第18話『作戦会議と、帰る場所』
──シェルター第七支部、作戦ブリーフィングルーム。
夕方、窓の外は淡いオレンジに染まっていた。
壁に映し出された地図とデータ。
長テーブルを囲んで、
ユウト、リカ、ハル、タケル、シュン、セイの六人が並んでいた。
その前に立つのは、シェルター第七支部指揮官──加賀見シンイチ。
無骨な男が、静かに口を開く。
◆ ◆ ◆
「──対象は、郊外エリアに潜伏する未登録異能者。
紅眼も同時に動いている。
今回は、保護最優先だ」
シンイチはスクリーンを操作し、
ターゲット推定エリアを表示する。
森と廃墟が入り混じった、複雑な地形。
「第一チーム──ユウト、リカ、ハル。
前線捜索と初期確保担当。
第二チーム──タケル、シュン、セイ。
後方支援と迎撃対応」
「質問あるか」
シンイチが一度だけ視線を巡らせる。
◆ ◆ ◆
「リカたち第一チームは、どう動くんだ?」
タケルが腕を組みながら尋ねる。
リカがホワイトボードを手に立ち上がる。
「私が先行索敵する。
オーラを視て、異能者かどうか判別する」
「ハルは?」
「索敵補助。空間把握と素早い支援。
ユウトは二人を繋ぐ役。
敵に遭遇したら即撤退を最優先」
「おっけー!」
ハルが元気よく手を挙げる。
ユウトも小さく頷いた。
◆ ◆ ◆
「で、オレら第二チームは?」
タケルがセイに目を向ける。
「基本、後方支援だ」
セイがタブレットを操作しながら答える。
「シュンのバリアで防御を固めて、
タケルくんが前線で食い止める。
僕は指揮と、必要なら……詠唱も使う」
タケルが軽く笑う。
「まあ、知らねーやつに教えとくと──
セイの詠唱ってのは、
“言葉”で空間や物質を書き換える異能だ」
「……すご……」
シュンが小声で呟き、
ユウトもわずかに目を見開いた。
セイは静かに微笑む。
「即座に発動はできないけどね。
詠唱には少し時間がかかる。
だから慎重に使う」
「でもマジで頼りになるぜ、コイツは!」
タケルが豪快に笑い、
シュンも少しだけ緊張をほぐしたように微笑んだ。
◆ ◆ ◆
シンイチが最後に総括する。
「──何より、仲間を見失うな。
一人になった瞬間、命はない」
静かな声が、
六人の胸に重く響いた。
◆ ◆ ◆
作戦会議、終了。
外は、もうすっかり夕暮れの色に染まっていた。
「今夜は休息だ。
出撃は明朝、夜明けと同時だ」
シンイチの言葉を受け、
六人は静かに立ち上がった。
◆ ◆ ◆
──帰り道。
ユウトは、アパートへ向かって歩いていた。
涼しい夜風が、頬をなでる。
自宅の扉を開けると──
「おかえり、お兄ちゃん!」
パジャマ姿のミナが、
ソファの上から明るく手を振った。
◆ ◆ ◆
「……ただいま」
ユウトは短く返し、
靴を脱ぐ。
テーブルには、
ミナが用意した、温かい夕飯。
「えへへ、今日も頑張ったよ!」
ミナは満面の笑みで胸を張った。
それを見たユウトは、
ふっと微笑んだ。
(──守りたい)
胸に、小さな、でも確かな火が灯った。
◆ ◆ ◆
食事を終え、
ミナはすぐに眠たそうにあくびをする。
「おやすみ、お兄ちゃん」
ふらふらとベッドへ向かうミナを、
ユウトは静かに見送った。
──明日、また戦いが始まる。
それでも。
この日常だけは、絶対に守る。
ユウトは、
静かに目を閉じた。




