第35話『脱出戦』
──崩壊した街を、必死に駆け抜ける。
ユウトたちは、小競り合いを繰り返しながら
迎えの到着を待っていた。
◆ ◆ ◆
「後ろから来てる、数人!」
タケルが振り返りざまに叫ぶ。
紅眼と黒環の戦闘員たちが、
瓦礫の間を抜けて追いすがってくる。
人数は多くない──
だが、異能持ちだ。
油断すればすぐに追いつかれる。
「リカ、まだか!?」
タケルが叫ぶ。
リカは通信機を一度見て、
小さく頷いた。
「もうすぐ! ヘリの場所までもう少し!」
加賀見シンイチ指揮官の判断で、
中型輸送ヘリは出発の、準備はできていた。
あとは、それに乗り込むまで耐えるだけだ。
◆ ◆ ◆
「ユウト、右から来るよ!」
リカの量子視が敵の動きを読み、
的確に指示を飛ばす。
「──わかった!」
ユウトが衝撃波で、
突っ込んでくる敵を迎撃する。
シュンは後衛でバリアを広げ、
ツムギとハルを守る。
セイは冷静に周囲を見極めながら、
最後の詠唱を温存していた。
(……あと1回。使いどころを間違えたら、終わる)
セイの額には、じわりと汗が滲んでいた。
◆ ◆ ◆
敵の異能が地面を抉り、
炎が走る。
紅眼の戦闘員が、
火炎弾を撃ちながら接近してきた。
「クソッ……!」
ユウトが顔をしかめる。
普通に走って逃げるだけじゃ追いつかれる。
次の瞬間──
「今よ、セイ!」
リカが叫んだ。
セイは迷わず、最後の詠唱に入る。
「──土よ、重く沈め!」
詠唱の声とともに、
炎使いの敵の足元にあった大中小の瓦礫が
重力に引かれるように一気に沈み込む。
足を取られた敵がバランスを崩す。
「タケル、そこの建物崩して!」
その隙を突いて、リカの指示通り
タケルが周りの建物を一気に溶かし、崩す。
追ってきた敵は下敷きになり、瓦礫は足止めになった。
◆ ◆ ◆
「──ヘリが見えてきたよ!」
リカが短く叫んだ。
任務場所より離れた所に
轟音を響かせながら中型の輸送ヘリがいる。
機体は灰色に塗装され、
機動力を重視したコンパクトなフォルム。
サイドドアが開き、回収班が手を伸ばす。
「早く……乗り込んで!」
リカが叫び、
ユウトたちを促した。
──運命を繋ぐために。
必死に戦った仲間たちは、
今、最後の脱出へと走り出した。




