表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

第十二話 【香乃さんの怒り、そして高熱】


 二日後、香乃さんが門真荘へとやってきた。

 会った瞬間、背筋が凍るのを感じた。


 何故なら、香乃さんは般若のような顔をしていたからである。恐怖に震えたのは私だけでは無い。信繁様も三成も同じように震えていた。

 そして信繁様がボソッと一言発した結果、さらに最悪な状況へと変わっていった。


「女性を怒らせると本当に怖いのだな....」

 

(旦那様!何を仰いますか!私の仕える大切な姫様が何者かに襲われたのですよ!?正気でいられる侍女が何処に居られますか!)


「香乃さん、落ち着いて。私のために怒ってくれてありがとう。でもね、怒っていたのは信繁様も同じ。三成様に殴りかかったから私がキレたの。それが結構、怖かったらしくて、この通りなの」


(怒りに任せるのは良くないです。それは分かっていますが、私も旦那様と同じで三成様に怒りを感じます。そばに居ながら、どうして守らなかったのかと)


「香乃さん、左衛門佐殿、改めて言わせてくれ。本当に申し訳ない」

(謝って済むわけないでしょう!本当にどうしてですか!)


「香乃さん、やめて。私の我儘でこの門真荘に来たの。私を責める必要はあっても三成様を責める必要なんてどこにも無いのよ。これ以上、三成様を責めるなら皆様、帰ってください」


(申し訳ございません。怒りでおかしくなりそうで。三成様も責めてしまってすみません)

「いえ、私が悪いですから。お言葉は全て受け止めます」


 事件があってからみんなずっとこうよ。

 みんな私を大切に思ってくれてるからこその怒りなのは分かってるけど、こんなに揉めてる姿は見たくないのよ。


 三成もずっと謝ってばかり。三成は私の意見を尊重して門真に連れてきてくれただけなのに。

 なんでこうなっちゃったんだろう?


「三成様はどうしてずっと謝っておられるのですか?私の意見を尊重してここまで連れて来てくれただけなのに....ひたすら謝ってる姿を私はもう見たくありません」


 気がつけば、涙が溢れてきた。三成が謝ることによって私が悪いと痛感させられるのだ。苦しくて苦しくてたまらないのだ。


「近くに居たのに、守ってやれなかったことを悔やんでいるのだ。そして、そなたは何一つ悪くない。私と、私以上に悪い加藤清正だ」


(加藤清正様に関しては、会ったら私は何を仕出かすか分かりません。三成様にも怒っておりますが、一番は加藤清正様です。様呼びもしたくないほどです)


 そういえば、加藤清正はどうして私を狙ったのか?理由を知りたいところだな。

 三成を警戒してなのか?この年、秀吉に仕えていたとするとお父上も関係してくるのか?分からないな。


「藍姫、顔が赤いぞ!体調が悪いのか?医者が熱も出ると言っていたな。それか?」


 そう言って信繁様は自分のおでこを私のおでこに合わせた。これは全女子がキュンとするやつではないか!!これを推しにされて良いのか!?


 しかし、本当に身体が熱い気がしてきた。


「熱いではないか!おう!目を閉じろ!寝ろ!」

(額につける手拭いを持って来ますね)


 香乃さんも信繁様もパニック起こしとる。愛情を感じてまた涙が出てきた。この戦国の世に来てから涙脆くなった気がするな。


「失礼致します」

(おや、殿の使い様。どうなさいましたか?)


「真田左衛門佐信繁様に申し上げます。殿下の意向で一度、大坂城へ帰還せよとのことです」

「殿下の意向なら仕方ないのか....何故だ!妻が熱を出しているのだぞ!傍におらねばならぬのだ」


「信繁様、秀吉様の命令であれば、仕方ありません。私は大丈夫です。行ってくだされ。大坂城であれば、さほど離れていないので不安は少ないし、寂しさも紛れます」


「すまない、すぐに戻る」


 私にキスをしてから信繁様は去って行った。


(旦那様って意外と大胆ですわね)

「ほんとよ!人の気持ちも知らないで!恥ずかしいわ!」

(姫様、照れておられるのですね)

「香乃さん?怒るわよ?」

(失礼しました!ところで、かなりおでこが熱くなってきておりますが、大丈夫ですか?)


 言われてみれば、さっきよりもしんどくなってきた


「ちょっと辛いかも」

(目を閉じてお休み下さい。旦那様が帰ってこられましたら、起こさせて頂きますゆえ)

「ありがとう、お願いするわ」


 そう言って眠りについた藍姫だが、信繁が帰ってきてからも起きることはなかった。高熱で生死をさまよっていたのである。

 目覚めたのは、信繁が帰ってきてから4日後のことだった。


「んっ」

「藍姫!!私が分かるか!?大坂城から帰ったぞ!」

「信繁様!お帰りなさいませ。あれ?香乃さん?」


(私、本当に加藤清正が許せません。大切な我が姫を二度も生死を....!!)


 すごくお怒りである。私の侍女、こわぁい....


「香乃さん、藍姫が引いてる。やめてあげて」

(失礼しました!!姫様、お目覚めになられて良かったです...私ちゃんと起こしたんですよ....)


「香乃さんは言ったことをちゃんとする人。それは分かってるから別に疑ってないし、怒ってないわよ。信繁様、帰ってきてからどれくらい経ったのですか?」


「4日だ、心配したぞ。香乃さん、三成殿を呼んできてくれ。みんなに話がある」


 真剣で、怒りも込められている顔で信繁様が言った。

 何なんだろう、なんだか不安だな

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ