第51話『目覚め』
──薄暗い天井が、ゆっくりと視界に映る。
ユウトは、重いまぶたを開けた。
ぼんやりとした意識。
全身がだるく、痛みも感じる。
「……っ……」
小さく呻いた瞬間、
誰かがすぐ隣で顔を覗き込んだ。
「──お兄ちゃん!」
ミナだった。
目に涙を浮かべながら、必死にユウトの手を握っている。
ユウトは、微かに指先を動かして応えた。
「……ミナ……」
小さな声だったが、確かに届いた。
ミナは泣き笑いのような顔で何度も頷き、
その隣には、タケルたちが安堵の表情を浮かべていた。
「ったく……心配させやがって」
タケルがぼそりと呟く。
シュンも涙ぐみながら、笑った。
「よかったです……本当に……!」
リカは、普段通りの冷静な顔をしながらも、どこかほっとした色を滲ませている。
セイとハルも、それぞれ静かに佇んでいた。
──そして。
銀色の髪、軍服姿の女──真堂レイコが、無言で一歩前に出た。
「目が覚めたか」
低く、はっきりとした声。
ユウトはまだぼんやりしながらも、視線を向ける。
レイコは、簡潔に名乗った。
「真堂レイコ。シェルター本部から派遣された、外部指導員候補だ」
室内に緊張が走る。
リカが警戒するように尋ねる。
「……あなたが、ユウトを?」
レイコは頷いた。
「不律の異能者に襲われた現場に居合わせた。私が救った」
言葉少なく、事実だけを述べるその態度に、軍人気質が滲む。
タケルが腕を組みながら睨むように言う。
「……んで? あんた、これからどうする気だ」
レイコは微動だにせず、答えた。
「私は、しばらくこの支部に滞在する」
「──ただし」
わずかに間を置いて、続ける。
「基本的には如月ユウトの指導にあたる。他の者には必要最低限の助言はするが、鍛えるのはあくまでこいつだ」
その言葉に、室内の空気が少しざわついた。
シュンとハルが顔を見合わせる。
タケルも、軽く舌打ちする。
セイは静かに、レイコの様子を観察していた。
レイコはそんな反応を意にも介さず、淡々と言葉を続ける。
「他のメンバーについては──加賀見シンイチの判断に従う」
そのタイミングで、シンイチが医療室に入ってきた。
いつも通りの落ち着いた態度で、皆を見渡す。
「話は聞いていた。今後の方針は、すでに決まっている」
短く、はっきりと言う。
「シュンとタケルは、別支部に派遣する。身体能力強化系のトップクラスの使い手に鍛えてもらう予定だ」
「ハルも別支部へ。揚力制御系の異能をさらに伸ばしてこい」
「リカは第七支部に残り、私が直接指導する」
「セイは、引き続き自分の異能の応用研究を進めてもらう」
皆、それぞれの行き先に応じた覚悟を胸に刻んだ。
新たな課題、次なる成長。
それぞれが、これからの自分に向き合う準備を始める。
──そして。
ユウトは、まだ痛む身体を起こしきれないまま、
静かに、力強く思った。
(……やるしかない)
守るために。
負けないために。




