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エピローグ「そして新たなる戦いへ!」 

蠱毒成長中「ありがとうござました。これでラストです」

 季節は巡りある年の秋。

 その日、県内のさる私立女学校では体育祭が執り行われていた。

 残暑厳しい炎天下の校庭を、体操着に身を包んだ女学生たちが駆け巡り、様々な競技で互いに競い合っては爽やかな汗を流す。

 そして教職員や来賓、女学生の保護者たちがそれを見守る。

 そんな毎年恒例の、実に有り触れた微笑ましく平和な光景。


 然しその平和な光景は、ある一瞬を境に脆くも崩れ去る。


 校庭の地面を突き破り突如として生える無数の触手。

 逃げ惑う人々を襲い、中でも見目麗しい女ばかり捕縛していく奇抜な体色をしたヒト型の化け物たち。

 そして思わせぶりに高笑いを上げながら遅れて登場する、不敵な笑みを浮かべた美丈夫。


「ふぅーっはははははははははははぁ! 我が覇道に寸分の狂い無し! 全ては悪に染まるのだっ!」


 如何にも特撮番組の悪役といった風な、派手で金のかかっていそうな衣装を着たその男は名を魔王子プリンスサタンと言う。半年ほど前に発足した悪の結社『SINNERS』の幹部を務めるスケイズで、他六人の幹部共々『七大罪を司る魔王の生まれ変わり』という触れ込みで『世界を悪で染め上げる』という何ともアバウトな目的を掲げ、その準備段階と称して拠点近辺で様々な悪事に手を染めていた。

 今回の体育祭襲撃もそうした悪事の一つであり、同時に自分達の名と恐ろしさを世間に知らしめるためという目的も兼ねての行動だった。


「(世俗の穢れ、性というものを知らない温室育ちの美少女たちに確かな恐怖と歪んだ快楽を植え付けることで心をへし折り屈服させ、自らに追従する従順な奴隷に仕立て上げる……我ながら完璧な作戦だ)」


 部下である異形の雑兵に捕縛させた少女達を眺めながら、プリンスサタンは暫し妄想に耽り、そしてそれを現実のものにせんと部下達に命令を下す。

「さあ、お前達。その娘たちに真なる恐怖と至高の快楽というものを教育してやるがいいっ!」

 命令を合図に地面から生えた触手が少女達へと迫り、また異形の雑兵たちも奇抜な色をした身体の一部を気色悪い何かの器官に変化させ不気味に蠢かせる。

 かくして女学校の校庭はスケイズに囚われた少女達の悲鳴が響き渡る阿鼻叫喚の生き地獄へと姿を――変えなかった。


「……? おい、どうした? 何をやっているお前達、悲鳴が聞こえんでは――っぅ!?」


 刹那、プリンスサタンは面食らう余り絶句する。

 雑兵たちが死んでいる。死因は外傷によるものと見られ、頭を撃ち抜かれたものもいれば、首や背骨が有り得ない向きに曲がっているものまで様々だ。更には地面から生やした触手たちまでもが鋭い刃物のようなものによって切断され、再生防止の為か傷口を炎で焼き焦がされ無力化されていた。当然女生徒たちは逃げ出してしまっており、プリンスサタンはこみ上げる怒りに歯噛みする。


「な、何だこれはっ……何が起こっているというのだ……強化したザイカーやテンタークがこうもあっさりと――

「強化しててこの程度かよ。大したことねえなあ」

 などと口走りながらプリンスサタンの眼前へ舞い降りる、人とも虫とも獣ともつかない異形の化け物。本能に訴えかけてくるほど醜く恐ろし気なその姿に見覚えのあったプリンスサタンは、思わず叫ぶ。

「なっ……貴様まさか、赤眼虫か!? 今年の夏にワルジャークの闇騎士三人衆を撃破したという、あの赤眼虫なのかっ!?」

「ん? ああ、まあ、そうなんだろうよ。世間からはそんな風に呼ばれてるらしいからな。しかもその上、こんなナリだから忌み嫌われるかと思やあ救いの神だの英雄だのと崇め奉られてやがると来た。全くわけのわからねえ事だぜ。こっちは単なる遊びでスケイズ狩りしてるってのによぉ」

「……遊び、だと……? あれほどの非道な行いを、貴様は遊びだというのか!? この虐殺も遊びだと言うつもりか!? 我々スケイズは貴様にとってすれば単なる玩具、或いは釣り魚のようなものに過ぎないと、そう言いたいのかっ!?」

「……ああ、そうだとも。遊びだとも。だが玩具、釣り魚って比喩は違うなあ。玩具や釣り魚は愛されるが故に遊ばれるんだ。だが私は別にお前らを愛しちゃいねえ。忌み嫌い憎むが故に殺すのさ。部屋の埃よろしく無限に湧き出るお前らが、一人でも多く、より苦しみながら死滅していくことを切に願いながらな」

「な、何ぃっ?」

「簡単に言えばこうだ……お前らが苦しめば苦しむ程に、私は楽しい気分になれる……笑顔になれるのさ」

「笑顔に……だと?」

「おうよ。まあこのツラじゃ笑顔なんてまともに作れやしねえがな、気分の上ではそうなんだ。だからさぁ、お前も協力してくれよ……苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんでぇっ、この私をもっと笑顔にさせてくれっ!」

 無数の牙の生え揃った大口を激しく開閉させ、赤眼虫こと氏野良夫は口走る。その如何にも狂気的で化け物じみた口ぶりに、プリンスサタンは戦慄し恐怖の余り腰を抜かしながら叫ぶ。

「き、きき……狂人めっ! 害悪めっ! 化け物めっ! この世の何より忌まわしく恐ろしい最低最悪の外道、性根の腐りきった異常者の犯罪者めがぁっ!」

「……おいおい、心外だなぁ。害悪スケイズに害悪呼ばわりとは……お前だってこの学校の体育祭を台無しにして娘っ子達を捕らえちゃ辱めようとしてたじゃねえか。過去にも似たような事を色々してきたんだろ? まともに生きてる一般人からならまだしも、そういうことするようなクソ野郎に狂人だの害悪だの外道だの異常者の犯罪者だのと罵られる筋合いはねえよ。まあこんな見た目だ、化け物ってなあ自覚してるがね……」

「くっ、う……ぐうっ……屁理屈を捏ね回しおって……殺してやる……殺してやるぞ、赤眼虫っ! 知らんだろうが貴様の首には多額の賞金がかけられているのだ! 貴様が遊びで殺した闇騎士達の所属していたワルジャークが首領、ジャークカイザーによってな! つまり貴様は賞金首だ! ここで貴様を殺せば我らSINNERSはワルジャークと提携関係を結べる話になっている! 我らが野望の為にもワルジャークとの提携は決して逃せぬ好機なのだ! 故に死ねいっ!」

 飛び跳ねるように立ち上がったプリンスサタンは、掲げた右掌から黒とも紫ともつかない毒々しい色の炎球――大きさは凡そバスケットボール程――を放つ。炎球は銃弾程のスピードで良夫に直撃し炸裂――

「ふん」

――しなかった。闇のような色の炎球は良夫の腕一振りで跡形もなく掻き消され、彼の身体に傷一つつけることもできはしなかったのである。

「な、ば、バカなっ! 我がオーバーセンス『闇黒地獄滅殺炎ダークネス・ヘル・デストロイ・フレイム』を片手で掻き消すだと!?」

「ちいと火力不足だったようだな。次は燃料を足してみたらどうだ? ホームセンターに売ってる草刈り機用の混合ガソリンなんかいいと思うぞ」

「ふ、ふざけおってぇ! その減らず口、身体ごと焼き尽くしてくれるっ!」

「へっ、やってみやがれ……どうせ無理だろうがなぁ」

「ほっ、ざっ、けぇぇぇぇぇええええええええぃっ!」


 かくして、悪と極悪による戦いの火蓋は切って落とされる。


「苦しめ害悪ども。この私の為に」

得に書くことがない……けど取り敢えず一言だけ。

連載サボってこんなもん書いてて本当に申し訳御座いませんでした!

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