遥かなる、綿毛
掲載日:2026/01/10
強い風が吹いていました
枯れた葉を
落ちた塵を
破れた紙を巻き上げて
びゅうびゅうと
強い風に流されて
目の前を綿毛が飛んでいきました
ほんの一瞬の出来事でした
しろくちいさな綿毛
漂う間もなく川の向こうへ
どこか遠くへ飛んでいきました
冷たい風に運ばれて
綿毛はどこまで行くのでしょうか
どこかの土で芽吹くのか
どこかの海へ流れるのか
どこかの隙間に落ち着くのか
それとも
誰にも知られず
何にも辿り着かず
忘れられていくのでしょうか
そんな綿毛になりたいと思うのです
誰にも
何処にも
私など最初からいなかったように
けれどこうも思うのです
誰かに
何処かに
私を覚えていてほしいと
小さくとも確かな花を咲かせたいと
もしかしたら
私は花の種ではないかもしれません
ただひたすらに
葉を伸ばすだけの種かもしれません
私は私が何なのかを本当には知らないのです
それでも良いのです
私という綿毛が
この世界にほんの一瞬飛んでいたこと
それは確かなことのはずだから
花が咲かずとも
葉を伸ばせずとも
私は今ここにいるのです
春が恋しい寒い日でした。




