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毎日死ね死ね言ってくる義妹が、俺が寝ている隙に催眠術で惚れさせようとしてくるんですけど……!  作者: 田中
第一章 毎日死ね死ね言ってくる義妹が、俺が寝ている隙に催眠術で惚れさせようとしてくるんですけど……!
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 重なる唇。 


 湿り気を帯びた瞳。


 義妹とのファーストキスは、レモンティーの香りがした。


「ちょっと離れてよっ!!」


 いつも落ち着いているはずの幼馴染の怒号に、すぐさま我に返る。


「し、雫!? 何やってんだよ……っ!」


 肩を掴み、引き離す。


 キス……してしまった……!


 血がつながらないとはいえ、妹と……っ!


 罪悪感と、はじめてのキスに昂る気持ちが相反して、さながら沸騰した油に水を入れたように感情が暴れ狂う。

 とにかく、俺の脳味噌はパニックを起こしていた。


 ど、どうしよう! この一線だけは超えないようにしていたのに……っ! 

 油断していた! 兄貴失格だ……!


 キスとはいえ、そういう恋人同士の行為が許されれば、雫のたがは一気に外れる。

 今後行われる命令は一気に過激になり、そういった肉体的接触が増えてしまうだろう。


「……っ!」


 柔らかそうな唇から、ほっ、と漏れ出る吐息がたまらなく艶かしい。


 俺に強引にキスをした妹は、とろんとした瞳に涙を浮かべながら、怒っているような笑っているような、よくわからない表情をしていた。


「私はズルくて情けなくて、弱い……そんなことわかってる。でも……それでも……」


 雫は再度俺の肩を掴み、胸にひしりと抱きつく。


「お兄ちゃんだけは、絶対に渡さない……っ!」


 涙が乾くほど頬を赤く染めて、りんこをまるで親の仇のようににらみつける妹。


 あれだけ俺のことを嫌っていたはずの雫が、催眠術という半ば犯罪スレスレなすべを使ってまで俺を手に入れようとする理由。その理由はまだ分からないけど、


 俺は、嬉しかった。


 今まで、嫌がる雫に俺は散々お節介を焼いた。

 両親を早くに失い、憔悴しきっていた彼女をなんとか元気付けたいと思ってのお節介。

 しかし、そんな行動は雫にとって余計なお世話でしかなく、彼女の俺を邪険にする態度を見て、俺の存在なんて彼女にとって家族でもなんでもないちっぽけで無価値な存在なんだなと、つい最近まで本気でそう思っていた。


 しかし、現実は違った。


 毎日死ね死ね言ってくる毒舌義妹は、催眠術に頼ってまで本音を打ち明けようとするくらい、俺のことを想ってくれていたのだ。


 家族として、兄として、これほど嬉しいことはない。


「渡さない……? ふざけないで……! 雫ちゃんがどれだけあっくんを傷つけたと思ってるの!? 毎日毎日酷い罵声を浴びせたよね!? それなのにいまさら気が変わってあっくんを好きにする!? わがままなのも大概にしてよ!」


 熱くなるりんこ。

 それに対して雫は、泣きそうになりながらも、冷静に淡々と返答する。


「……地味女、アンタがどれだけ賢かろうと、どれだけお兄ちゃんのことを分かっていようと、アンタが推測できっこないような魔法を使っている私に勝てるわけないの。ほら、その証拠に私のキスにもお兄ちゃんは無抵抗だったでしょ?」

「……っ!」

「お兄ちゃんを言いなりにできるということ、私とお兄ちゃんはほとんど家で二人きりだということ……賢いアンタなら分かるわよね?」


 両者、眼光だけで人を殺せそうなほどにらみ合う。

 まずい、そろそろ止めないと……!


 動き出そうとした瞬間、背後から若干怯えたような声が聞こえる。


「あの……お客様……他のお客様のご迷惑になりますので……」


 喫茶店の店員さんが、腰を低くして申し訳なさそうにそう言う。

 俺は雷光も置き去りにする勢いですぐさま頭を下げた。


「あっ、すみません……! おいりんこ、雫……今日のところはもう帰ろう……!」


 雫もりんこも、喫茶店にいたお客さんや店員さんの視線に気付いたのか、慌てて帰り支度を整える。


「……っ! お兄ちゃん、帰ったら私の部屋に来て。わかった?」

「お、おう」


 大勢の視線に晒されたのがよっぽど恥ずかしかったのだろう、雫は料金だけ置き俺たちをおいて足早に喫茶店を後にした。


 残るは俺とりんこだけ。


 店員さんにしこたま謝った後、俺はりんこにも頭を下げた。


「……ごめんなりんこ、帰ったら雫によく言って聞かせるから」

「ううん、いいの。それよりあっくん、さっき筆談した、雫ちゃんとの間に何がおきたのかを後で教えてほしいってやつ、あれ取り消してほしい」

「えっ……?」

「あっくんの今の行動、状況に、何かしらの制約がかかっている可能性があるとすれば、雫ちゃんに操られたあなたからブラフを聞かされるかもしれないでしょ? まぁそれを鵜呑みにする私じゃないけど、とにかく情報が定かじゃない今、あっくんからの言葉は少し信用できないの、ごめんね」


 難しい言葉、理論をならべる幼馴染。

 しかし、いつもの気が付いたら納得させられているような説得力が、先程のりんこの言葉には無かった。

 若干の違和感に、俺は思わず質問する。


「いや……俺は別にいいけどよ……本当にそれだけか……?」


 少し溜めて、幼馴染は口を開く。


「ふふっ、鋭いね。……若干プライドというか、そういうのもあるかもね。……私、負けたくないの、あのずる賢い雫ちゃんを正々堂々真正面から叩き潰したいの。あれだけ自信満々に勝てるわけないって言われたら、熱くなっちゃうよね」

「そ、そうか……ほどほどにしてやってくれよな……」


 今日二度目の幼馴染の鋭い顔。

 俺は曖昧な返事をすることしかできなかった。


「……待っててねあっくん」


 ふわりとした笑みを浮かべるりんこ。


「アナタ達の関係は、私がキッチリ終わらせてあげるから」


 可愛らしい笑顔とは裏腹に、心底物騒なことをつぶやいて、彼女も喫茶店を後にした。








次話は雫のお部屋で、催眠解除編です!えっちです!


お楽しみに!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ド直球にこういうの大好物です。
[良い点] 気付いたらカフェにいた他のお客さん目線で読んでいた俺氏、胃が痛いンゴ...
[良い点] 時々草みたいなネット用語出るの好き草wwww
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