白銀の“帝王”
やっぱこの白河明里とかいうメロ女大好き
「一族……?」
突然のことに頭が理解を拒む。私の家はごくごく普通の一般家庭、この人と血縁は無いはずだ。
それに、『光属性』なんて呪いとは真反対そうな属性じゃないか。
「まあ、正確にはすっごい昔の先祖が一緒なのかな……キミの髪色はけっこう薄い青色だろう?」
「あ、はい……」
「そしてボクの髪は真っ白だ。その一族はね、血が濃いほど髪が白いんだよ。だからまさかとは思ってたけど、ビンゴってわけさ」
なるほど、確かに私も自分と同じくらい髪色が薄い人とは会ったことがない。この人みたいな真っ白なんて、尚更だ。
だからまあ理解はできるが、納得はできない。あの頭痛のこととか、呪いだとか、先祖が一緒だけじゃ説明出来ないと思う。
「あの、それで呪いって……」
「んー……直にわかるよ。そんなことより紫暗のところに戻ろう、向こうとそろそろ“終わった”頃だろうしね」
あからさまに話をはぐらかされた。だが、そう語る様子がいつものキラキラした感じとは一変して、顔に影を落としているように見えた。
そんなものを見たら、まあ踏み込めないよな。私だってそこまで野暮じゃないし、自分からノイズを出す趣味もない。
「じゃあ行こうか。紫暗ー」
「なに?もう終わったの?」
『紫暗』、の音を聞いた時にはもうそこに紫暗先生の姿があった。瞬きで視界が途切れなくても、やっぱりどうやってるのか分からない。
「あぁ、終わったよ。予想通りだったかな」
「……そう、なら行くよ。こっちも終わったから」
紫暗先生は私と白河明里の手を取り、そしてまた景色が教室に変わ……らなかった。
白河明里がもう片方の手で紫暗先生の手を掴み、発動を止めたっぽい。
「あ、いや今度はそっちの二人を連れてきて欲しいんだ。庭で訓練……つまりボク直々に試してみたいのさ、キミの特選クラスをね」
英雄直々に訓練……おそらく誰にでも経験できることではない、願ってもないことだろう。
頭が熱くクリアになり、自分の目が開かれるのを感じる。願ってもないことだ、それにその光属性とか言うのを試してもみたいし。
しかし、対する紫暗先生の反応は冷ややかだった。目つきはさっきみたいに鋭くなってるし、握る手に少し力が入った。
「明里、実戦訓練~とか言って、またお仕事から逃げる気じゃないよね?」
「……そ、そんなわけないだろう?ボクを誰だと思ってるんだい?」
「昨日部下の女の子の家に泊まって朝帰りした浮気ゴミ女たらし」
「いや、あー、まぁそれは置いといて。今回は本気さ、後進育成もこのボクの務めだからね」
相変わらず冷や汗ダラダラな白河明里と、ジト目で睨み続ける紫暗先生。しばらくそうしてたけど、一瞬ため息の音が聞こえてすぐ紫暗先生の姿が消えた。
許されたことに安堵したのか、白河明里がまたその場に崩れ落ちる。私の視線を感じてか立ち上がってウィンクを飛ばしてくるけど、いやもうカッコつけは無理だろう。
実はこの人かなり可愛いんじゃないか?
キャラでもないが、目の前の小さな英雄に少し胸がキュンとした。
だけど、さっきの紫暗先生を思うと胸がギュゥゥゥゥって握りつぶされた気分になったから、やめておこ。
「紫暗はもう庭に向かってるだろうね。あの子が選ぶ場所はいつも同じだから、ボク達もそこに行くとするか」
「そういえば、お二人の家の庭ってかなり広いですよね。どうやって家から行き来してるんですか?紫暗先生がいない時とか特に」
「んー?キミ、ボクを舐めすぎじゃないかい?さっきは、まあ、情けないところを見せたけど、これでもかなりすごい人なんだからね?」
「あ、すみません」
「まあいいさ、なら見せてあげよう。紫暗よりは速くないけど、このボクの“固有魔法”を!!」
言葉を言い切ると、途端に白河明里の周囲に風が吹き荒れる。なびくツインテと軍服のマント、そして肩で主張する『隊長』の二文字。その姿はまさに英雄と言ったところだ。
「死にたくなかったらちゃんとボクに捕まっててね、紫暗みたいに便利な魔法じゃないからさ」
「はい、分かりました」
言われて、しっかりと手を握る。だがそれじゃあ足りないと言わんばかりに、白河明里は私のことを抱き上げた。
「えっ、これ紫暗先生に殺され……」
「じゃあ行こうか!!
“ルミナス・エンペラー”、この帝王の赤き道へ!!」
白河明里の右目、赤い方の目が光る。その時、私は初めて『死 』を感じた。
蹴り上げられた地面。その踏み込みの音が耳に届くよりも早く、風景は庭へと移った。
しかし、紫暗先生の魔法と違って本当の一瞬ではない。現に私の肌は今、バイクに乗っている時よりの何倍も強く、空気が顔に当たる感触を捉えた。
この魔法は単純明快、超スピードだ。正確には、まるで白河明里の時間だけが猛烈に加速している感じ。踏み込む力自体は強くない、じゃなきゃ地面や周りがもっとえぐれてるはずだ。
「とうちゃーく、どうだい?ボクの魔法は」
ドヤ顔で胸を張る白河明里。その右目はもう光ってはいなかった。着いたらしいので、一度あたりを見回す。
視界に広がるのはこの前東条と戦った平原、明らかにブチギレた目で睨んでる紫暗先生、いつも通りな東条、そして凛…………凛!?
「明里……なに、してるの?さっきの話、聞いてないよね。ねえ、女たらしクソゴミカス浮気野郎さん?」
「えっ、これ運ぶためだから別に」
「黙って、私帰るから。訓練したいなら一人で勝手にやって、帰る時だけ呼んで」
「ちょっ、しおっ」
「バカ、もう顔も見たくない」
やっぱりこうなったか、紫暗先生は本当に帰ってしまった。取り残されたのは私達特選クラスと、また落ち込んでる白河明里だけ。
ていうかなんで凛がいるんだ?もしかして、さっき言ってたもう一人の特選クラスって凛なの?
「ねえり……」
「まって、鏡。凛ちゃんは今冷静さを失おうとしています。鏡……凛ちゃんという旦那様がいながら、浮気ですか!?」
「えっキミ達ってそういう」
「違う!!」
すかさず白河明里の腕から降りて、凛の元へ駆け出す。風を切り、羞恥心に暑くなる顔を少しでも冷まし、そして凛を全力でぶん殴った。
だけど思いのほか力が強くなってて、凛は信じられないくらい吹っ飛んで地面に激突した。その姿に、少しだけ胸がチクッとする。
「あ、凛ごめんやりすぎた」
「ふっふっふっ、いいんだよ鏡。凛ちゃんもだいぶつよーーくなってここに来たからね」
意外にも、吹っ飛んだ凛はピンピンしていた。着地した時に大量の砂埃や泥が舞っていたから、結構な勢いで激突したはずなのに。
「佐倉さん、その子と知り合い?最初知らないやつが教室に居たから、不審者だと思って殴っちゃったけど」
「あー、東条一人で飛ばされてたしね」
「そう、だから私は悪くないってわけ。それにその子、中々硬いから多分効いてなかったし」
「き、効いてるよ?あれは痛かったからね?」
ほっぺたをさする凛と、いつも通り無関心な東条。そういえば、白河明里が訓練するみたいなこと言ってたけど、何するんだろう。
「キミ達、このボクを目の前にして無視するとはいい度胸だね。今日はボクが紫暗の代わりに訓練をつけてあげるというのにさ」
不貞腐れた表情で歩いてくるが、さっきの印象と低い背のせいであまり怖くない。
「あの、何するんですか?紫暗先生の時は普通に模擬戦したりしてるんですけど」
「模擬戦か……いいね、それ」
瞬間、空気が震えた。キレた時の紫暗先生が放っていた圧よりもさらに強い、そう思わされる『空間の揺れ』
そんな様子に、思わず跳んで距離を取ってしまう。東条や凛も、咄嗟に構えを撮っていた。
「よし、やろうか模擬戦。相手はまあ……このボクでいいだろう」
一歩一歩進む度に、大気の揺れによって高い音が鳴り響く。不規則に配列された音のはずなのに、何故かそれは何か神々しい曲のように聞こえた。
いつの間にか腰の剣は遠くに置かれ、その右手には木刀が握られている。右目はさっきみたいに赤く光り輝き、それがまた不気味さを放っていた。
「紫暗の真似をするなら、『殺す気でかかってきな』。属性魔法、体術、なんなら卑怯な手でも……全てをぶつけて、せいぜいこのボクと“戦って”みたまえ!!」
読んでくれてありがとうございます!!
次回はバトルです!!メロ女の戦闘なんで多分いつもよりもかなり頑張ります!!
もし気に入って頂けたらブックマークとかしていただけると嬉しいです!!百合の燃料になるので。




