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ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第2部
54/67

第51話『目覚め』

──薄暗い天井が、ゆっくりと視界に映る。


ユウトは、重いまぶたを開けた。


ぼんやりとした意識。

全身がだるく、痛みも感じる。


「……っ……」


小さく呻いた瞬間、

誰かがすぐ隣で顔を覗き込んだ。


「──お兄ちゃん!」


ミナだった。


目に涙を浮かべながら、必死にユウトの手を握っている。


ユウトは、微かに指先を動かして応えた。


「……ミナ……」


小さな声だったが、確かに届いた。


ミナは泣き笑いのような顔で何度も頷き、

その隣には、タケルたちが安堵の表情を浮かべていた。


「ったく……心配させやがって」


タケルがぼそりと呟く。


シュンも涙ぐみながら、笑った。


「よかったです……本当に……!」


リカは、普段通りの冷静な顔をしながらも、どこかほっとした色を滲ませている。


セイとハルも、それぞれ静かに佇んでいた。


──そして。


銀色の髪、軍服姿の女──真堂レイコが、無言で一歩前に出た。


「目が覚めたか」


低く、はっきりとした声。


ユウトはまだぼんやりしながらも、視線を向ける。


レイコは、簡潔に名乗った。


「真堂レイコ。シェルター本部から派遣された、外部指導員候補だ」


室内に緊張が走る。


リカが警戒するように尋ねる。


「……あなたが、ユウトを?」


レイコは頷いた。


「不律の異能者に襲われた現場に居合わせた。私が救った」


言葉少なく、事実だけを述べるその態度に、軍人気質が滲む。


タケルが腕を組みながら睨むように言う。


「……んで? あんた、これからどうする気だ」


レイコは微動だにせず、答えた。


「私は、しばらくこの支部に滞在する」


「──ただし」


わずかに間を置いて、続ける。


「基本的には如月ユウトの指導にあたる。他の者には必要最低限の助言はするが、鍛えるのはあくまでこいつだ」


その言葉に、室内の空気が少しざわついた。


シュンとハルが顔を見合わせる。

タケルも、軽く舌打ちする。


セイは静かに、レイコの様子を観察していた。


レイコはそんな反応を意にも介さず、淡々と言葉を続ける。


「他のメンバーについては──加賀見シンイチの判断に従う」


そのタイミングで、シンイチが医療室に入ってきた。


いつも通りの落ち着いた態度で、皆を見渡す。


「話は聞いていた。今後の方針は、すでに決まっている」


短く、はっきりと言う。


「シュンとタケルは、別支部に派遣する。身体能力強化系のトップクラスの使い手に鍛えてもらう予定だ」


「ハルも別支部へ。揚力制御系の異能をさらに伸ばしてこい」


「リカは第七支部に残り、私が直接指導する」


「セイは、引き続き自分の異能の応用研究を進めてもらう」


皆、それぞれの行き先に応じた覚悟を胸に刻んだ。


新たな課題、次なる成長。


それぞれが、これからの自分に向き合う準備を始める。


──そして。


ユウトは、まだ痛む身体を起こしきれないまま、

静かに、力強く思った。


(……やるしかない)


守るために。

負けないために。

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