第37話『帰還──夕暮れのシェルター』
──ヘリが静かに着陸する。
空はオレンジ色に染まり、
西日が瓦礫を長く照らしていた。
長い、長い一日が、ようやく終わろうとしていた。
◆ ◆ ◆
「全員、降りろ!」
パイロットの声が響く。
機体が揺れるなか、
ユウトたちは次々と地面に降り立った。
迎えに来ていた医療班がすぐに駆け寄ってくる。
「タケルさん、リカさん、ユウトさん、シュンさん──こちらへ!」
医療班のスタッフが、手早く負傷者たちを振り分けていく。
ハルは特に慎重に扱われた。
顔をしかめつつも、
「だいじょーぶ、歩けるよ」と小さく笑っていたが、
それでも顔色は悪かった。
「早く連れてけ。そいつ、無理してんぞ」
タケルが医療班員に小声で言い、
ハルの肩をそっと押した。
ユウトも、
リカも、
シュンも、
それぞれ無言で医療班に従っていった。
──負傷はあったが、命に別状はない。
それだけでも、奇跡だった。
◆ ◆ ◆
その中で、
セイだけはツムギと共に、別行動を取った。
向かう先は、シェルターの中枢。
指揮官室。
◆ ◆ ◆
指揮官室のドアを開くと、
そこに待っていたのは──
加賀見シンイチ、シェルターの指揮官だった。
険しい顔。
だが、目だけは柔らかかった。
「──よく、無傷で連れてきたな」
シンイチが、短く、だが確かに称賛を送った。
「……状況が状況でしたから。
運が良かっただけです」
セイが淡々と答える。
背筋を伸ばし、
簡単に状況の概要だけを伝える。
紅眼と黒環の乱戦、
ターゲット保護、
敵の動向。
すべてを冷静に、簡潔に。
「──詳しくは、後で報告書にまとめます」
最後にそう言って、
セイは軽く頭を下げた。
「了解した。……ご苦労だったな」
シンイチの声は、ほんの少しだけ優しかった。
◆ ◆ ◆
セイがツムギをちらりと見る。
そして、無言で「大丈夫だ」というように、軽く頷いた。
指揮官室のドアを開けると、
すぐ外には待機していた医療班が立っていた。
「西堂セイさん、こちらへ」
セイは何も言わずに頷き、
そのまま医療班に連れられていった。
──残ったのは、ツムギとシンイチ。
◆ ◆ ◆
ツムギは不安そうに立ち尽くしていた。
そんな彼女に、
シンイチは少しだけ表情を和らげた。
「ツムギ──だったな」
「……はい」
ツムギが小さく頷く。
「安心しろ。
ここは、お前の居場所になる」
シンイチの声は、低く、温かかった。
「ここシェルターは、異能を持つ者たちを守り、育てるための場所だ。
強制はしない。だが、もし──お前が望むなら、力を貸してくれると嬉しい」
ツムギの目が、少しだけ見開かれる。
まだ恐怖も、不安も拭いきれない。
だが──
ほんのわずかに、
胸の奥で何かが灯るのを、ツムギは感じていた。
「それと、今回襲ってきた敵──」
シンイチは言葉を選びながら続けた。
紅眼と、黒環。
異能を持つ者たちを利用しようとする、危険な存在たち。
ツムギが狙われたのは、
その力を脅威と見なされたからだった。
「安心しろ。
ここでは、あいつらからお前を守る」
ツムギは、
ほんの少しだけ、ぎゅっと拳を握った。
恐怖に負けたくない。
ここにいる人たちを、信じてみたい。




