表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界迷子物語  作者: てと
7/14

7



沢山の人で賑わう街をアッシュと並んで歩く。

屋台からは食べ物の良い匂いがしてついついみてしまう。

余所見をしながらも街中を進んでいくと、周りの外装とは一線を画したド派手な店に着いた。看板には“妖精の洋服屋”と書いてある。


「アッシュ、まさかここなの……?」


「そうだ、中から何が出てきても心を強くもて。クロすけも何があっても絶対に攻撃はするな」


『……目が痛くなる建物だな』


意を決して扉を開けて入ると、そこにはド派手な店に相応しい人がいた。

ギルドマスター並の身長、ムキムキの筋肉、濃いメイク、紫色の短髪に花飾りをつけ、髪と同じ色のヒラヒラのドレスを着た “男” がいた。


「いや〜〜ん!!お久しぶりね、アッシュちゃん!!」



――――ガバッ!!!!



「……ぐっ!!」


『……少しばかり可哀想だな』


「あら、可愛らしいお嬢ちゃんとチビちゃんね」


アッシュはぎゅうぎゅうに抱き締められていて、動けないみたいだ。少し顔色が悪い。


「はじめまして、シキです。この子はクロすけっていいます」


「わたしはリリアンヌ、リリィって呼んでちょうだい。敬語は必要ないわよ」


「よろしくね、リリィ」


バチンっとウインクをするリリィは迫力がある。クロすけの尻尾が腕に巻き付き、しっかりとしがみ付いてきた。ビビってるのかクロすけ。別に見た目は派手だけど、怖い人じゃ無さそうなのに。


「リリィ、そろそろ離してくれ。今日はシキの服と靴を買いに来たんだ」


「いやん!!ついにアッシュに春が来たのね!!」


「…………違う」


「冗談よ、でも今の間は気になるわね〜」


ニヤニヤとリリィが茶化してたが、すぐにお仕事モードになったのか、体と足のサイズを測られた。


「どんな服が欲しいのかしら」


「一応冒険者だから、動きやすい服がいい。あと汚れが目立ちにくい色がいいかな」


「マントも2着ほど持ってきてくれ」


「わかったわ。シキちゃん、デザインはどうしましょう」


「リリィのお任せでいいよ」


「選んでくるから座って待っててちょうだい」


リリィは鼻歌を歌いながら店の奥に消えた。

店の中にあるソファに座って待っていると、大量の服と箱を持ってリリィが戻ってきた。


「とりあえず20着持ってきたわ、靴も服に合わせたものよ」


「おお、ありがとう!!」


「ふふふ、ゆっくり選んで」


持ってきてくれた服を手にとって見てみると、どれも可愛いし色も落ち着いた物が多い。何着か派手なものもあるけど。

うん、決めた。


「気に入ったから全部買う!!」


「気前いいわね!好きよそういうの!」


・服20着

・靴5足

・マント2着


総額25万Gを支払ってアイテムボックスにしまう。するとリリィが紅茶とクッキーを出してくれたので、有り難く頂く事にした。


「それにしても、アッシュちゃんが誰かと一緒にいるなんて珍しいわね」


「色々と事情があるんだ。これからなにかと世話になるかもしれない」


「ま、詳しくは聞かないでおくわ」


「……助かる」


「ヤダもう!幼馴染なんだから気にしないの」


いいな、幼馴染。わたしも幼馴染欲しかった。

2人の話を聞きながらクロすけとクッキーを頬張る。クロすけ、わたしの上で食べカスこぼさないで。


「シキちゃんは何歳なのかしら?あ、ごめんなさい。乙女に年齢聞くなんて野暮だったわ……わたしって罪な女ね……」


「お前は男だろう」


「失礼ね!!どこからどう見ても可憐な乙女よ!!」


リリィは般若のような形相でアッシュの胸ぐらを掴んだ。リリィは絶対に怒らせちゃいけないな、気をつけよう。

それより早急にアッシュを救出せねば!!


「わたしは17歳だけど、アッシュとリリィは何歳なの?」


「わたしもアッシュも22歳よ。10代の頃が懐かしいわ」


「まだ全然若いでしょ」


「いやん!!そんなに褒めても何もでないわよ!!」


「ほげっっっ!!!!」


リリィはわたしを軽く小突いたつもりだろうが、とんでもなく痛い。小突かれただけの肩が外れるかと思った。アッシュとクロすけから哀れみの視線を感じる。


「まだ買うものがあるから、そろそろ行く」


「あらそうなの。またいつでも来て頂戴、シキちゃんもね」


「うん、紅茶とお菓子ありがとう!リリィまたね」


「ああん!!可愛いわ〜〜!!」


リリィの豊満な筋肉に抱き締められて窒息しそうになったが、アッシュが救出してくれた。でも、抱き締められた時にリリィが小さな声で『アッシュの側にいてあげてね』って言われたのが少し気になった。


リリィに手を振って次のお店へと向かうが、なんとなくリリィの言葉が引っかかり、何気なくアッシュを観察する。

身長は180を超えているだろう。一目で鍛えられているのが分かるバランスのとれた体。灰色の髪は光の加減で銀色にも見え、瞳は金色。顔は美麗、切れ長の目のせいか冷たい印象がする。


なんだこのイケメン。


「なんだ、欲しい物でもあるのか」


「いんや、アッシュを観察してただけ」


「観察して何か分かったか?」


「アッシュを動物に例えるなら狼だなと」


可哀想な子を見るような目でみられた。なんでだ。

次の店に向かう時に、アッシュに出来るだけ他の人には敬語は使うなと言われた。敬語を使うと下にみられることが多いそうだ。




少し歩いて建物の前に立つ。

剣と防具の絵が描いてある看板があるので、武器と防具屋だろう。

アッシュの後ろに続いて入ると、身長の小さいおじさんがいた。これはもしかすると異世界定番のドワーフでは……


「よう、アッシュ。剣でも研ぎに来たのか?それとも防具がぶっ壊れたか」


「いや、今日はこいつの武器と防具を見繕いに来た」


「あんたが噂の小さいドラゴン使いの嬢ちゃんか」


「噂?」


「冒険者の間で噂になってるぞ。小さいドラゴンを連れた嬢ちゃんが、ギルドの受付嬢とやり合ったってな」


は?何その噂。クロすけはまだしも、なんで受付嬢とやり合ったって事実無根なんだけど。誰だそんな噂を流した奴。


「ま、気にしないことだな!」


「はあ……」


「武器と防具だったな。見たところ嬢ちゃん初心者だろう」


「なんで分かるの?」


「歩き方や姿勢、手を見れば誰でも分かるぞ」


だからさっきアッシュを観察した時、可哀想な目で見られたのか。


「一応、この剣を持って構えてみろ」


渡された剣を持って構えてみたが、想像以上に重くて腕がぷるぷるする。今にも落としそうだったのか、おじさんにすぐに取り上げられた。


「これは下手に武器を持たせると逆に怪我するな。短剣が妥当だろう」


そう言って黒いシンプルな短剣を渡されたので、鑑定を使ってみる。



・オールドダガー

丈夫で初心者でも扱いやすいダガー。



どのダガーがいいのか分からないので、これでいいだろう。持ちやすいし、鑑定の説明でも初心者向けと書いてあったし。これを使って戦えるかは別だけど。


「あとは防具だな。」


・ファントグローブ

軽くて丈夫。火を通しにくい。


・ファントプレート

ある程度の攻撃は防げるが、軽量化されているため強度は低い。


「この2つだけ?」


「嬢ちゃんは防具を着けても、動けなくなるのが目に見える」


確かに。防具の重さで動けなくなったら、それこそ本末転倒だ。指定された金額を支払い店を出る。


そろそろ昼飯の時間だ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ