近所をもっと調べてみよう その8
この世界では、日向野家の両親には子供はいない。
俺と光はいないことになっている。
てかっ、存在していないんだ。
だから、早く俺の影をなんとかしないといけない気がする。
あいつめえ、少し俺より強くなっていやがった。
なんでか、羽交い締めにされた時にそう感じた。
腕の力が半端なかったからだ。
俺の影も俺の存在を無くそうとしているんだな。
上を見上げれば、星々が輝く夜の空が広がる。
道路の所々から桜の木々が顔を出し、花弁を地へと舞落としていた。
黒い家から東へ走ると、家屋の間に挟まっているような場所にあるホームセンターにたどり着いた。
こじんまりとした個人経営のホームセンターだ。
昔は親父と光とよく来たっけ。
こんな夜更けに開いているのかと一瞬思って、首をかしげた。
今、何時だ?
まあ、入ってみよう。
「いらっしゃーせー」
殊の外薄ぐらい店内から、若い女性店員の声が聞こえた。
「すいませーん! 登山道具一式ください! お金は……うぎっ?!」
そういえば、金がなかった……。
家には誰もいないし。
というか家ないしな。
うーん。
どうしようか?
「……?」
暗闇の中で、目が慣れてきたからよく見てみると、店員は……?
クラスメイトの陰キャの杉崎 香だった。
そういや、しばらくこの店へ来ていなかったけど、ここでバイトしてたんだなあ。
「あはははは。杉崎じゃないか……ここでバイトしてたんだ」
「影洋くんこそ。学校休んで心影山に行くんだって、登山道具一式をこの前買ったんじゃないの? どうしたの? 頭? 大丈夫? 山から落ちて打ちどころが悪かったとか?」
「いや、まだ山には行って……そういえば!!」
そうだ!!
俺の影が、登山道具一式買って心影山に行ったはず。
おじいちゃんとおばあちゃんは無事なのか??




