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もう少しだけ……私達は、この物語の題名を知らない  作者: 海乃いるか


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未来のかたち

 おばあさんは話を続けた。


「昔は月に沢山の超越者がいたのよ。でも何の感情も持たず、ただ楽しく過ごしていただけだったから、みんな消えてしまったわ。」


「月……おばあさんはかぐや姫なの?」


「そんな呼び名もあったわね。」少し遠い目をした。やはりそうなのだろう。


「まあ、昔の話だから気にしないで。重要なのはね、他人を愛することなのよ。愛はこの世界の秩序に矛盾を与え、摩擦を起こしてエネルギーを生む、そして、私達の存在する鎖となる。」


 彼女は遠い目のままタメ息をつく。きっと色々あったのだろう。そして、飲み込む様に目蓋を閉じて私に微笑んで向き直した。


「超越者の彼が失くなってしまったのは残念ではあるけれでも、貴女が愛してきた彼はこれからも存在する。このままシナリオを続ければ貴女は一度死んだ事になるけれども、でもその後は自由よ、縛りはなくなるから。そっくりさんの別人として出会い直しても良いし、超越者であることを話してお付き合いを初めても良いわ。」


 ニコニコとしていたおばあさん。急に恐い顔をして人差し指を立てた。


「1つだけ、してはならない事があるわ。それはね、執着してしまうことよ。例えば彼が生きているのに諦めるとかして少しでも心残りをしてしまうと、それはね愛ではなくなって邪悪な物へと変化してしまう。そうなると精神や身体もそれに伴って変化してしまうわ。それが妖怪やモノノ怪の類いよ。まあ、時間が立てば消えて行くものではあるけれども他の人に迷惑をかけてしまうものだから、それは止めた方がいいわ。だから、縛りが解けたら、ややこしいこと考えずにとっとと彼の事をものにしてしまいなさい。」


「問題は彼が寿命を全うしてからなのよね」と、彼女は再度タメ息を着いた。


「新しい恋を見つけないと私達は妖怪やらモノノ怪になるわ、百パーセント。だからあなた達は二人で超越者としてずっと永遠であり続けて欲しかったのよ。まあ、もう仕方のないことだけどね。」


 マジでか……、愛する事を続けないとモノノ怪になっちゃうのか……。節目節目で恋を見つけろと……。


「まあ、私達は老いたりしないから、相手が老いたら捨てちゃって新しい恋を見つけに行くのもありありよ!あ、ちなみに今見せてるおばあさん姿はキャラ作りのためにちょっと変身しているだけだからね。」


 急に衝撃的なことを聞いた気がした。ここまで神聖なおばあさんキャラだとばかり思っていたのに、この人?この神、遊び好きの神だったの?と疑ってしまうよ……。


「貴女も受け入れて慣れて行くしかないわ。もう呪いみたいなものだから。昔の月の仲間にも、何人かは愛を知った者がいて月が滅んでから地球に降りて来たのだけれど、私以外みんなモノノ怪になって退治されたり消えてしまったわ。それは悲惨な光景だったわよ。そんなことにはならないでね。」


 私の背中に優しく手を置いて「頑張ってね」とポンポンと叩いた。


「取りあえず、貴女は、先ずはこの縛りのシナリオを全うしなさい。そして無事にこの世界を存続させてちょうだい!」


 彼女は顔の高さに指パッチンの手を構えた。


「この指が鳴ったら時を動かすわ、用意はいい?」


 私は目蓋を閉じ過去を振り返った。そしてゆうくんの方へ振り向き「はい」と首を縦に振った。


 パチンと言う音と共に私の日々はまた動き出した。




* * * * *




 それから私は思い出を楽しむ様に日々をやり直した。


 新入生歓迎会をやって健治くんやるなちゃんが入ってきて。


 ゴールデンウィークに伊勢志摩行って、みんなで映画観に行ったり、あじさい坂に行ったり……最後は北海道を満喫した。


 そして今、静かな病室にいる。


 車の音も聞こえない、ただカーテンでフワリと遊ぶ風や鳥が歌う鼻歌が聞こえてくる程度の静かな病室。


 運命の日まで後、一週間程。


 しかし、私は焦っていた。


 世界崩壊を逃れるために努力はしていた。


 しかし、病の力には勝てないと、後、一週間の所で悟った。


 私は、誰もいないのを確認して「かぐやさん助けて欲しいです。このまま行くと世界が崩壊してしまいます。」と小声で求めた。


 直ぐ様、「どうしたと言うんだ?」彼女の気配が現れた。


「私、最後に彼に抱いてもらうんですけど、でも今の身体は前よりも健康的すぎるんです。このままでは彼の対応が変わってしまう。努力はしてきましたが、これではまだ全然足りません。世界が崩壊してしまいます。」


「なんと……」と、おばあさんはうつ向いてしまった。

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