表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の国  作者: 横山ヒロト
第一章【光の国】
7/77

ジェイク=ウェイサム(盗人)

「いやあ、昨日はいい仕事をしたなあ」

 少年ぽさの残る痩躯(そうく)の青年――ジェイク=ウェイサムは満足げにひとりごちる。

「これは――」

 彼の手から光の粒が舞い上がり、それはもう一度その手の中へ戻った。

「かなりのモンだ」

 その光の粒の正体は、宝石だった。ただし、それは彼のものではない。いや、彼自身はもう己が物であると思っているが、それは紛れもなく盗品だった。

 彼の風体から考えれば、出来心で盗んでしまったようにも見えるが、彼にとってそれは日常でしかなかった。なぜなら彼の生業は――盗人なのだから。

 その宝石は丘の上に聳え立つ城の周囲を取り巻くように広がる城下町――通称『貴族街』のとある富豪の家から盗み出したものだった。

それをどこで売り捌こうかと算段していると、視線の先に人が倒れているのが見えた。

急いでその人物の許へ駆け寄る。盗みを働いている時点でおおよそ良識を持っている人間とは言えないが、その事実を除けば、彼は困っている人を見過ごせる性格ではなかった。

倒れていたのは自分よりも幼いであろう少年。精悍な顔立ちをしており、今まで盗んできたどんな金品より美しい金髪金眼は、気品を感じさせた。

「おーい、大丈夫?」

 声をかけてみるが、返事はない。呼吸も弱々しく、細身の彼の体はずいぶんと重く感じられるほど脱力していた。

 どうしたものか、と思案していると、遠くに人の姿が見える。その人物はエアリム二型を運転していた。向こうはまだこちらに気付いていないようだ。

 とりあえず、その人物がいま自分の腕の中で項垂(うなだ)れる少年を助けてくれるだろう、とやや他人任せな思考を展開し、その場を離れることにした。

 しかし、そこでジェイクの足が止まる。そして、視界に入ったものを見てニヤリとした。

「あ~あ、駄目だよね、こういうことしちゃ。迂闊だよ、う、か、つ」

 おもちゃを見付けた子供のように目を爛々(らんらん)と輝かせながら呟く。

 次の瞬間には彼の姿は細い抜け道の中へと消えていった。工場の影になった小道にポツリと浮かぶのは、改造を施されて法定以上の速度を出す靴型のエアリム五型に埋め込まれた輝石の緑色の光。

 そして、彼の手には盗品である宝石以外の重量が加わっていた――――――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ