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第二十話 【強い味方】


 信繁様と感動の再会をした後、昌幸に初めて会った。

 この時の年齢は定かではないが、実の年齢より若く見えるのではないかな?

 とても若々しいおじさんといった印象だ。


「初めまして、真田昌幸様。信繁様の妻となりました、藍姫と申します」

「おう!初めまして。絶世の美女という噂は誠じゃな」

「その話は良してくだされ……未だに慣れませぬ」


「はははっ!良いではないか!して、先ほど話が聞こえてきたが、信繁との子を授かったのか?」

「はい!昌幸様、おじいちゃんでございますよ」


「おお!素晴らしい響きだな!私がおじいちゃんか。そうか。とても嬉しいな」


 もっと緘黙な人かと思えば、全然違う。明るい人だな。


「父上、立ち話は藍姫の身体に障ります。中でお話を」

「そうであったな!よし、中へ入ろう!」


 そんなに長く立ち話はしていないが、信繁様からのストップが掛かった。

 これは近い将来、親バカ確定か?


 真田屋敷は長屋。とは言ってもかなり広い。

 未来で中を見ることはなかったから何だか嬉しいな。


 室内は香乃さんによって火鉢で温められ、外との気温差がすごかった。暖かい・・・。

 あと、香乃さんは本当に優秀だこと。


「おお!香乃さん、ありがとう!部屋が暖かいな!」

(旦那様、申し訳ない。藍姫様のためです)

「だろうな!だが、ありがとう」


「本当にありがとう!外が寒くて、部屋まで寒かったらどうしようかと不安だったの」

(火鉢は常に付けておくので、ご安心を)

「それって大丈夫なの?火事にならない?」


(昼夜問わず、火鉢の見張りを私たち侍女でやるので心配いりませんよ)

「それだと香乃さんたちの睡眠が」

(交代でやるので、大丈夫です。お心遣い感謝します)


「あ、そうだ!香乃さんに一つお願いがあるの」

(どうされましたか?)

「ちょっとしたいことがあってね。毛糸みたいな物が欲しいのだけれど」


(すぐに手配させますね)

「ありがとう!」


 よし、これで届いたらプレゼントを作れるぞ!


 ちなみにだが……

 この生活には見張りがいる。怪しい動きをすれば徳川家康にすぐに伝えられる


 よって、かなり生活が不便なのである。


「信繁や、火鉢だけだと彼女は寒くないか?懐炉はないのか」

「あぁ、そのあたりは香乃さんに聞かないと分からない」

「情けない夫だな!」

「そんなぁ……」


 父親に怒られてしょげてる、可愛い。


(あ!湯湯婆はありますが、懐炉はないです。毛糸と一緒に買ってきてもらいますね)

「うむ、それが良いと思うぞ」


 前柴義昭と真田昌幸は性格が違いすぎて、それはそれで面白いな。でも、共通してることが一つ。二人とも本当に優しい。


 私を気遣ってくれているのが、ひしひしと伝わる。

 優しい人、大好きだ。


 信繁様はこの親にしてこの子ありだな。素敵な親子だ。


「ごめんください」


 急にお客様が来られました。びっくりした。


(はい?どなたですか?)

「この九度山に住む高橋と申します。ご挨拶に参りました。何かあれば、お助け致しますので、遠慮なくお申し付け下さいませ」


(見張りが近くにいるのに、怖くないのですか?安全のためにもこういった行動はしない方が……)

「見張りの人間に好き勝手させませんので、ご安心を。見張りなんて気にせず、仲良くしましょう!」


「心遣い、ありがとうございます。一つだけ質問よろしいですか?」

「姫様ですね!はい、なんなりと!」

「不躾で申し訳ないんですが、お子様はいますか?」


「はい!二人育てております!」

「そうなんですか!実は今、身篭っておりまして。初めてなので、不安なんです。何かあった時はお手伝い頂けますか?」

「あらあら、おめでとうございます!もちろんです!」


 強い味方ができた。


 前柴家では、掟があり、侍女たちは結婚してはいけないことになっている。侍女としての役割が果たせなくなるからである。

 よって、香乃さんたちは知識はあれど、妊娠や子育てはしたことがないのだ。


 だから、ママ友が出来るのは非常に嬉しい。

 色々と勉強させてもらおう


(日も暮れてきたので、そろそろお食事に致しましょう。昌幸様のお口に合えば良いのですが……)

「なに、気にするな。私はなんでも食べれるぞ!」


 うーん?ちょっとズレてるような。笑


「香乃さん、ごめんなさい。私はちょっと気分が悪いから横にならさせてもらうわ」

(承知しました!すぐに布団を敷きますね)


「藍姫!!大丈夫か!私が傍に居よう!」

(旦那様、きっと悪阻なるものです。赤ちゃんをお腹の中で育てるために必要なことです)


「その悪阻とは、なんだ?」

(詳しくは分かりませんが、食事をしたり、食事の匂いなどで気分が悪くなるそうです)


「生死を分けるわけではないのだな!?」

(はい、それは大丈夫です。だから今は休ませてあげましょう)

「そうだな。だが、心配だ」


 侍女はあっという間に布団を敷いてくれた。そして、湯湯婆、吐く用の桶まで用意してくれた。

 桶を使用することはなく、私は眠りについた。


 とても深い眠りだったようで、目を覚ますと次の日になっていた。

 まずい、寝すぎた。ご飯も食べてない!

 広間に行くと、既にみんなが食事を取っていた。


「藍姫!大丈夫か?これは仲間外れではないぞ!お前の身体を心配して、別々に取るようにしたのだ。匂いで気持ち悪くなるんだろう?」


「何も疑ってませんよ。信繁様、ありがとう。寝すぎたから急いでここに来たんだけど……ちょっと匂いが」

「うむ、戻ってよいぞ!後でそちらに向かう」


 妊婦生活って想像以上に厳しいな。

 

(姫様、こちらをお食べになってみてください)


 そう言って香乃さんが差し出してきたのは、梅干しだった


(梅干しにございます。昨夜の高橋さんが、悪阻が辛い時は梅干しを食べると少し良くなると申していたので)

「本当に?じゃあ、食べてみるわ!」


 半信半疑で食べてみたところ、あら不思議。

 本当に気持ち悪さがマシになってきた。多分、個人差はあるんだろうけど、これは良いね。


 高橋さん、頼りになります!


 強い味方のママ友が出来たことによって、私の不安は少しばかり解消された。

 

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