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SparkingHeros ~聖獣の子守歌~  作者: 如月霞
第一章 出会いと旅立ちの序曲
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出会いと旅立ちの序曲 その11

 暗い夜の闇に包まれた街、セレモニ。そこは、昼間のように人々が行き交い賑わうような世界ではなかった。まるで、深い闇に覆われ、静寂に包まれた何か恐ろしいモノが徘徊しているような、そんな場所だった。


「ばーさん、一体どこに向かってんだ?」


 そんな闇の中を、小さなランプを手に走りながら、少年は行き先を尋ねた。


「街外れに大きな見張り塔がある。そこに向かっとるんじゃ」


 メルキドの返答に、少年は少し考えてみると、昼間街に来た際に見えた大きな塔を思い出した。確かに、結構な高さの塔があったが、こんな夜にあんな場所に行って何をするつもりなのか、少年には見当もつかなかった。


「今回受けた依頼は、魔獣の退治じゃ」


「魔獣の?」


 街の大通りを走りながら、ようやくメルキドが依頼のことを口にし始めた。その内容が少し意外だったため、少年は思わず尋ね返してしまった。てっきり、もっと安全な依頼を受けたのだと思っていた。今まで黙っていたのも、そんな簡単な依頼だからだと思い込んでいたが、予想とは随分違い、物騒な依頼だ。


「そうじゃ。どうやら、魔獣の森の奥深くに棲んでおる魔獣が、何を血迷ったか人里まで来て悪さしておるらしい」


 魔獣の森には多くの生き物や魔獣が棲んでいる。奥に進めば進むほど、凶暴で強い魔獣が多いらしく、少年もメルキドからそう聞かされていた。それが、人里まで出ているとなると、随分と危険な状況だ。


「なるほど、そいつの退治ってわけ?」


「そういうことじゃ」


 のんきに話しているメルキドだが、内容は非常に危険で、命のやりとりを行うものだった。当然、魔獣の森に棲む魔獣程度なら、メルキドが負けることは無いだろうが、奥に進めばどんな魔獣が出るのか、少年も知らない。下手すれば、メルキドでさえ太刀打ちできないものもいるかもしれないのだ。


「ターゲットの魔獣は、”サファイアイーグル”。その目が、サファイアのようにきらめいているところから来た名じゃ」


 討伐対象の名を少年に教えると、メルキドは少しだけ目を細めた。


「強いの?」


「かなりな」


 その表情を見て何かを感じ取った少年は、重要なことを尋ねてみたが、あっさりと答えが返ってきた。おそらくは、かなり強い魔獣なのだろう。少年が出張る仕事ではない、と話してはいたが、日頃少年が見ている魔獣達とは比べものにならない程強い魔獣の退治を受けてきたのではないかと心配になってくる。


「安心せい、お前が思っておるほど強くはない」


 そんな事を考えていると、顔に不安が出てたのか、メルキドはそう言葉を添えてきた。彼の心配事など、彼女には見透かされているのだろう。

 そんなやりとりをしている間に、昼間見つけていた見張り塔が近づいてくる。月の明かりで浮かび上がるように見える見張り塔は、何か別世界に迷い込んだかのように、不気味な姿をしていた。


「不気味だよな」


「まぁ、見張り塔とはいえ、常に人が見張っておるわけでもないからのぉ。人がおらんようになれば、ただ気味の悪い塔にすぎん」


 少年のつぶやきに、メルキドはそう答えた。確かに、人が居た昼間とは大きく違う姿が、ギャップとなってより一層不気味さを増している気がした。まるで、心霊番組に出てくる心霊スポットのようだ。


「ヒロ、お前は下で待っとれ」


「おぅっ!」


 見張り塔までやってくると、メルキドは少年にそう指示して、中へと入っていった。少年が中をのぞき込むと、螺旋状の階段が上に続いており、おそらく、一番上が見張りを行う為の屋上のようになっているのだろう。


「………」


 そして、改めて考えてみると、サファイアイーグルは空を飛びそうな名だ。なんせ、イーグルなんて名前に付くのだから鳥のような魔獣だろう。そうすると、下で待っている自分に意味があるのだろうか、そんな考えが少年によぎった。


「無いよな、絶対」


 留守番である。肩を落としてため息をつくと、自分の役割が仕事とは全く関係ないことに落ち込んでしまった。結局は、仕事はメルキドだけで行うのだから、しょうがない。


 そんな落ち込んだ気持ちの中、少年は真っ暗な街並みを眺めて不思議なことに気づいた。昼間はあまり気にならなかったが、この見張り塔は塀の側に作られているのではなく、塀から少し離れた場所に建てられていた。街の入り口から入ってくるとこの塔を中心に少し大きな広場になっており、街の建物もその周辺にはなく、少し奥に入った所から並んでいた。


「おい、そこのお前?」


 妙な形をしている街の作りに疑問を抱きながら、少年が奥に見える街の明かりを眺めていると、ふと横から声をかけられて振り返った。そこには、革製の鎧を身に纏った男がランプを片手に立っていた。ちょうど、塔の裏側からやってきたであろう彼は、片手に槍を手にして少年の方を照らしてきた。


「何をしている?」


 不審人物を見るかのように、男は少年を下から上までじっくりと見ると、少し警戒するかのように重心を下げた。そんな彼を見て、少年は慌てて両手を挙げて……


「いや、別に変なことをしようとしてるんじゃないんだ」


 と言って弁解した。おそらく、不審人物に声をかけてきたのだろう。しかし、それをいうならお互い様な気もするが、そこはあえて突っ込まないことにした。


「サファイアイーグルを討伐する依頼を受けてきたんだ」


 とりあえず、メルキドに聞かされていた依頼内容を告げると、より一層疑ってきた様子で、槍がじわりと少年へと向けられてしまう。


「お前さんがか?」


 何がダメだったのかと考えていると、男からその言葉が出てきて、少年はなんとなく察した。ようは、その魔獣を少年が倒せるとは思えないということだろう。もし強そうな魔獣なら、そう思われてもしょうがない。

 とりあえず、少年は男に落ち着いてもらおうと、さらに弁解に言葉を並べた。


「いや、連れが受けたんだ。だから、俺はここで待ってるだけだよ」


 そう言って、指先を上に向けてそう話した。それを聞いて、男も釣られて上を向いて塔の上を見ると、人影でも見えたのか納得した様子で槍を持ち直して緊張を解くと、大きく息を吐いた。


「なるほど。それで、見張り塔の上で戦う気か」


 男は、そう呟きながら少年に軽く頭を下げてきた。


「いやいや、疑ってすまなかったな。一応見回りの最中にお前さんを見かけたんで、自警団員としては声をかけないわけにはいかなかったんだ」


 バツの悪そうな顔をした男は、自警団員らしく、見回りの最中に少年を見つけて職務質問をしてきただけだった。確かに、こんな夜中に見張り塔の周りを、明かりも持たずにウロウロしていれば怪しく見えても仕方ない。


「そりゃ、ご苦労さん。仕事の邪魔しちゃったみたいで悪かったよ、変に気を遣わせちゃって」


「いや、こっちこそ、お仕事ご苦労さんだな」


 自警団員にそう言われて、自分たちも依頼を受けてやってきたことを思い出した。確かに、仕事中といえば仕事中だが、少年は何もしていないので、あまりそんな感じはしなかった。


「まぁ、頑張って退治して……」


『キィィィ』


 彼が言葉を最後まで話すことは無く、そこで遮られると、あたりに甲高い鳥の鳴き声のようなものが鳴り響いた。その声を聞いて、少年も自警団員も、ふと視線を上に向けてキョロキョロとあたりを見渡した。


「来やがった」


 自警団員がそう言うと、月明かりの夜空に、1匹の大きな鳥の影が浮かび上がる。鷹か隼か、フォルムはそう見えたが、大きさだけは異常で、明らかに普通の鳥のサイズでは無かった。


「あれが、サファイアイーグル?」


「ああ」


 少年の問いに、自警団員が短く答えると、辺りに緊張が走る。月明かりに照らされたその姿には、明らかに異常さが感じられる。


「目が光ってる」


「そうだ、あれがサファイアイーグル特有の目だ」


 月のおかげで明るいとはいえ、その姿が鮮明に見えるほどではない。ただ、その月明かりによって照らし出されている魔獣の瞳は、サファイアのように青く光り輝いていた。そんな姿を見つめ、少年は思わず綺麗だと口にしてしまいそうになるのをギリギリのところで飲み込んだ。


「塔の上に、お前さんの連れがいるのか?」


 ゆっくりと見張り塔の周りを周回しているサファイアイーグルを見上げながら、自警団員は少年にそう尋ねてきた。その手は僅かに震えており、その魔獣がどれほど強い存在なのかを物語っていた。


「ああ、メチャメチャ強いから、負けることはないだろうけど」


 少年の言葉に、頼むぞ……と独り言のように小さくつぶやく自警団員。非常に他人任せな言葉だが、それも仕方ない。街の自警団でどうにかなる相手なら、はじめからギルドに依頼など入らないだろう。そう考えると、少年も少し心配になってくる。


「大丈夫だよな……ばーさん」


 思わずそんな言葉を口にしながら、塔の上を見上げると、メルキドとサファイアイーグルの声が聞こえてくる。その間から、金属がぶつかるような音がして、どうやら戦っている様子が覗えた。


「まぁ、大丈夫だろ」


 多少心配ではあるが、少年はあっさりとそう結論づけると、気分を切り替えた。


「本当か? お前さんの連れが、上で死体になってたなんてシャレにならんぞ?」


「大丈夫、大丈夫、ばーさんは強いからな」


 心配そうにしている彼に、少年は軽く答えた。さすがに、自分に心配されるほどメルキドも落ちてはいないだろうと判断したのだ。それに、少年が知る彼女は、魔獣程度にやられている姿は想像がつかない。


「まぁ、のんびりと待ちますかね」


 そう呟くと、少年は真夜中の夜空を見上げた。夜空には、綺麗な月が輝き、辺りを僅かな光で照らし出している。


 そんな中、少年は不思議な違和感を感じていた。それは、何か嫌な予感をさせるような、そんな不思議な感覚だった。






To be Continued...

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