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第十五話 【怪しい動き】


 秀吉が亡くなってから一年後、三成から手紙が届いた。

 

 胸騒ぎがするので、会いたい、津之江城からさほど離れていないところに美味しい鮎料理の店を見つけたので、話がてら食べないか?とのことだった。


 信繁様に伝えると少し不安な顔をして「自分も行く」と言い始めた。それは非常に困るな。信繁様に未来の話をする訳にはいかない。


「信繁様が不安に思う気持ちも分かります。私も正直、不安です。でも、三成様にしか話せない話もある。故に……少し考えさせてください」


「友だからこそ、話せる内容。私の愚痴か?」


 ダメだ。すごい怪しんでる。私が三成と良い関係だと勘違いしているのかな?それとも嫉妬か。


「信繁様に不満などございません。一緒に行くにしても、三成様に黙ってという訳にもいきませんし、三成様の許可がおりたら一緒に参りましょう」


 信繁様、口がむぅ となっております。その顔は反則です。可愛いです。スマホがあれば確実に写真撮ってたな。



 一週間後、三成が津之江城にやってきた。

 三成からの許可はおりた。信繁様は子供のように喜んでいた。

 馬はもちろん信繁様の後ろである。


 信繁様の後ろに乗るのはこれで二回目。一回目は門真荘から津之江城へ帰る時。

 その時も今日も信繁様は周りを警戒している。厳重警護なのにも関わらずだ。


 こんなに大切にしてくれる旦那に何の不満があろうか。

 っていうか、推しと夫婦なんて有り得ないことが起きているのに不満なんて、ねぇ。


 そんなことを思っていると、馬が止まった。


「藍姫、着いたみたいだ。鮎料理、楽しみだな」

「そうですね。信繁様、落ち着いたら堺へ鮎料理を食べに参りましょう。そこも本当に美味しいのですよ」

「あぁ、絶対に参ろう。約束だ」


 推しとのデートをこぎつけました。

 城主として津乃江城を留守にする訳にもいかず、なかなか二人で出かけることができないのだ。


 そうか、そういう意味でも信繁様は着いてきたかったのか。


 鮎料理の感想は美味しいが、堺のお店、天龍には負けるといったところか。

 今回も家臣たちと私たちは別。今日は信繁様も居るから3人で食べていた。


 食べ終わってしばらくして、三成が話し始めた。


「今日は大切な話があって呼んだ」

「妻ならやらんぞ、三成」

「信繁様、明らかにそんなふざけた話をする顔じゃありませんよ?」


「すまない。私が悪かったからその顔はやめてくれ、怖い」


 一度、ブチギレたことがあるからなのか、私の怒り顔にはめっぽう弱くなった信繁様である。


「話を続けても良いか?あと、姫。私もその顔は怖い」


 もう一人いました。


「話を続けてください、三成様」

「うむ。実は家康殿がどこか怪しい動きをしていてな。豊臣を乗っ取ろうとしているように私は感じる。近いうちに戦が始まるのではないかと思ってな」


「なんだと!!」

「左衛門佐殿にも伝えておくべきだと考えていたから、あなたも行くと聞いて都合が良かった」


 もうこの時から家康は動き始めていたのか。早くね?

 三成は関ヶ原の戦いがあるのを知ってるから家康のことを警戒していたんだろうな。だから異変にすぐ気づいたって感じかな?


「怪しい動きとは具体的には?」

「実は前田利家殿が亡くなってな。家康殿の行動がおかしくなってきたのだ。遺言で殿下が禁止していた大名同士の政略結婚などをしていると忍びから聞いた」


「彼奴は殿下の遺言も聞けないのか!もしや、天下を狙っているということか!?」

「信繁様、少し声を下げてください。誰かに聞かれてはまずいのでは?」


「今日は警護の人たちも一緒だから貸切にしてある。左近たちには伝えてあるから安心せぇ」

「それなら良かったです」


 いや、まぁ左近たちは最初から知ってるんですけどね。信繁様に悟られないように話を合わせてくれてるみたい。ありがとう、三成。


「左衛門佐殿の予想を私もしている。きっと家康は天下を狙っていると思う。だからもし、これ以上に殿下を裏切るような行為があれば、私は戦を仕掛けようと思う」


「もはや、謀反ではないか。戦となれば、私は三成側につく。謀反者に誰がつくか。殿下に育ててもらった恩もあるしな」


「左衛門佐殿にはこちら側についてくれぬか?と伝えようとしていた所だ。話が早くて助かる」


 家康が動き始めているのならば、あの事件のことを三成に伝えておかねば。だが、信繁様が居る中でどうやって話す?ちょっと席を外してと言ってすんなり聞いてくれるか?


「藍姫、どうした?」


 この人、私の変化にすぐ気づくんだよね。嬉しいけど、こういう時は非常に困る。だが、もう覚悟を決めて伝えるしかないな。


「信繁様、申し訳ありません。どうしても三成様と二人きりで話さないといけないことがありまして。どうか詮索せずに席を外してもらえませんか?一つだけ申し上げますと、恋愛感情は一切、ございませんので。そこはご安心ください」


「私の愚痴でないのなら、いくらでも席を外そう」

「津之江城でも言いましたよね?私はあなたを愛しています。不満など一つもございませんよ」

「よし!なれば席を外そう!家臣たちと喋ってくるわ」


 案外、あっさり引いてくれて良かった。


「話したい事とは?」

「関ヶ原の戦いが起こる一年前に石田三成襲撃事件なるものが起きます。三成様に不満を持っている加藤清正らによるものです。どうかお気をつけくださいませ」


「加藤清正め、また仕掛けてくるのか。分かった、教えてくれて感謝する」


 伝えたいことは伝えられた。

 その後、左近、舞兵庫、信繁を呼び、皆は戦が起きた時の作戦会議を始めた。


 夕刻が近づいてきた頃、夜になればまた襲ってくる奴も居て危険だからということで、解散になった。

 解散とは言っても店を後にしただけで、三成たちは津之江城までしっかり送り届けてくれた。


 いよいよ、天下分け目の関ヶ原の戦いが起こるのか……

 


 

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