第25話『戦場分断──ユウト、背負う覚悟』
──戦場は、さらに混沌としていた。
黒環と紅眼の激しいぶつかり合い。
その中で、リカ、ユウト、ハル、ターゲットは必死に戦線を維持していた。
リカは前線で黒環の工作員たちをいなしながら、
一瞬だけユウトたちの方へ視線を向けた。
(……ユウト、ハル、ターゲット──無事でいて)
祈るように、
でもすぐに意識を戦場へ戻す。
──今は、目の前を守るしかない。
◆ ◆ ◆
その瞬間。
紅眼の戦闘員が起こした爆発が、
周囲の瓦礫を大きく揺るがした。
ゴオォォォン──!!!
地面が割れ、
瓦礫が崩れ、
砂煙が戦場を覆い尽くす。
「──リカ!」
ユウトが叫んだ。
だが、
視界は遮られ、
リカの姿は見えなくなっていた。
──分断された。
完全に。
◆ ◆ ◆
ユウトはすぐに状況を確認する。
後ろには、倒れたままのハル。
震えるターゲットの女性。
「……ハルは……」
脈を確認する。
──生きている。
だが、まだ意識は戻らない。
ユウトは奥歯を強く噛み締めた。
(動かなきゃ……!)
ターゲットの女性に向き直る。
「ここじゃ危ない。……一緒に、逃げるぞ」
◆ ◆ ◆
ユウトはハルを背負い、
ターゲットと共に撤退を開始した。
ハルの体温、
ターゲットの震える呼吸。
その全てを、
背中と隣から感じながら走る。
「君の能力、教えて」
ユウトが息を切らしながら訊いた。
ターゲットの女性は戸惑いながら答える。
「わ、わたしは……植物を育てる力です!
土や季節に関係なく、どんな植物でも育てられる……だけ、です!」
戦えない──
だからこそ、狙われる。
だからこそ──守る。
◆ ◆ ◆
その時。
背中のハルが、微かにうめいた。
「……ぅ……ん……」
ユウトが驚いて背を向ける。
「ハル! 目、覚ましたか!」
ハルは顔をしかめながら、
かすかに頷いた。
「まだ……動けないけど……」
「大丈夫。少しでも動ければいい」
ユウトはハルをゆっくり地面に下ろし、
ターゲットに向き直った。
「ハルと一緒に逃げろ」
「で、でも……!」
「頼む。
……絶対に、逃げ切ってくれ」
◆ ◆ ◆
その時だった。
──ゴオォォォォン!!!
背後で巨大な爆音が響く。
振り向くと、
瓦礫を吹き飛ばして、
黒いフードと黒マスクの男が立っていた。
──獅堂カイ。
カイは、
まっすぐユウトを見据え、歩み寄ってくる。
「──俺が止める」
ユウトは小さく呟いた。
拳を、握る。
背後には、
傷だらけのハルと、怯えたターゲット。
守るべきものは、ここにある。
◆ ◆ ◆
「ハル、ターゲットさん。
──振り返らないで、逃げて」
ハルは悔しそうに唇を噛み締め、
それでも頷いた。
「……絶対に、戻るから」
ターゲットの女性も、必死に頷く。
二人が走り出すのを確認して、
ユウトは、
カイの方をまっすぐ見据えた。




