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三題噺  作者: 銅座 陽助
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瞳れ

あこがれ

 放課後。傾いた夕日と長引く影。廊下の曲がり角の先には私の教室があって、その扉は開かれていました。そこから倒れて、廊下に這い出すように彼女は果てていて、眼窩から零れ落ちた真ん丸な瞳と、私は目が合ったのです。その時生まれて初めて、私はこの上ない深い喜びを感じていました。彼女は本当に、美しかった。

 あぁ、そうです。今あなたの頭の中に彼女は居るのです。私がもう二度と会うことの出来ない彼女は、あなたの頭の中で、あなたに笑いかけているのです。あなたの瞳には、今まさに彼女があの時の姿で映っていて、それが私にはたまらなく愛おしくて、そしてたまらなく羨ましいのです。ですから、ねぇ? こんなにも美しいものを見ることが出来たのですから。両方とは言いません。あなたも彼女を見たいでしょうから、それをすべて奪うような、そんな非道いことは致しません。ですからせめて、片方を私のために。彼女を映したその一つを、私にもぜひ、見せていただいてもよろしいですよね。


 ――ボイスレコーダーより、容疑者と被害者の会話の一部を抜粋。監視カメラの映像から、現在逃走中の容疑者は右目に眼帯をつけており、服装や髪形などから半年前に発生した同様の事件の被害者と推測される。


廊下、瞳、果てる

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