王座継承
伊賀将生・・・(いがまさき)この物語の主人公。『ニフザグ』の第3代 王
シン・・・『ニフザグ』の宰相。
どのくらいたっただろうか、気づくとベットに寝かされていた。
目を開けて最初に見たものは豪華なシャンデリア。辺りを見回すと大きくてやたらと派手な家具、王服に身を包んだおっさんの肖像画。寝かされているのは天蓋付きのベット。ドアには金色をしたドアノブが取り付けられている。ゆっくりと身を起こしたが、少し頭がクラクラする。まだクラクラする頭で状況を整理してみる。多分ここが王城の一室なのだろう。とても豪華だし、前王らしき人の肖像画が飾られているので、王の部屋なのだろう。
「まだOKしてないけどな……」
誰もいない部屋の中で呟くと、ドアをノックする音が室内に響き、失礼します。とシンの声が聞こえた。スラリと長身の優しそうな顔をしていて、日本人女性の理想の彼氏トップ3に入ってそうな完璧なヤツだ。完璧なヤツはベットの上で上半身だけを起こした俺を見て言った。
「お目覚めですか陛下?」
「ああ、起きたよ。どのくらい寝ていた?」
「3日ぐらいですかね。」
3日も!? 俺はそんなに寝ていたのか…… 心配かけただろうな。シンがカーテンを開けると夕日が射し込んでくる。夕日がシンの横顔を照らし、より一層優しさに深みが増した笑顔で聞いてくる。
「具合はどうですか?」
「全然大丈夫!! 明日からは動けるよ。」
「では、明日からはこの国の勉強を始めましょうか。」
シンの笑顔にイタズラっぽさが混じる。しかし、すぐに真顔に戻し俺の目を見てくる。
「陛下に聞きます。貴方は我が国の王になり、全国民、全臣下の期待を背負い、窮地に立たされている我が国を救う覚悟はありますか?」
この世界に来て初めてシンの真剣な眼差しをみた。俺の瞳の奥までも貫き通すような視線。言葉が詰まる。
「あ、あるさ。」
「本当に?」
視線がより鋭くなる。
「前々王は多くの国に戦争を仕掛け、多くの土地を奪われ、最後は自国の民の反乱を鎮圧出来ずに呆気なく首を落とされました。前王は前々王の失敗を取り戻そうと土地奪還を試みましたが、力及ばす多くの兵士を死なせ、隠居しています。」
「だから、どうしたんだよ……」
「貴方にはみんな期待してない。だけど、私は信じてます。貴方には前の王達の失敗を繰り返して欲しくない。だから聞いているんです。」
シンは静かに問いかける。その声の中には希望と言う熱がこもっていた。
「貴方には『覚悟』はありますか?」
俺は少し考えて言った。
「分かったよ、シン。俺はこの世界に来てさうわ、異世界漂流だー!! とかいってはしゃいでたけどさ、お前達みたいに真剣に考えている人達が居ることを忘れていたよ。このままノリで王を引き受けようとしたけどさ、そんなことしてたらこの国滅ぼしていたかもしれない。ごめん!! 俺は決めたよ。」
しっかりとシンを見つめて、瞳を見つめて、逆にシンの心の奥まで見透かすように見て、俺の『覚悟』を言い放つ。
「俺がこの国の王になって窮地から救って見せる!!」
そう言うと俺の周りに青い魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は俺を囲み、何か女性らしき声が俺の頭の中に直接囁いてくる。
『貴方は我が国の王であることを認めます。よって貴方にはこれまでの王が培った記憶、王に代々受け継がれる秘術を授けます。新王にご加護があらんことを。』
なんだ今の声は? そう思っているとシンが教えてくれた。
「あれは、我が国巫女序列第一位、神祇官による王座伝承術式による知識、術式の引き継ぎが行われたんです。」
「そうなのか。その知識とか術式とかは、どうやって使えるんだ?」
使えなかったら意味無いしね。早く使ってみたい。
「まずは、目を閉じ、心を落ち着かせてください。」
俺は言われるままに目を閉じる。そして、言葉を失う。
「な、なんだこれ!?」
「見えましたか? あれが『知識の片鱗』です。」
言われるままに目を閉じ、心を落ち着かせると、目の前に様々な場面のビジョンが見えてくる。俺はそれに驚いて目を開けてしまった。
「慣れるとそのまま片鱗の中に入りこみ、その当時の記憶を見ることができます。」
そんなに便利なのか。王になって色々勉強しなければと思っていたけどしなくて大丈夫そうだ。それにもう一つ授けて貰ったものがある。
「術式はどうやって使うの?」
「それはまた後ほどの訓練で。」
「ふーん、まぁいいか。今後のお楽しみってことで。」
俺の王様ライフはとても忙しくなりそうだった。
投稿どんどん遅くなると思います。