせ出来ませんでした。
事前に見張りの方に確認し、安全が確認されたので、文を出した次第でございます。
大切なことなのに、報告が遅れてしまって申し訳ありません。
今はお腹も大きくなってきて大変ですが、信繁様たちと真田紐なるものを作っています。
腕に巻き、紐が切れると願いが叶うとされています。
お父上のために願いを込め、私が作りました。真田紐を私だと思い、付けてくれると嬉しいです。
そして、夏頃には出産予定です。一目でも良いので、逢いに来てくれませんか?
これを伝えたくて文を出しました。
どうか、家康がお父上の申し出を受け入れてくれますように
文は藍姫からだった。
なんと……左衛門佐との妊娠か。藍姫を授かった時の気持ちが蘇ってきた。男だが、情けなく号泣して喜んだな。
左衛門佐はどんな感じだったんだろうか?
二人と話したいことが沢山ある。会いたいが、果たして。
今言ったところで、あと四ヶ月はある。頃合いを見て家康に話すとしよう。
そして、藍姫の作った真田紐か。うむ、良く出来ている。藍姫は一体、どんな願い事をしてくれたのか?娘からの大切な贈り物だ。切れて欲しくはないが、藍姫の願いを叶えるためには切れた方が良いのか?
お守りにもなる。肌身離さず、付けておこう。
これで藍姫と変わらず、一緒に居れるな。
それから三ヶ月後、私は家康の部屋にやってきた。
『殿、失礼致します。お話がございまして』
「前柴か。入れ」
『ご相談事があるのですが……』
「珍しいな。どうした?」
『実は、娘の妊娠が発覚しまして。まもなく生まれるので、会いに行きたくて』
「なに!?それはめでたいな!よし、構わぬぞ。暫く、滞在するといい。出産は大変だからな。邪魔にならん程度に娘を支えてやれ」
最近の家康はずっとこうである。
敵対していたからこそ、冷たい、最低な男という印象だった。だが、家康は仲間を大切にするらしい。私にも気をかけてくれている。
殿下や三成にしたことは許せないが、実は繊細で優しい人物なのかもしれない。それでも嫌いなことに変わりはせぬが。
次の日の早朝、私は九度山へと向かった。
「敵襲だー!敵襲だー!」
夕食を取っていると、外が急に騒がしくなった。
敵襲!?
昌幸と信繁様は刀を取り、外に出て行った。
「香乃さん、藍姫を頼んだぞ」
(お任せください!姫様、こちらへ!)
私は香乃さんに連れられ、奥の部屋へと移動した。
数分後、足音が聞こえて部屋の襖が開けられた。
香乃さんは臨戦態勢である。
しかし、襖を開けたのは信繁様だった。
「香乃さん、藍姫、心配は要らない。敵襲ではなかった」
「違ったのですか?」
「徳川方であるのは間違いないが、お前の会いたかった人物だ」
そう言うと、一人の武将が顔を覗かせた。
「はっ!!お父上……!!」
『久方ぶりよのぉ、藍姫や。文をありがとう。家康の許可が下りたから逢いに来たぞ』
会いたくて手紙を出したけど、家康が許さないと思ってた。まさか、また会うことが出来るなんて。
「お父上……」
『妊娠、おめでとう。お前を授かった頃を思い出したよ。私は泣いて喜んだが、左衛門佐はどうだった?』
「ふふっ、泣いておられましたよ」
「前柴殿、自分の子が愛する妻のお腹に来てくれたのですよ?泣かない男が何処に居られようか」
『うむ、私も同じ気持ちであったぞ。お前も親馬鹿になりそうだな』
この感じ、すごく懐かしい……お父上が帰ってこられた。
『赤子の調子はどうだ?もうすぐ生まれそうか?』
「元気にお腹を蹴っていますよ。出産はあとひと月くらいですかね?不安です」
『大丈夫だ!香乃も左衛門佐も、そして私もついてる!』
「え?産まれるまで居てくれるのですか?」
『うむ。家康から暫く、滞在しろと言ってもらっている』
家康が?
なるほど、部下は大切にするタイプですか。
でも、そのおかげでお父上と再会出来たからそこは感謝だな
『藍姫、真田紐をありがとう。こうして付けているぞ』
「前柴殿!お揃いじゃないですか!」
『やめろ、その言い方』
(私ともお揃いですよ)
『香乃は、まぁ許す』
「何故ですか!息子ですよ!!」
『うるさい』
なんかお父上、信繁様に厳しいな……
「お父上、信繁様を嫌いになったのですか?」
(きっと照れ隠しですよ、姫様)
『香乃!余計なことを言うな!』
なんだ。ツンデレか。心配して損した。
出産の時まで、また皆で暮らせるのか。嬉しいな。
みんながそばに居る。出産頑張ろう。




