表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第2部
51/67

第48話『襲撃、不律の牙』

──午後。


春の陽射しに包まれ、街は穏やかな賑わいを見せていた。


ユウトとミナは、並んで歩いていた。


互いに言葉は少なかったが、その空気は心地よかった。


ミナがふと、横のクレープスタンドを指さす。


「ねえ、お兄ちゃん。あれ、食べたい!」


ユウトは短く頷いた。


「……いいよ。食べよう」


ミナは嬉しそうに微笑み、列に並んだ。


ミナは苺生クリーム、ユウトはチョコバナナ。

手にしたクレープをかじると、甘さが口に広がる。


「ん~、やっぱりおいしい!」


ミナが笑い、ユウトも無言でクレープを口に運んだ。


甘すぎる。

けれど、それが悪くはなかった。


ミナは歩きながら、景色をきょろきょろと見渡す。


「こうやってのんびりできるの、嬉しいな」


「……ああ」


短い返事。

だが、それだけでミナは十分だった。


──穏やかな、日常。


それが、何よりも大切なものに思えた。


◇ ◇ ◇


クレープを食べ終え、人気の少ない路地へ入る。


途端に、空気が変わった。


ミナが立ち止まる。


「……なんか、暗くない?」


ユウトも肌を刺すような違和感を感じ取っていた。


何かが、おかしい。


自然と、ミナを背後へと庇う。


◇ ◇ ◇


一方、街中。


無言で歩く真堂レイコ。


ポケットに手を突っ込みながら、

周囲の情報を、風に乗せて感じ取っていた。


(如月ユウト。登録異能は、衝撃波と身体強化。それと──断片発現の兆候)


静かに観察していた彼女の感覚に、何かが引っかかった。


(……気持ち悪い風だな。しかも、危険なタイプ)


レイコは顔を上げる。


放っておけば死人が出る──

そう判断し、迷わず足を向けた。


向かう先は、ユウトたちのいる方角だった。


◇ ◇ ◇


──路地裏。


黒い影が、地面から蠢く。


そして、そこから男が現れた。


黒コートをまとい、顔には狂気の笑み。


「よぉ。シェルターのやつだな?

動くなよォ……」


ミナが小さく息を呑んだ。


ユウトは即座に前へ出る。


男の手元から、黒い影が伸びた。


刃、鎖、槍。

影は自在に姿を変え、襲いかかる。


──不律。


無秩序を掲げる、異能犯罪者集団。


ユウトは、即座に、衝撃波を出した。


重心を落とし、力を込める。


──ズンッ。


微かな振動と共に、衝撃波が空気を叩いた。


「えっ?何?」


ミナは呆然と驚いた。


影の槍を叩き落とし、ミナへの攻撃を防ぐ。


だが、男は薄笑いを浮かべたままだった。


「へぇ……やる気、満々ってわけだ」


地面、壁、建物。

至るところから、無数の影が伸びる。


ユウトは衝撃波を連発し、防ぎ続ける。


ミナを守りながら──。


だが、防戦だけでは追いつかない。


影は次第に数を増し、

ユウトの動きをじわじわと封じていく。


(……一人なら、逃げられるかもしれないが)


ミナを、絶対に置いてはいけない。死んでも。


「ミナ、伏せろ」


ユウトが低く命じる。


ミナは素直に地面に伏せた。


ユウトはボロボロになりながら、影を払い続ける。


──それでも、限界は近い。


腕が痺れ、脚が震える。


視界が揺れる。


だが。


「……守る……!」


声にならない声を噛み締め、

ユウトは、最後の一歩を踏み込んだ。


その瞬間。


──ドンッ!!


胸の奥で爆ぜる感覚。


ユウトの体の前面に、分厚い衝撃波の壁が展開される。


迫る影の刃は、すべて防壁に弾かれ、砕け散った。


影使いの男が目を細める。


「──ほう……」


ユウトは震える膝で立ち続ける。


だが──


影使いもまた、さらに巨大な影を作り出していた。


「これで終わりだァ……!」


黒い津波のような影が、今にも押し寄せようとしていた。


ユウトは、

最後の力を振り絞り、ミナを背後に庇った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ