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ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第1部
8/67

第7話『最初の任務』

古びたアパートの一角。

時間が止まったような昼下がりの空気。


 


リカ、タケル、そしてユウトは、

その場に立ち止まっていた。


 


「ここだよ」


 


リカが、帽子の下から静かな視線を向ける。

彼女の量子視が、室内のオーラの激しい揺れを捉えている。


 


「……いるんだな」


 


タケルが呟く。


 


リカは頷きながら、少し表情を曇らせた。


 


「でも……彼は怖がってる。

たぶん、無意識に力を暴走させるタイプだ」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


「まずはオレたちが前に出る。ユウトは後ろな」


 


タケルが軽く拳を鳴らす。


 


そして、ドアの前で軽くノックした。


 


コンコン――


 


中からは、何の反応もない。


 


「こんにちは。俺たちは、君に危害を加えに来たわけじゃない」


 


タケルが、できる限り優しい声で呼びかける。


 


しかし――


 


ドンッ!!


 


見えない力が、ドア越しに押し返してくる。


 


「っ!」


 


タケルが素早くユウトを守った。


 


「来ないで……来ないで!!」


 


中から、か細い、震える声が聞こえた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


リカが低く呟く。


 


「彼……過去に、無意識で、

大切な人を傷つけたことがあるんだと思う」


 


ユウトは、ドアの前に立ち、

そっと目を閉じて言葉を探した。


 


「……俺も……怖かった」


 


リカとタケルが、息を呑む。


 


「……昔、

俺も、自分の力で……誰かを傷つけたかもしれない」


 


赤い空。

壊れていく街。

遠く聞こえる、悲鳴――


 


(――赤い雨)


 


ユウトは、手を伸ばした。


 


「……だから、君の気持ち、少しだけわかる気がする」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


そして、ゆっくりと、

バリアの張られたドアの隙間に、そっと手を伸ばした。


 


触れた瞬間――


 


少年のバリアが、

ユウトの”感情”を読み取った。


 


恐怖でも、拒絶でもない。


そこにあったのは、

静かで、揺るぎない――

「理解したい」という願いだった。


 


少年の瞳が、大きく揺れる。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


ガチャ――


 


重たそうなドアノブが、かすかに回る。


 


そして、

少年の顔が、涙に滲みながら覗いた。


 


茶色の髪。

小さな肩。

怯えた瞳の奥に、わずかな光が灯っていた。


 


ユウトは、そっと微笑んだ。


 


「……はじめまして」


 


少年は、震える手で、ドアを開けた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


リカが小さく微笑む。


 


「……君は、怪物なんかじゃない」


 


ユウトの言葉が、確かに彼の心に届いた。


 


少年は、かすかに、震える声で答えた。


 


「……たすけて」

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