近所をもっと調べてみよう その4
だから,、土日を挟んで今日は月曜日だ!
もう、居ても立っても居られなかった!
今日は学校休むぞ!!
緊急なんだ!!
俺は妹を置いて屋敷の外へと飛び出した。
だが、案の定……。
「ほひいちゃーーん!!」
妹が俺を屋敷の玄関から猛スピードで追ってきた……。
朝食のパンをまだかじりながら、我が妹がこちらに向かって土煙を上げ爆走してくる。
「ちょっと、待ったーーー!! 光!! ご飯粒ついてる!!」
「ほひ?」
片手でほっぺを擦っている可愛い妹を置いて、俺はそのまま突っ走っていった。
広大な芝生を走り抜けると、俺は坂道を駆けた。
それから、坂のど真ん中で瞬間的に真横に飛んだ。
これからは危険なんだ。妹には悪いが……屋敷に置いておくことにした。恐らくは恵さんが学校へ行かせるだろう。
着地したところは……古びた本屋の前だった。
緑色で普通の屋根だが、全体的に蜘蛛の巣が張り巡らされている。出入り口のドアもそうだった。
古びたドアは、頑健な木製だった。
ノックをすると、乾いた音が辺りに鳴り響いた。
「いらっしゃい! 開いてるよー!」
店員さんかな?
本屋の奥の方から野太い声が聞こえた。
こんなところに本屋?
いつも歩いている通学路の傍に本屋があったっけ?
きっと、野太い声からすると大男か太った男なのだろう。
うぎっ?!
まったく違った。
奥の本に埋もれたレジには……小さな小さなおじさんがいた。ぺラリぺラリと分厚い本をかなり遅いスピードで読んでいて、時たまこちらに目をうかがわせている。
どう見ても、声だけ威圧感があって、弱々しい体格なんだな。
きっと、このおじさんは表の世界でもギャップが激しいんだろうな……。
そうだ!
ここでなら、この街の情報も手に入るだろう。
ついでに、落盤事故が起きた心影山の場所もわかるはずだ。
店内に差し込む闇がスッキリとした夜から、やがて柔い暗黒へと変わるまで俺は色々な街に関する本を読んだ。
それでわかったことが幾つかある。
この街のすぐ近くに心影山があること。
この街には黒い家が四つあること。黒い家は昔は元々、町民の集会の場所だったようだが、今では影が占領している。
それと、俺の家は、数年前に取り壊されているようだ。
原因はやはり、影の世界でも、父さんと母さんは何者かに殺されてしまっていたからだ。
ここ影の世界では俺たち(表の世界の)は存在していなくて、代わりに影の両親を持つ息子と娘が存在していた。
「ふーっ……ちょっと一休みだー。色々とわかったなあ。良かったぜ。近所を見て回らなくて……近所っていっても広いからなあ」
元々、俺は本は好きだった……。
小さい頃は、色々な冒険小説を読んでいたっけ。
これはおじいちゃん譲りだ。
おじいちゃんは冒険小説好きだった。
「おーい、そんなにいっぱい本をタダ読みして、ちゃんとその本の山は買ってくれるんだろうな?」
「……」
真っ暗な奥のレジにる文弱なおじさんが言った言葉に、俺はひたすら無言を貫いた。




