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異世界迷子物語  作者: てと
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クロすけが騒いでる中、わたしの怪物の声のようなお腹の音が響き渡り、とりあえずお昼を食べようということになった。朝早かったし、多分もうお昼過ぎだと思うからわたしのお腹に罪はない。

せっかくだし、アッシュとクロすけに何か異世界の食べ物を渡そう。あんまり高いものは無理だけど。アッシュにはサンドイッチ3個入りのやつを2つとプリン、クロすけには肉食そうだけどメロンパンでいいか。残金2810円になって心許ないけど、後悔はない。


湖の側に座りアッシュにサンドイッチとプリン(スプーン付き)を渡し、クロすけに袋から出したメロンパンを差し出すと警戒しながらも気になるのか鼻をひくひくさせて匂いを嗅いでる。


「毒なんて入ってないから食べなよ」


『我に毒なんて効くわけがないだろう!』


怒りながらもメロンパンにかぶりついたクロすけは赤い目を見開いて固まってしまった。もしかして口に合わなかったのかな、やっぱり肉じゃないと駄目とか?


『こ、これは……めろんぱんといったか……?』


「うん、美味しくなかった?」


『……これは神の食べ物なのか?長い年月を生きてきたが、こんなに美味い食べ物は初めてだ……』


「そ、そう。良かった」


何故かクロすけはポロポロと涙を流しながらメロンパンを噛みしめるように食べ始めた。なんかクロすけの涙が結晶になって地面にコロコロ転がってるんですけど。チラッとアッシュの方を見ると、アッシュはサンドイッチを食べ終わったのかプリンをゆっくりと食べていた。夢中なのかクロすけの涙の結晶に気がついていない。味わってるんだろう。わたしも昨日買ったおにぎり食べるか。





おにぎりを食べ終わるとアッシュが声をかけてきた。


「ドラゴンの涙が大量に転がっているんだが……」


「クロすけが涙を流しながらメロンパン食べてたんだけど、涙が固まって結晶になったんだよね」


『おい、小娘。メロンパンはもう無いのか?』


呼び方が虫から小娘にランクアップした。こてんっと首を傾げる様子は、大きいラスボス状態の禍々しさが幻だったかのように可愛い。


「うーん……あるにはあるけど、お金が手に入るまではメロンパンあげれないや。ごめんね」


『金が必要ならばこの結晶を売ればよい。虫けら達にはこの結晶は価値のあるものなのだろう?』


「クロすけ、虫じゃなく人間っていいなさい。アッシュ、この結晶ってお金になるの?」


「1つ500万Gは超えるだろうな」


ごめん、アッシュ。この世界のお金の基準が分からないから凄いのか凄くないのか分からない。でもドラゴンの涙って貴重なイメージがあるから多分高いんだろう。地面に30個くらい転がってるけど。


『至高なメロンパンのためになるのなら、案外ゴミでも役に立つな』


「ゴミなんだ……。それじゃクロすけ、この結晶もらうよ?」


『全部拾っておけ、どうせ我にとってはゴミなのだ』


アッシュと手分けして結晶を拾うと、全部で32個もあったので半分アッシュに渡そうとしたら断られた。お世話になってるし、これからもお世話になるだろうからと言って渋々5個だけ受け取ってもらえた。


『さあ、小娘!メロンパンをくれ』


「だから、お金が手に入ったらって言ったでしょ。この結晶はお金になるんだろうけど、お金自体が手に入ったわけじゃないし」


『ならば早く金にするぞ!』


「アッシュ、この後ってどこに行くの?」


「依頼の報告のためにアムサの街に戻るつもりだ。」


「結構遠い?」


「5日もあれば着く」


思った以上に遠いけど、街に行けるのがかなり嬉しい。服とか欲しいしね。さすがに制服着っぱなしは辛いが、我慢するしかない。


『しょうがない、メロンパンのためだ。特別に我の背に乗せて運んでやろう』


クロすけからメロンパンへの執念が感じられる。一応ステータスとスキルをもう一度確認してみるとアッシュとクロすけのステータスが見れるようになっていたので、クロすけのステータスを見てみよう。




名前

クロすけ(ディザストロドラゴン)


レベル 3000


スキル

鑑定 身体強化 小型化 中型化 火属性魔法 風属性魔法 水属性魔法 土属性魔法 雷属性魔法 氷属性魔法 闇属性魔法 結界魔法 回復魔法 


称号 災厄 




クロすけのステータスを見た瞬間また血の気が引いた。今更だがわたしはとんでもない魔物をテイムしたらしい。これは下手をしたら世界中から危険視されて追われることになるんじゃないか?よし、世界に全力で媚を売ろう。それしか道はない。


「クロすけ……メロンパンが食べたいなら絶対魔物以外に攻撃しちゃだめだからね。あと街では小さい姿のままでいて」


『…メロンパンのためなら仕方ない。我慢してやろう』


仕方ないという感じだが納得してくれて良かった。メロンパンの効力すごいな。クロすけが影に包まれてそこから出てきたら車くらいの大きさになっていたので、これが中型モードか。


『さっさと乗って街まで案内しろ』


偉そうに鼻を鳴らしている姿は迫力がある。クロすけの背中に乗ろうとしたけど上手く乗れなかったのでアッシュに引き上げてもらい、それをクロすけが呆れた様子で見ていた。お手数おかけします。


「街の近くまで俺が案内する。出来ればゆっくり飛んで欲しい」


『何故だ?』


「シキが今にも失神しそうだ。俺が支えてはいるが、失神されると支えきれない可能性がある」


『軟弱過ぎるぞ小娘!まだ飛んでもいないぞ!』


「そ、そんなこと言われても……」


だってさ、アッシュに後ろから支えてもらってるけど掴まるところも命綱も無いんだよ?全身ガタガタとマナーモード状態です。ここで 「キャー!楽しいー!」なんて普通に無理でしょ。


「落ち着け、下を見るな。気を失わなければ大丈夫だ」


アッシュ、それって気を失ったら大丈夫じゃないってことだよね。


『もう飛ぶぞ!我の優しさに感謝しろ!』


「ここから北の方角にまっすぐだ」


「ちょっ、ちょおおおおおお!!!!」


もの凄い浮遊感を感じたと思ったら、既にわたし達は空の住人だった。意識が遠のきそうになるけど、気を失ったら落ちる。上を見るんだわたし、考えるな、感じろわたし!

アッシュの腰に回された腕を必死に掴みながら、街の近くに着くまで全身マナーモード状態だった。







「この辺りで降りてくれ」


ハッ!ここはどこだ!言われてもわかんないけど。

現実逃避してる間に着いたらしく、地面が近くにあった。わたしは降りた直後は足が産まれたての子鹿のようにプルプルしていたのに対して、アッシュが平然としていたのは解せん。足が普通の状態に戻るまで少し休む事になったので、その間にわたしの事情を小さくなったクロすけに説明した。



『つまり小娘は違う世界から来て、神の戯れで恩恵をもらったということか』


「まあ、クロすけをテイム出来たのもメロンパンが買えるのも神さまのおかげかな?」


『そこの小僧や我をテイムするのは、神の力がなければ到底無理だろう。気にくわないが、納得した』


結構あっさりと納得したのは拍子抜けした。説明しても信じてくれないで怒られるかと思ったんだけど。


『特にメロンパンは神の力がなければ出すことなど不可能だ!』



え?そこなの?






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