第39話『束の間の日常──疑いの種』
──夕暮れのシェルターを出て、
ユウトは自宅へと戻った。
体はまだ重い。
けれど、心はどこか軽かった。
守るべきもののために、
戦ったことを、後悔はしていない。
◆ ◆ ◆
玄関を開ける。
すぐにミナが顔を出した。
「おかえり、ユウト!」
明るく、元気な声。
それだけで、胸に温かいものが灯る。
けれど──
ミナの視線が、ふとユウトの顔に留まった。
頭に巻かれた、白い包帯。
「え……それ、どうしたの?」
ミナの声が、少しだけ不安を含んだ。
「……ちょっと転んだだけだ」
ユウトは、できるだけ軽く答えた。
何でもない。
大したことはない。
──そんな風に。
ミナは、じっとユウトを見つめた。
ほんの数秒。
それから、小さく「そっか」と頷いた。
それ以上は、何も聞かなかった。
◆ ◆ ◆
──けれど。
ミナの胸の中に、
小さな違和感が芽生えたのは、確かだった。
(ユウト……何か、隠してる?)
兄を信じたい。
でも、少しずつ積み重なっていく不安。
ミナは知らない。
この小さな違和感が、
やがて大きな渦を巻き起こすことになることを──
◆ ◆ ◆
「ごはん、すぐできるから!」
ミナはいつも通りに振る舞った。
笑顔で、キッチンへと戻っていく。
ユウトはその背中を静かに見つめた。
守りたい。
絶対に、守り抜きたい。
その想いを、
再び、強く胸に刻んだ。




