第7話『最初の任務』
古びたアパートの一角。
時間が止まったような昼下がりの空気。
リカ、タケル、そしてユウトは、
その場に立ち止まっていた。
「ここだよ」
リカが、帽子の下から静かな視線を向ける。
彼女の量子視が、室内のオーラの激しい揺れを捉えている。
「……いるんだな」
タケルが呟く。
リカは頷きながら、少し表情を曇らせた。
「でも……彼は怖がってる。
たぶん、無意識に力を暴走させるタイプだ」
◆ ◆ ◆
「まずはオレたちが前に出る。ユウトは後ろな」
タケルが軽く拳を鳴らす。
そして、ドアの前で軽くノックした。
コンコン――
中からは、何の反応もない。
「こんにちは。俺たちは、君に危害を加えに来たわけじゃない」
タケルが、できる限り優しい声で呼びかける。
しかし――
ドンッ!!
見えない力が、ドア越しに押し返してくる。
「っ!」
タケルが素早くユウトを守った。
「来ないで……来ないで!!」
中から、か細い、震える声が聞こえた。
◆ ◆ ◆
リカが低く呟く。
「彼……過去に、無意識で、
大切な人を傷つけたことがあるんだと思う」
ユウトは、ドアの前に立ち、
そっと目を閉じて言葉を探した。
「……俺も……怖かった」
リカとタケルが、息を呑む。
「……昔、
俺も、自分の力で……誰かを傷つけたかもしれない」
赤い空。
壊れていく街。
遠く聞こえる、悲鳴――
(――赤い雨)
ユウトは、手を伸ばした。
「……だから、君の気持ち、少しだけわかる気がする」
◆ ◆ ◆
そして、ゆっくりと、
バリアの張られたドアの隙間に、そっと手を伸ばした。
触れた瞬間――
少年のバリアが、
ユウトの”感情”を読み取った。
恐怖でも、拒絶でもない。
そこにあったのは、
静かで、揺るぎない――
「理解したい」という願いだった。
少年の瞳が、大きく揺れる。
◆ ◆ ◆
ガチャ――
重たそうなドアノブが、かすかに回る。
そして、
少年の顔が、涙に滲みながら覗いた。
茶色の髪。
小さな肩。
怯えた瞳の奥に、わずかな光が灯っていた。
ユウトは、そっと微笑んだ。
「……はじめまして」
少年は、震える手で、ドアを開けた。
◆ ◆ ◆
リカが小さく微笑む。
「……君は、怪物なんかじゃない」
ユウトの言葉が、確かに彼の心に届いた。
少年は、かすかに、震える声で答えた。
「……たすけて」




