表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第1部
39/67

第37話『帰還──夕暮れのシェルター』

──ヘリが静かに着陸する。


 


空はオレンジ色に染まり、

西日が瓦礫を長く照らしていた。


 


長い、長い一日が、ようやく終わろうとしていた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


「全員、降りろ!」


 


パイロットの声が響く。


 


機体が揺れるなか、

ユウトたちは次々と地面に降り立った。


 


迎えに来ていた医療班がすぐに駆け寄ってくる。


 


 


「タケルさん、リカさん、ユウトさん、シュンさん──こちらへ!」


 


医療班のスタッフが、手早く負傷者たちを振り分けていく。


 


ハルは特に慎重に扱われた。


顔をしかめつつも、

「だいじょーぶ、歩けるよ」と小さく笑っていたが、

それでも顔色は悪かった。


 


 


「早く連れてけ。そいつ、無理してんぞ」


 


タケルが医療班員に小声で言い、

ハルの肩をそっと押した。


 


ユウトも、

リカも、

シュンも、

それぞれ無言で医療班に従っていった。


 


──負傷はあったが、命に別状はない。


それだけでも、奇跡だった。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


その中で、

セイだけはツムギと共に、別行動を取った。


 


向かう先は、シェルターの中枢。

指揮官室。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


指揮官室のドアを開くと、

そこに待っていたのは──


 


加賀見シンイチ、シェルターの指揮官だった。


 


険しい顔。


だが、目だけは柔らかかった。


 


 


「──よく、無傷で連れてきたな」


 


シンイチが、短く、だが確かに称賛を送った。


 


 


「……状況が状況でしたから。

 運が良かっただけです」


 


セイが淡々と答える。


 


背筋を伸ばし、

簡単に状況の概要だけを伝える。


 


紅眼と黒環の乱戦、

ターゲット保護、

敵の動向。


 


すべてを冷静に、簡潔に。


 


 


「──詳しくは、後で報告書にまとめます」


 


最後にそう言って、

セイは軽く頭を下げた。


 


 


「了解した。……ご苦労だったな」


 


シンイチの声は、ほんの少しだけ優しかった。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


セイがツムギをちらりと見る。


 


そして、無言で「大丈夫だ」というように、軽く頷いた。


 


指揮官室のドアを開けると、

すぐ外には待機していた医療班が立っていた。


 


 


「西堂セイさん、こちらへ」


 


セイは何も言わずに頷き、

そのまま医療班に連れられていった。


 


 


──残ったのは、ツムギとシンイチ。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


ツムギは不安そうに立ち尽くしていた。


 


そんな彼女に、

シンイチは少しだけ表情を和らげた。


 


 


「ツムギ──だったな」


 


「……はい」


 


ツムギが小さく頷く。


 


 


「安心しろ。

 ここは、お前の居場所になる」


 


シンイチの声は、低く、温かかった。


 


 


「ここシェルターは、異能を持つ者たちを守り、育てるための場所だ。

 強制はしない。だが、もし──お前が望むなら、力を貸してくれると嬉しい」


 


 


ツムギの目が、少しだけ見開かれる。


 


まだ恐怖も、不安も拭いきれない。


だが──


ほんのわずかに、

胸の奥で何かが灯るのを、ツムギは感じていた。


 


 


「それと、今回襲ってきた敵──」


 


シンイチは言葉を選びながら続けた。


 


紅眼こうがんと、黒環こっかん


異能を持つ者たちを利用しようとする、危険な存在たち。


ツムギが狙われたのは、

その力を脅威と見なされたからだった。


 


 


「安心しろ。

 ここでは、あいつらからお前を守る」


 


 


ツムギは、

ほんの少しだけ、ぎゅっと拳を握った。


 


恐怖に負けたくない。


ここにいる人たちを、信じてみたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ