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三題噺  作者: 銅座 陽助
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動画を再生できません

記録開始。


 数秒間のノイズの後に、映像が鮮明になる。学校の体育館だろうか。緑色の体操服を着た、中学生くらいの子供たちが四十人ほど、こちらに背を向けて整列している。ステージの上に立っている男子生徒が右手を挙げると、生徒たちは「気を付け」の姿勢から、足を肩幅に広げ、腕を後ろに回した。数秒後、ステージ上の生徒が手を下ろすと、彼らは再び姿勢を戻して、微動だにしない整列を再開した。少しして笛が吹かれて、彼らは一様に「右向け右」をして、数回の足踏みの後に行進を開始する。床に貼られたテープに沿うようにして、彼らは体育館の中を時計回りに行進していく。小刻みに映像が揺れて、次第に彼らが画角の右端に消えていく。次第に大きくなる画面の震えが、彼らが行進を続けていることを現していて、そうしていると、急に映像がぐるぐると回って、壁や床をめぐるましく映した後に、天井を見上げて停止した。誰かが行進中にカメラを蹴飛ばしてしまったのだろうか。すぐにこちらを覗き込む生徒たちの顔が映った。彼らはみな一様に気味の悪い、張り付いたような笑みを浮かべていて、それが十も二十も集まっている。やがて拾われたのか、映像は急に揺れて宙に持ち上げられて、体育館の入り口の方を向いた。彼らは相変わらず気味の悪い笑顔を浮かべていて、そして画面の中央には、一人だけ床に座っている生徒が映っていた。彼らと同じ緑色の体操服は赤茶けた色でまだらに染まっていて、全身に切り傷や擦り傷、打撲や火傷の跡があった。そして、その身体の上にはあるべきはずの頭部が無く、潰れたような首の切断面からは、黄色っぽい頸椎と凝固して赤黒くなった血の塊が覗いていた。映像はその身体に次第に近づいて行く。画面が揺れて、上の方から黒い線のようなものが数束垂れてきた。そこで映像は再びノイズが多くなって、やがて真っ暗になる。


記録終了。


体育館、カメラ、擦る

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