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ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第1部
9/67

第8話『交わる心』

引きこもり続けた薄暗い部屋に、

微かな光が差し込んでいた。


 


扉は、わずかに開いている。


 


少年は、泣き腫らしたような目で、

そっとユウトを見上げた。


 


「……ほんとうに……たすけて、くれるの……?」


 


震える声。

怯えきった心。


 


ユウトは、静かに頷いた。


 


「もちろん。君を、傷つけたりしない」


 


その言葉に、少年は戸惑いながらも、

一歩だけ、扉の向こうへと足を踏み出した。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


部屋の中。


 


布団が乱れたままのベッド。

散らかった教科書と、折れた鉛筆。

壁には、何かにぶつかった跡が生々しく残っていた。


 


少年は、

その景色を見せることさえ、恥ずかしそうに俯いた。


 


「……オレ、……オレ、友達を……母さんを……」


 


少年の声は、震えていた。


 


「バリア……勝手に出て……突き飛ばして……

友達は、骨折して……

母さんは……顔を……」


 


唇を噛み締める少年。


 


「……それから、

オレを見たみんなの目が、変わったんだ。

怖い、って……気持ちが、バリア越しに、流れ込んできた……!」


 


リカが、帽子の下からそっと目を伏せた。


 


少年は、力なく呟いた。


 


「オレ、……生きてちゃ、いけないんだって……思った……」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


ユウトは、そっと少年の隣に膝をついた。


 


「俺も……同じだったよ」


 


少年が顔を上げる。


 


ユウトは、遠い目で、語り始めた。


 


「昔……

空から、赤い雨が降った日があった」


 


少年の瞳が揺れる。


 


「俺は、そのとき……

たぶん、自分の力を暴走させたんだと思う」


 


街が、壊れた。

大切な人が、叫んでいた。

何もできなかった自分だけが、そこに残った。


 


「怖かった。

怖すぎて、……それから、ずっと、感情を抑えて生きるようになった」


 


震える拳を、膝の上で握りしめる。


 


「誰かを傷つけるくらいなら、

……何も感じないほうが、マシだって、思ったから」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


静かな沈黙が落ちる。


 


けれど、

その沈黙の中で、確かに”何か”が、交わった。


 


少年は、

怯えながらも、小さく口を開いた。


 


「……でも、君は、怖くない……」


 


「君に触れたとき、感じた……

怖さじゃない。

拒絶でもない。

……あたたかいものだった」


 


ユウトは、そっと微笑んだ。


 


「俺たちは、同じなんだよ。

怖がりで、弱くて、

……でも、本当は、誰かを守りたいって思ってる」


 


少年の目に、

再び涙が浮かんだ。


 


「……オレ、外に、行きたい」


 


小さな声。


 


けれど、それは確かに、

少年が初めて、自分の意志で発した”希望”だった。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


「じゃあ、一緒に行こう」


 


ユウトは、そっと手を差し出す。


 


少年は、迷いながらも、その手を握った。


 


 


カチャ――


 


扉が、完全に開いた。


 


一筋の光が、

閉ざされていた部屋に差し込んだ。


 


リカとタケルも、静かに見守っている。


 


 


そのとき――


 


路地の向こうで、

黒い影が、ゆっくりと動いた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


「……ん?もしかして...

みんな、気をつけて。」


 


リカが低く囁く。


 


量子視で捉えた、異様なオーラの流れ。


 


(誰かが、近づいている――)


 


まだ、誰も確信は持てない。

けれど、

確かに、別の”敵意”が、忍び寄ろうとしていた。

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