第38話『束の間の休息──それぞれの想い』
──静かな白い天井が見えた。
重い身体をゆっくりと持ち上げる。
痛みはあるが、意識ははっきりしていた。
ユウトは、自分がシェルター内の医療棟のベッドにいることに気づく。
◆ ◆ ◆
隣のベッドでは、
タケルがレーションの袋をかじりながら、片手を振っていた。
「よう、ユウト。目ぇ覚めたか?
2時間ぐらいで寝てたぞ」
声は明るいが、
その腕や顔には打撲の痕がくっきりと残っている。
「……ああ」
ユウトは低く、短く答えた。
◆ ◆ ◆
さらに視線を向ければ──
リカが壁際のベッドに腰掛け、
無言で小さな本を読んでいた。
腕には包帯が巻かれているが、
平然とページをめくるその姿に、
不思議と安心感を覚える。
◆ ◆ ◆
「おはようございます、ユウトさん!」
シュンが笑顔で声をかけてくる。
傷は小さな擦り傷程度、元気そうだった。
それがまた、救いだった。
◆ ◆ ◆
──ハルは、この部屋にはいなかった。
重傷を負った彼女は、
隣の重症者棟で安静にしている。
命に別状はないと聞いて、
ユウトは小さく胸を撫で下ろした。
「ハルさんも、大丈夫です。
しっかり休んでますよ」
シュンが気を利かせて付け加えた。
ユウトは、静かに頷いた。
◆ ◆ ◆
──そして。
医療班の案内を受け、
セイが静かに部屋へ入ってきた。
腕に軽い包帯を巻いているが、
姿勢は正しく、表情も落ち着いている。
「やあ。全員、無事で何よりだ」
低く、穏やかな声。
まるで生徒会長が教室を見回すような、
そんな整った佇まいだった。
その存在だけで、
部屋に落ち着いた空気が広がった。
◆ ◆ ◆
──外の光は、
淡い夕暮れ色に変わっていた。
静かに、
確かに、
彼らは帰ってきたのだ。
◆ ◆ ◆
ユウトは、
白い天井をぼんやりと見上げながら、
胸の奥に小さな灯りを感じた。
──守りたい。
この場所を。
この仲間たちを。
そんな想いが、確かに、
静かに、でも力強く根を張り始めていた。




