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「どうして生まれてから大人になった時に御総菜屋さんになろうと思ったんだろう?」

作者: 無名良作

ノボの家は、お惣菜やさんです。


朝から晩までお惣菜ばかり作ってます。


お父さんが造った、お惣菜やさん。


もう親子二代で30年やってます。


 ノボの家は、お惣菜やさんです。


毎日いろんなひとが、お惣菜を買いに来ます。


コロッケ


メンチカツ


ポテトサラダ


からあげ


ヒジキ煮


キンピラゴボウ、、、etc


毎日、普通に食べる、ごく普通のお惣菜・・・


とくに、ごちそうでも・・・、


なんでもない料理・・・


つまらない料理・・・そう思っていました、、


そう!、、、あの日までは、、、、


ノボは、もっと有名な料理人になりたい、


もっと高級な料理、が作れる仕事に就きたい、


毎日、そんなことばかり考えていました。


料理を作ることは大好きでしたが、


自分の作る料理が、ひどくつまらないものに思えて、


しかたありませんでした。


確かにお客さんたちは、


「ここのメンチカツはおいしいなぁ」


「キンピラガ最高なんだよね!」


、、、と、誉めてくれます、、、でも少しもうれしくありません。


「いつか、もっと勉強して有名な料理人になってやる!」


そう思っていました。


 もちろん自分のお金で、有名な料理人の料理を食べてみたり、


高い料理の本を買いあさって勉強したり、、、


そんなある日、いつものように店に行くと入り口の扉に


何か挟まっています。


「なんだろう?チラシかな?」そう思い、引っ張るとそれは


一通の手紙でした、


でも切手は貼ってないし、、


差出人も書いてありませんでした。


「なにかのいたずらかな?」


そう思いながらも、手紙を開きました、、


読んでいくうちに、、、ノボは、今の自分を、恥ずかしく思いました。



・・・手紙にはこう書かれていたのです。・・・


前略


 このような形で、手紙を出すご無礼をお許しください。


いつも、おいしいお惣菜をいただいております。


 私はお父さんの代からそのお店で、お惣菜を買っているものです。


 私も主人もこのお店の味が大好きで、近くを通ったときには必ずよっていきます。


けれども、去年の夏から中々お店に行くことができなくなりました。


と、言うのも主人が病気で入院したためです。


病気は、膵臓がんでした。


発見したときはもう手遅れで、年末まで持つかどうか、、、と言うことでした。


徐々に食欲が落ちて、「なにを食べてもおいしくない。」と言い始めた頃


お店の近くを通りかかりついでに、きんぴらごぼうを買いました。


ちょうどその日は、病院の選択食の日で主人は、


「うどんなら食べられるかもしれない。」


と2,3日前から言っていたので、うどんを頼むことにしてありました。


久しぶりに買ったキンピラなので、うどんの上に乗せて食べるように乗せてあげると、


「ああ!うまい、うまい」と言って全部食べてしまいました。


ほとんど、毎食のように半分以上食べられないので、


こんどの選択食もうどんを、たのもうね!


と言うと主人はうれしそうにうなずき、


うどんの食べられる日を、トテモ楽しみにしていました


が、いざその日が来てみると、一口食べるなり


「おいしくない!」とつぶやき、しばらくしてから


「ああ、あれは、キンピラがうまかったんだ!」と独り言のように、つぶやきました。


「じゃあ、またあのキンピラを買ってくるから、、」


と約束をしましたが、


その3日後、容態が急変し帰らぬ人となり


約束は果たせませんでした。


 でも、このお店で買ったキンピラを乗せた、うどんが


主人が「おいしい!」と、言って食べた


      ・・・・ 最後の食事でした。・・・


       ・・・ありがとうございました。・・・



                          かしこ

                          


ノボは読み終えると、自分の料理をこんなに大事に思ってくれる人が


 いる事を誇りに感じました。


そして今まで自分作ったの料理を見下していたことを、恥じたのです。


一人でも喜んでくれる人がいるのなら胸を張って料理をつくろう!


どうせなら日本一のお惣菜やさんになろう!


そう決意して、今日もキンピラを作るノボでした。



                          おわり


























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