第36話『脱出──束の間の休息』
──崩壊した街並みを駆け抜ける。
空は青く、太陽は西に傾きかけていた。
午後二時過ぎ。
戦いは長く、激しかった。
◆ ◆ ◆
「見えた……!」
ユウトが指差す先、
中型輸送ヘリが羽を回していた。
サイドドアが開き、回収班が手を伸ばす。
「急げ!」
タケルが叫ぶ。
リカがツムギとハルを先に乗り込む。
後方ではシュンがバリアを展開し、
迫る敵の攻撃を防いでいた。
「ツムギ、しっかり!」
リカが手を伸ばし、
ツムギを力強く引き上げる。
続いてハルも、よじ登る。
タケルとセイもすぐに続き、機内へ。
──残ったのは、ユウト。
「ユウト!」
リカが叫ぶ。
ユウトは振り返り、
迫る敵を確認すると──
衝撃波を
敵の足元へ向かって放つ!
バシュッ──!
狙いは的中し、
敵がバランスを崩して転倒した。
ユウトはヘリへと向きを変え数メートルを必死に走る。
──その時。
「離陸開始!!」
パイロットの声が機内に響く。
ヘリはもう、これ以上は待てなかった。
「ユウト、掴め!!」
タケルが身を乗り出して、
ユウトの腕をがっちり掴む。
そのまま、ヘリは高度を上げ始めた!
ユウトはタケルに支えられながら、
必死に機体にしがみつく。
◆ ◆ ◆
──ヘリは高度を上げ、地上の喧騒が遠ざかっていく。
空は午後の光に包まれ、
長い戦いの疲労だけが機内に満ちていた。
けれど。
確かに、生きて帰る道を、掴み取った。
◆ ◆ ◆
そんな静寂を、
タケルの腹の虫が破った。
ぐぅうう……。
「……なあ、腹減った」
タケルがぼそりと呟く。
機内に、ふっと笑いが広がった。
「やれやれ……」
セイが呆れたように肩をすくめ、
座席横のコンテナを開く。
レーション(簡易食料)を取り出して配り始める。
「食っとけ。倒れられたら困る」
「サンキュー、セイ!」
タケルがすぐさまレーションを受け取り、
勢いよくかじりつく。
他のメンバーもそれぞれ手に取った。
シュンがモグモグ食べながら、
ユウトをちらりと見た。
「ユウトさん、さっきの衝撃波……すごかったです」
「……そうか」
ユウトは小さく答えた。
まだ、自分でも掴みきれていない力。
でも、少しだけ、
誇らしい気持ちが胸に灯る。
◆ ◆ ◆
そんな中、
セイがふとツムギを見て、軽く頷いた。
「そういえば──自己紹介、ちゃんとしてなかったな」
ツムギが驚いたように顔を上げる。
セイは淡々と、しかし柔らかい声で話し始めた。
「まず、あそこにいるのがタケル。言わずと知れた脳筋」
「おい、褒め言葉として受け取っとくわ!」
タケルが親指を立てて笑う。
「こっちはリカ。クールだが、頼りになる」
「適当によろしく」
リカが軽く手を挙げた。
「無口だが真面目なのがユウト」
「……よろしく」
ユウトが静かに答える。
「明るいのがハル」
「えへへ、よろしくね!」
ハルが元気よく笑った。
「あと、シュン。小柄だが一生懸命な奴だ」
「蒼生シュンです!よろしくお願いします!」
シュンがぺこりと頭を下げる。
◆ ◆ ◆
セイは一拍置き、自分の胸を軽く叩いた。
「俺は西堂セイ。情報収集とまとめ役をしてる。よろしくな」
そして、
ツムギに向き直った。
「──君も、自己紹介しておくといい」
促されたツムギは、
少し緊張しながらも、しっかり顔を上げた。
「……ツムギです。
植物を育てる異能、持ってます……」
その小さな声に、
タケルが笑って親指を立てた。
「いいじゃねえか!頼りにしてるぜ、ツムギ!」
ハルもにこっと笑い、
シュンもこくこくと頷いた。
リカは短く頷き、
ユウトも静かに、それでもはっきりとツムギを見つめた。
──仲間。
そんな空気が、
確かに、そこに芽生えていた。
◆ ◆ ◆
ヘリは、
夕暮れのシェルターへ向かって飛ぶ。
守るべきもののために。
戦うべき未来のために。




