異世界へ
伊賀将生・・・この物語の主人公。『ニフザグ』の第3代 王
壮太縑・・・伊賀将生の親友で、クラス一の秀才。『ニフザグ』の副王。
シン・シールス・・・『ニフザグ』の宰相。
スナイリー・シーザック・・・『ニフザグ』の元帥
「は~~〜…」
俺、伊賀将生はテストの回答欄に答えらしきものを書いて大きく息を吐いた。
ここ、福岡にある桐明如水館高校は、期末テストという名の戦場と化していた。桐明如水館高校、略して桐学は地元でも良くもなく悪くもなくという、特に特色も無いような普通校だ。
俺は、成績も中の上ぐらいで特に悪いわけでもない、焦げ茶の髪と目をしたフツーの男子高校生だ。親に言わせてみたら、正義感が強く少し短気らしい。
「伊賀~、帰るぞー。」
声をかけてきたのは、クラス一の秀才、壮太縑。とても頭が良く、なんでもっと上の学校に行かなかったんだよってレベル。本人曰く、「上の学校はめんどくさい」だそうだ。
壮太に、おーと声を掛けて立ち上がる。テストの拘束から開放された喜びを噛み締めながら、帰宅するとしよう。
桐学のある桐明市は、古くから九州から、江戸への通り道として栄え、なんだか懐かしい感じがする街だ。そんなことを友達に話したら、おじさんくさいとか言われたが…。でも、俺はこの街が好きだし、将来はこの街のために働きたいなと思っていたりする。
「伊賀、公園によってこーぜ、ジュース奢るから。」
「いいよー」
壮太の言葉を快諾し、近くの公園に向かう。
公園についたら、この公園の真ん中に位置する噴水の石に腰掛ける。この噴水はこの地域でも有名で、待ち合わせ場所を決めるときに、「噴水前に集合な」と言うと、9割がこの噴水なる。
壮太から紫色の炭酸飲料が差し出されたのでありがたく受け取る。
「テストお疲れさん。」
「お疲れー、てか、壮太、お前もだろ。」
「俺には簡単だったが、壮太には難しかっただろうと思って。」
さすが秀才、あのテストを簡単だと言えるのが尊敬する。
「ほんと難しかったぞ、お前には分からない苦労だろうがな。」
壮太は、白いはを見せて笑いって話題を変える。
「テストも終わったし、明日から三連休だろ。そう言えば伊賀は何するんだ?」
「三連休は家に引きこもる。」
「不健康だな。」
ほっといてくれよ、俺には二次元と言う帰るべき場所があるんだから。
「何もしないならさ、どっか行こうよ。」
「えー、俺には帰らないと行けない場所があるんだ。」
「いいじゃないか、どーせゲームばっかりだろ。」
まぁ、たまには外出もいいだろう。俺はゲームは大好きだが、アウトドアもいける派だ。
「お前と出掛けるのも久しぶりだな。」
「どこにいこーか?」
「博多なんてどーだ?」
「いいね、街中。」
などと計画を練る。
次の瞬間
小学生ぐらいの男の子が蹴ったボールが、こちらに飛んできて、俺の顔面にヒットした。
俺は体勢を崩し、噴水の水の中に強制ダイブ。
「伊賀!!大丈夫か!?」
壮太が俺の腕を引っ張るが、吸い込まれる力がとても強い。
ん?吸い込まれる!?
目の前にあるはずの噴水の底が無い!!
あるのはとても深い暗闇だけ…
ヤバい、このままじゃ溺れ死ぬ!
俺と壮太はなす術もなく、暗闇に引きずり込まれていった。
子供の頃の夢を見た。
とても懐かしい夢だった。
しかし何も思い出せない。
が が! …が!
「おい、伊賀!!」
右の頬に何度か衝撃を受けて目を覚ました。
「大丈夫か!?気分はどうだ?」
「ああ、問題ない。」
「それより、ここはどこだ?」
「それが、さっぱり。」
見たとこ、辺りは畑で囲まれている。家が一件も見当たらない。
「ほんとにどこだ?」
あたりを見渡していると、二つの馬蹄の音が近づいてきた。 馬に乗っていたのは二人の男だった。一人は茶色の短い髪の背が高く軍服を着ていて、優しい顔つきをしている。もう一人は黒髪の長髪で、白い軍服に青い装飾をつけている、とても整った容姿の持ち主だ。長髪が聞いてくる。
「伊賀将生様とは、どちらですか?」
「ちょっと待て!! 何故俺の名前を知ってるんだ!? しかも様付け!? 」
もう少し突っ込みたいが、長髪が時間を与えてくれない。
「ふむ、こちらの焦げ茶の髪と目をした、凛々しいお顔の方が伊賀将生様ですね?」
そう言い終えると短髪と長髪が俺の前に跪く。長髪が先に口を開く。
「申し遅れました、私、和族の国『二フザグ』の宰相の地位に付いております、『シン・シールス』と申します。」
「俺は『ニフザグ』の元帥を務めております、『スナイリー・シーザック』です。以後お見知りおきを。」
「あ、これはご丁寧に、伊賀将生です。それで、その『ニフザグ』の宰相さんと元帥さんが俺に何の用ですか?」
「何をおっしゃいますか、我が王、壮太縑殿下とあなたを迎えに参上致しました。」
壮太縑殿下!? 俺は振り返り、壮太を見る。
「悪い伊賀、今まで黙ってて。」
「壮太はここに来たことがあるのか?」
壮太は俺の目をまっすぐに見つめて答える。
「ああ、あるよ。それに伊賀にはこれから話さないといけないことが沢山ある。まずは、シンの後ろに跨って王城まで戻ろう。」
この世界の話は後でたっぷり壮太から聞くとして、まず聞きたいことを質問する。
「なぁ、俺は元の世界に戻れるのか?」
壮太は真剣な顔つきで答える。
「結論を言うと帰れる。」
俺はその言葉を聞いてホッとした。だって、大体の異世界漂流系小説は元の世界に戻るために、お姫様を助けないと帰れなかったり、龍を倒さないと帰れなかったり、死に戻りしか出来なかったり、なかなか安全に帰れないからな。しかし、現実は甘くなかった。
「ただし、この世界の王になって、『ニフザグ』の危機を救ってもらう。」
この、壮太の言葉から俺の非日常異世界王様ライフが幕を開けた。
新しいシリーズを書きました。