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ユウキ・ノ・カケラ  作者: ハキ
第1部
11/67

第10話『心の火種』

金属の破片が宙を飛び、

地面が震える。


 


狭い路地裏で、二つの異能が交錯していた。


 


前方――

ゴーグルの男が、鋼鉄化した体でタケルに向かって突進する。


 


後方――

フードの男が、異様に伸びる腕をしならせ、

遠距離から鋭く狙いをつける。


 


紅眼の二人が、完璧な連携で畳みかけてきた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


「次、右から!」


 


リカが即座に叫ぶ。


 


量子視による未来予測。

彼女は、ほんの数秒先をオーラの流れで読み取っていた。


 


「了解ッ!!」


 


タケルが即座に応じる。


 


足元のアスファルトを拳で砕き、

飛び散った石片を熱で赤熱化。


 


ジュゥゥ――ッ!!


 


真っ赤に焼けた破片を、拳にまとわせ――


 


「もらったァ!!」


 


ゴーグルの男に向けて一気に叩きつけた!


 


ズガンッ!!


 


熱と衝撃が一体となった打撃。

ゴーグル男が一歩、二歩と後退する。


 


「オーラが歪んだ。今、隙ができた!」


 


リカがさらに指示を飛ばし、

タケルが即座に反応する。


 


――完璧な信頼。

言葉よりも速く、互いの動きが繋がっている。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


ユウトは、動けなかった。


 


目の前で繰り広げられる異能の応酬。

タケルとリカの、鮮やかな連携。

敵の、容赦ない攻撃。


 


そのすべてに、

ただ立ち尽くすことしかできなかった。


 


後ろには、少年が小さく身を縮めて、

自己防衛本能のようにバリアを張って震えている。


 


「……ッ」


 


拳を握りしめる。

悔しい。

情けない。


 


(俺は……何もできないのか)


 


心の奥が、軋むように痛んだ。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


そのとき――

少年が、震える声で呟いた。


 


「……どうして……あの人たち、

……信じられるんだろう……」


 


ユウトは、振り返らなかった。


 


ただ、前を見たまま答えた。


 


「信じてるんじゃない。

信じ合ってるんだ」


 


リカはタケルを信じ、

タケルはリカを信じて、

互いに命を預け合って戦っている。


 


「だから、怖くても……前に進める」


 


少年は、ユウトの言葉を黙って聞いていた。

震える手で自分の胸を押さえた。


 


小さな、

本当に小さな火種が、

心の奥でくすぶり始めていた。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


バチッ――!!


 


タケルが、また金属の看板を拳で赤熱させ、

即席の火矢のように蹴り飛ばす。


 


リカが、腕を伸ばしてくるフードの男に向かい、

寸分違わぬ射撃で軌道をずらす。


 


完璧なコンビネーション。


 


敵が苛立ったように動きが乱れ始める。


 


 


◆ ◆ ◆


 


 


少年は、そっとバリアの壁に手を当てた。


 


(こんなオレでも……)


 


オレを怖がらず、

オレを拒絶せず、

手を伸ばしてくれた人たちがいる。


 


(オレも――)

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