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ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第1部
38/67

第36話『脱出──束の間の休息』

──崩壊した街並みを駆け抜ける。


 


空は青く、太陽は西に傾きかけていた。


午後二時過ぎ。


戦いは長く、激しかった。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


「見えた……!」


 


ユウトが指差す先、

中型輸送ヘリが羽を回していた。


 


サイドドアが開き、回収班が手を伸ばす。


 


 


「急げ!」


 


タケルが叫ぶ。


 


リカがツムギとハルを先に乗り込む。


後方ではシュンがバリアを展開し、

迫る敵の攻撃を防いでいた。


 


 


「ツムギ、しっかり!」


 


リカが手を伸ばし、

ツムギを力強く引き上げる。


続いてハルも、よじ登る。


 


タケルとセイもすぐに続き、機内へ。


 


 


──残ったのは、ユウト。


 


 


「ユウト!」


 


リカが叫ぶ。


 


ユウトは振り返り、

迫る敵を確認すると──


衝撃波を

敵の足元へ向かって放つ!


バシュッ──!


狙いは的中し、

敵がバランスを崩して転倒した。


 


ユウトはヘリへと向きを変え数メートルを必死に走る。


 


 


──その時。


 


「離陸開始!!」


 


パイロットの声が機内に響く。


 


ヘリはもう、これ以上は待てなかった。


 


 


「ユウト、掴め!!」


 


タケルが身を乗り出して、

ユウトの腕をがっちり掴む。


 


そのまま、ヘリは高度を上げ始めた!


 


ユウトはタケルに支えられながら、

必死に機体にしがみつく。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 ──ヘリは高度を上げ、地上の喧騒が遠ざかっていく。


 


空は午後の光に包まれ、

長い戦いの疲労だけが機内に満ちていた。


 


けれど。


確かに、生きて帰る道を、掴み取った。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


そんな静寂を、

タケルの腹の虫が破った。


 


ぐぅうう……。


 


「……なあ、腹減った」


 


タケルがぼそりと呟く。


 


機内に、ふっと笑いが広がった。


 


 


「やれやれ……」


 


セイが呆れたように肩をすくめ、

座席横のコンテナを開く。


 


レーション(簡易食料)を取り出して配り始める。


 


 


「食っとけ。倒れられたら困る」


 


「サンキュー、セイ!」


 


タケルがすぐさまレーションを受け取り、

勢いよくかじりつく。


 


他のメンバーもそれぞれ手に取った。


 


シュンがモグモグ食べながら、

ユウトをちらりと見た。


 


 


「ユウトさん、さっきの衝撃波……すごかったです」


 


 


「……そうか」


 


ユウトは小さく答えた。


まだ、自分でも掴みきれていない力。


でも、少しだけ、

誇らしい気持ちが胸に灯る。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


そんな中、

セイがふとツムギを見て、軽く頷いた。


 


 


「そういえば──自己紹介、ちゃんとしてなかったな」


 


 


ツムギが驚いたように顔を上げる。


 


セイは淡々と、しかし柔らかい声で話し始めた。


 


 


「まず、あそこにいるのがタケル。言わずと知れた脳筋」


 


「おい、褒め言葉として受け取っとくわ!」


 


タケルが親指を立てて笑う。


 


 


「こっちはリカ。クールだが、頼りになる」


 


「適当によろしく」


 


リカが軽く手を挙げた。


 


 


「無口だが真面目なのがユウト」


 


「……よろしく」


 


ユウトが静かに答える。


 


 


「明るいのがハル」


 


「えへへ、よろしくね!」


 


ハルが元気よく笑った。


 


 


「あと、シュン。小柄だが一生懸命な奴だ」


 


「蒼生シュンです!よろしくお願いします!」


 


シュンがぺこりと頭を下げる。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


セイは一拍置き、自分の胸を軽く叩いた。


 


 


「俺は西堂セイ。情報収集とまとめ役をしてる。よろしくな」


 


 


そして、

ツムギに向き直った。


 


 


「──君も、自己紹介しておくといい」


 


 


促されたツムギは、

少し緊張しながらも、しっかり顔を上げた。


 


 


「……ツムギです。

 植物を育てる異能、持ってます……」


 


 


その小さな声に、

タケルが笑って親指を立てた。


 


 


「いいじゃねえか!頼りにしてるぜ、ツムギ!」


 


 


ハルもにこっと笑い、

シュンもこくこくと頷いた。


 


リカは短く頷き、

ユウトも静かに、それでもはっきりとツムギを見つめた。


 


──仲間。


そんな空気が、

確かに、そこに芽生えていた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


ヘリは、

夕暮れのシェルターへ向かって飛ぶ。


 


守るべきもののために。


戦うべき未来のために。



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