パーツA-2 名前を付けてみた
突然現れたタクミの父親はスタンドに吊るされた『メタル・ウイング』を見て一言こういった。
「話をする前にその子を降ろして名前を付けてあげなさい。その子はもうタクミのPFガールなのだから」
父親に諭されてタクミは『メタル・ウイング』をスタンドから外した。そして『メタル・ウイング』の事をじーと見つめた。
「な、何ですか?」
「サファイヤ、瞳が蒼いからサファイヤが君の名前だ」
「サファイヤ、それが私の名前」
名前を付けられて大人しくなったサファイヤをタクミは机の上に降ろした。
「親父、こういう事になっているのならどうしてもっと速く教えてくれなかったの?PFガールの販売は3年前から。準備期間をいれてもあの一件の後からも計画は続いていたんでしょ」
「そうだ、だが当時小学生だったタクミを関わらせる訳にはいかなかった。高校生になって落ち着いたからサファイヤちゃんを渡した。もしサファイヤちゃんが動かなかったらずっと隠すつもりだった」
「あのー、一体何の話をしているのですか?」
意味深な会話の内容が良く分からなかったのでサファイヤは子供のように聞いた。
「要するに俺は5年前に動くプラモの事を知っていてその事を今まで隠していた親父に文句を言ったんだ」
「私は5年前は小学生だったから秘密にしたけど高校生になったから教える事にしてサファイヤちゃんをタクミに渡したと答えたんだよ」
具体的な事を教えて貰っていないにも関わらず、分かりやすい説明を聞いてサファイヤ納得した。
「そうなのですか。所で私が動く動かないとはどういう事です?」
「一般で販売されているPFガールは動いたりしないんだ。意思を持ち動くことが出来るPFガールはね、特殊なコアを内蔵しているから動くことが出来るんだ。でもね、ただコアを組み込んだだけでは動いたりはしないんだよ。PFガールに対する『愛』が無いと」
「『愛』ですか」
『愛』と言われてサファイヤは頬を赤らめてタクミを見上げだ。
「言っておくけどあくまでプラモデルに対する愛だからな。俺の女の好みは黒髪ロングで胸は控えめだから。金髪で胸が大きくてうるさく暴れるサファイヤは好みのタイプとは逆だからな」
「むー!」
そう言われてサファイヤはむくれた。
「分かろ安く言ううとコアは作り手の想いの力をエネルギーにしてプラモデルの体を動かしているんだ。だから作り手がプラモに対して強い想いを持たないとコアは起動しない。タクミの場合はプラモデル全般に対して強い想いを持っているから大丈夫だと考えていた」
「でもどうしてPFガールを渡したの?俺の専門分野はロボットのプラモなのはよく知っているでしょ」
「まだコアを起動できるのはPFガールの素体だけなんだ」
そう言われると返す言葉は無かった。
「あの、もしかして私は要らな子でした?」
タクミの話を聞いてサファイヤは不安そうにタクミの事を見た。
「そんな事は無いよ。もし要らない子ならサファイヤちゃんは元のプラモデルに戻っているから。タクミは女の子の扱いになれていないから戸惑っているだけなんだよ」
「そうなのですか。良かったです」
安心して朗らかに笑うサファイヤを見てタクミは無言で手の平を上に向けて差し出した。サファイヤは嬉しそうに手のひらの上に飛び乗った。




