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きざし。(後編)

一話の後編、かな。ここからもっと百合百合させていきたい

あれから少し時間がすぎて、今は下校中。いつも通り凛と屋上で駄弁ろうと思ったのだが、あいにく雨なのでまっすぐ帰宅だ。


「雨やだーーーー、凛ちゃんの王国がーーーー」


「凛ほんと屋上好きだよね。授業中いつも日向ぼっこしてるし」


凛はほとんど学校に来ない、来たとしても屋上で寝てる。まあ頭おかしいけど、成績はいいから黙認されてるみたいだ。このまま行けば有名大学に進学確定だしね。


「凛はさ、やっぱ卒業したらいい大学行きたい?」


「ん?あー、昼の続き?僕の家は比較的放任主義だから行かなくてもいいと思うけどー、行った方が楽そうだよね色々」


「まあそうだけど……なんだか、面白くなさそう」


「鏡起業したら?人の下で働くの嫌だろうし、絶対同僚から嫌われそうだし」


「そうだね、私もそうだと思う。だけど多分、起業したって変わらないよ。本当の意味で面白くは、ない」


その時、何となく頭に昼見たポスターがよぎった。まるで流れに従うように軍のホームページを開く。


そこには変わらずただ一言、18歳以上のみ入学可(全寮制)の文字があるだけ。他の内部情報と言ったら、それこそ凛が言っていた歴史だとか教育理念とかくらいしかない。


「鏡、そんなに軍が気になるの?あ、でも確かに僕も気になる!!どうやってあんなに長く美少女のままいられるのか!!」


「ああなりたいなら薬とか作ろうか?老化なんて細胞分裂の延長線だし、生物は少し得意だから頑張れば作れるかも」


「うわー……冗談にサラッとそういうこと言っちゃう?まあでも、鏡ならほんとにできそうだけどね~」


「まあ本当にはやらないけど、さすがに私でも時間かかるだろうし。そっち系興味無いから」


凛は美少女好きだから不老とか興味ありそうだけど、生憎私は自分の外見にそんな執着がない。だからまあ、多分十年くらいかければできるけどやりたくはないね。


「鏡可愛いから惜しいなぁ~。作れるならずっと可愛いままでいてよー」


「はいはい、そんなことはいいから。もっと詳しく学校のこと聞かせてよ」


「あ!!そうそうちなみにその可愛い英雄ちゃんの名前は、白……」


学校について聞いたのにまた女語りを始める凛を横目に、再びホームページへと目を移す。そして、何となく指が吸い込まれるように職員一覧の部分を開いた。


その瞬間、その中の写真と目が合ったような気がした。映し出された白髪の美少女、恐らく凛の言う“英雄ちゃん”だ。私はこの人を知らない、なんなら外見すら今初めて見た。


でも何故だろうか、目が合った時私の胸で小さなざわめきが弾けた。周りで響く音が居なくなって、まるで私と携帯の画面だけが世界から切り取られたような、そんな気分になった。


ノイズどころじゃない雑音だけが私の脳を支配して、妙な頭痛が思考をかき乱す。だが不思議と不快感はなかった。あるのはただ一つ残った思考、いや欲望に近いかな。

理由なんかない、なんとなく

____この人に、会いたくなった。強烈に。私と意思とは無関係に、ただ……何かに呼ばれたかのように。


「私、軍に入る」


気づいた時には、もう言葉になっていた。自分でも驚くほど自然に。なぜそんなことを言ったかは分からない。


それを合図にしたかのように周りが重い空気に包まれ、自ずと凛も黙る。傘に当たる雨粒の音と二人の息遣いだけが、静寂を満たしていた。


「鏡、本気?君らしくないよ、軍なんて今の世の中に合わないってわかってるくせに」


「うん、そうだね。でも私たちだって今の世の中には合わない、でしょ?」


「それはそうだけど……」


「だったら世間一般から見た正解より、得体の知れない不正解のほうが、私は面白いと思う。だから、できるなら凛も着いてきて欲しい」


凛は再び口を噤んだ。その目からはいつもの自信は感じられず、少しばかり揺らいでいるように見える。まあ、私だって馬鹿げたこと言ってるってわかってるし当たり前か。


でも私たちから見たら、授業の方がよっぽど馬鹿げているはずだ。それが続くくらいなら、せめて面白い……いや、知らないことへ飛び込んでみたいじゃないか。


「……わかった、着いてくよ。鏡一度言い出したら聞かないし」


「自分で言っといてなんだけどほんとにいいの?凛なら多分いい大学行けるし、無理して私に着いてこなくていいよ」


「鏡、僕を見くびらないでよ~。僕も大学なんて行きたくないし、僕は鏡といられるだけでいいから。……旦那様として、ねっ!!」


冗談交じりに言うが、その目はいつにも増して真剣だった。まあ旦那の部分はいつもの軽口だと思うが、ついて行く覚悟は本物なのだろう。


「うん、ありがとう凛」


「だ、旦那様の部分を否定されていない!?こ、これはさすがに僕たち結婚」


「してない、勝手に決めるな」


「あっははっ、わかってるってじょーだんだよ冗談」


もうさっきのシリアスな雰囲気は消えて、すっかりいつも通りに戻った凜。たった今人生に関わる重大な決定をしたのに、すごいメンタルだ。まあそんな姿に、私は昔から救われてたんだけど。


お互いを理解してくれるのはお互いだけ。そんな奇妙な関係性な私たちだが、それでも絆はある。軍に共に入ると決めたこの日。雨はもう、降ってはいなかった。それが、全ての始まりだった。



広い一室、書斎のような部屋の中に女の子が二人。中央の大きなデスクに腰かける白髪の少女は晴れた外を見つめ、側に立つし

黒髪の少女はカップに入ったコーヒーの水面を眺めていた。


「晴れたね、梅雨だからこのままずっと降ると思ってたのに」


「ね、私も。コーヒー入れたけど飲む?」


「飲むー」


黒髪の少女はカップにもう一杯コーヒーを注ぎ、白髪の少女に手渡した。そして白髪の少女が口をつけたその時、「パキ」と小さな音が響いた。


「え、割った?」


「……んーん、なんか取っ手のところにヒビ入っちゃっただけ」


「そっか。残念だね、それ捨てなきゃじゃん。ずっと使ってたのに」


黒髪の少女はそう言うと、白髪の少女の後ろに回って窓を開けた。反対に、デスクに向き直った白髪の少女は壊れたカップを見つめる。


ものが壊れた、ただそれだけ。時間があるからには当たり前であるその時が、今だっただけだ。それなのに、そのカップが放つ不気味な異様さは、えも言えない不安をただ表していた。


「……変なの」


白髪の少女はポツリとつぶやく。だがその微かな違和感も、小さなつぶやきも、時間とともに記憶の彼方へと消えていった。

読んでくれてありがとうございます!!

黒髪と白髪はマジでキーパーソン、というか私の推しキャラ。

もし気に入って頂けたらブックマークとかしていただけると嬉しいです!!百合の燃料になるので。

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