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夢限世界  作者: 冬木
3/3

愛しい恋人

夢を見る。繰り返し同じ夢を。



私は夢の中で、恋人に何度も殴られる。

もちろん、そんな人は現実には存在しない。夢の中だけの恋人だ。

私はその人をとても愛していて、何度殴られても、蹴られても、暴言を浴びせられてもめげることなく、彼に寄り添う。


ただ、彼の愛が欲しくて。彼に好かれたくて。

ただただ、彼が大好きで__。



そして、目が覚めてから思うのだ。


「……私はどうしてあんなDV男が好きなんだ?」


もっともな疑問である。別に私はMじゃない。痛いことは嫌いだ。


……けれど、この夢を見るのは嫌いじゃない。

目が覚めると、もちろん夢の中の出来事なので、体に傷など一つもできていない。あんなにボロボロになって痛くて辛かったはずなのに、残らない傷は痛みをすぐに忘れさせ、残るのはただ『彼が好き』という感情だけ。

それはひどく甘く、幸福な感情だった。


この感情がいわゆる、数多の小説やドラマで語られる『恋』というものなのだろう。

私は恋をしたことも、人を愛したこともないので、果たしてこれが正解なのかはわからないが、この幸福な気持ちは、本で読んだ通りのもののように思う。


私は恋をしている。それがたとえ夢の中の偽物だとしても。


……もちろんDV男はお断りだけれど。


けれども、繰り返し同じような夢を見るのは、何か訳があるのではないかと思った。幼少期のトラウマとか、心の病気とか、病気の前兆とか……。

けれど、調べてみると、予想に反して面白いことがわかった。


なんと、『恋人に殴られる夢は吉夢』らしい。なんでも、『いい出会いがある』予兆だとか。


……予兆のスパンが長いことが気になるけれど。なにせ、私はこの夢を3年くらい繰り返し見ているのだ。いつになったらその『いい出会い』が訪れるのか。


出会いは異性に限らないらしい。良き友人を得ることもあるそうだ。

これは俄然楽しみである。一体どんな人と巡り会えるのか……。


まぁ、所詮はだだの夢占いだ。実は大して信じてはいない。

私はこの夢を見れるだけで満足している。

夢から覚めた時の感情だけで十分だ。盲目的に人を愛するとはこういう感情を言うのだろう。とても無謀なことだ。

現実の私はきっと恋などしないし、愛など一生理解できないだろう。

だから、非現実的なこの夢がとても楽しかった。




__そうやって感情の残滓に浸りながら会社へ向かっていると、不意に背後から声がかけられた。


「すみません、ハンカチ落とされましたよ?」

「……!」


聞き覚えのある声に私はハッとして振り返った。そして、目を見開く。


「……? 何か……?」


困惑の表情で私を見つめ返すその人を、私はよく知っている。

憎悪で歪む表情を……よく知っているのだ。


「……ありがとう、ございます……」


私は差し出されたハンカチを震える手で受け取った。

傷もないのに身体中が痛み出す。恐怖で体が強張り、背中に冷や汗が流れる……のと同時に顔が火照る。


私は……どうなってしまうのだろう?

夢:現実:虚構:真実=6:1:2:1


夢って面白いですね。私は夢を覚えていることが多いので、面白かったものはつい書きとめてしまいます。

でも、『夢日記』って良くないらしいですね。昔やっていたのですが、現実と夢の区別がつかなくなってきたので毎日やるのはやめました。それでもたまにこうしてフィクションを交えながら物語にします。どこまでが夢でどこからが現実でしょうか? そしてどれが真実で、どれが虚構でしょうか?


この話は『夢限世界』を書き始めようとしたきっかけの物語なので、書きあがってよかったです。


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