心影山へ行こう その2
翌夜
フカフカ、フカフカ。
チュン、チュチュン。
「おにいちゃーーん!! 夜だよーーーー!!」
「う、むにゃー!」
我が妹が投げた枕に頭をぶち合てて、天蓋付のベッドから起きる。
俺の今日は学校休んで心影山に登らないといけないんだ。学校の授業、怒ると怖い先生、クラスメイトの性格を調べるなどなどよりも、影斬りの刃の方が大切だった。
あれ? 心影山に登るには……。
だーーー、どうしようか!
登山道具一式ーーー!
ええと……その前にお金どうしようか?
あ! ひらめいた!
「光よ! 心影山に登った時の登山道具一式は?」
「ほひ? 恵さんからお金を借りたの。そんで近所のホームセンターで買った」
「そうかー! ちょっと小さいかも知れないけど、無いよりましだよな!! その登山道具一式貸してくれ!!」
「ほひ……? いいけど……」
それにしても、真っ暗な闇の外から小鳥のさえずりが聞こえるのは不思議だった。
俺は身支度を始めると、天気予報を確認しようとした。何故なら山は天気が変わりやすいからだ。
早速テレビのリモコンを持つと、妹がテレビを点けた……。
「……今日は、晴れ時々、曇り……にわか雨です……どうもぱっとしない天気ですねー。そして……影の……活動が……皆さん今日は外出を控え……」
うん……影の活動がたぶんピークなんだ。
普通の天気予報だ。
桜の花弁が舞う暗闇の窓の外を眺めた。
きっと、心影山には俺の影がいるはずだ。
俺には直観的にそう思えた……。
一階へと妹と降りると、今朝の飯はフランス料理だった。中でも郷土料理が多かった。クリームスープであるビスク、ポトフ、ガレット・プルトンヌに鴨のコンフィなどを食べた。おじさんは朝だというのいにクリュグをがぶ飲み。仕事はそのままで行ったんで、内心焦った。
「ほにいちゃん。今日も美味しかったね。私、絶対に恵さんと結婚する」
「いや、光。恵は正真正銘の女だ……」
一人分の登山道具一式を俺が担いで、妹と外へと出た。
目的地の心影山は、学校の裏にあるからここからすぐだ。
芝生を歩いて、15分。
やっと、屋敷から出られた……。
「おにいちゃん。心影山へ行く前に疲れるよね」
「ああ、慣れろ妹よ!」
「ほい!」
いつもの通学路をしばらく歩くと、書統学校の裏側にそれはあった。
心影山だ。
薄暗い夜なので、暗闇の中で聳えていた。
「そういえば光! どうやって、おじいちゃんとおばあちゃんを助けた?」
「ほひ。普通に……」
妹とよ……その普通が普通じゃないからわからないんじゃないか!
俺は内心叫んでいた。
心影山入り口には、塀に囲まれたトンネルがある。
その真っ暗なトンネルを通ると、今度は広大な地面に小石や枝が散乱する荒れ果てた山道が現れた。
ここを登っていけばいいんだな。
やっぱり険しい心影山でした。
たまに木がぽつんと立っている以外は、荒涼とした山肌だけの山だ。急な斜面をただひたすら登るしかない。
道中、岩肌が見えた。
地面に大きな岩が幾つか落ちている。
これが落盤事故か?
「光!」
「ほい! そうだよ! ここでおじいちゃんとおばあちゃんを助けたの」
「こりゃ、見るからに……すっごく大変だったろ」
「ふえ? そうでもないよ。おにいちゃん?」




