心影山へ行こう その5
「うぎっ! なんで?」
「私はこの山に登った私のお父さんが、非常食忘れたって言うから……」
「お父さん? 非常食? なんて平和な?!」
「今お腹空いてるからって、携帯に電話かかってきたのよ。それより病院はあっちよ影洋くん……大丈夫?」
「うぎっ! 案外世話焼きな!!」
陰キャだった杉崎は、明るい世話焼きの性格に変化している。
「てっ、そんなことはどうでもいいーーー!! 今、俺は影の集団に襲われてるんだ!!」
見ると、あれ? 影の集団は……。
忽然と姿を消していた……。
なんで??
逃げた??
ひょっとして、杉崎が怖い???
……の……???
こちらに、ニッコリ笑った杉崎は意外なことを言った。
「お腹空いてない? 非常食とか持って来た? たくさん持ってきたから、何か食べるものあげるよ」
うぎっ! なんですとーーーー?!
あの、いつも教室の物陰に隠れて一人だけで「うふふふ」とか、笑っていた陰キャの杉崎が神々しくて世話焼きで、すっごい優しい!
う、陰キャでない杉崎が笑うと可愛いな。と、少し思ってしまった。
そんなことより!!
今すぐ影がなんで逃げたか考えなければ!!
うーん……。
「杉崎? 少し後ろを向いてくれ……」
「え? いいけど」
俺の考えが正しければ……。
後ろを向いた杉崎の黒いコートの下を見た。辺りは真っ暗な闇だが……。
あった!
おお!
こりゃ、大物だ!!
この分だと、公平の奴や恵さんも……こいつがいるのかも知れない。
…………
「おにいちゃん! 頑張れ! 頑張れ!」
「うー、ふあーい……」
俺は徹夜をして杉崎の持っていた、登山道具一式の中のストックで岩面を掘っていた。
本来は体のバランスを取るのに使うのだけど……。
いくら掘っても、掘っても、ストックが壊れないようにと、手加減しているから。なかなか掘れない……。
他が使えないのだから仕方がない。
ストック以外は、レインウェアやカメラなどが入っていて、水筒なども使えない。
かなり真っ暗な山で、ひたすら掘り続けていると……。
うぎっ!
やったぞ!
掘れたーーー!!
やっと、見つけた! 影斬りの刃! 岩面に浮き出た影斬りの刃は、ナイフの形をした不気味な形状の武器だった。まるで、炎が豪快にメラメラと燃え盛っているような形の刀身だった。
「さすが! おにいちゃーーん!」
「おー、ようやく取れたの? でも、そのナイフ? 何に使うの?」
我が妹と杉崎も徹夜をしてくれていた。
これで、影たちとの戦いで相手にダメージを与えられるはずだ。
俺と杉崎の大男が協力すれば……それに公平や恵さんの影も……きっと、影たちを滅ぼせられるはずだ。




