旧型の廉価版の中古で出来が悪いけど、萌えるこしょう! ~このぐらい高性能でも低品質の部類とされるという理想郷のような世界に入り込みたいと思うのは、あなたの自由です~
繋ぎで適当に書いていた作品です。
「お帰りなさいませ。ご主人様」
あなたの部屋には、女子型機械人形がいる。
彼女はあなたの専属メイドだ。
普段はロングのメイド服を着ているが、今は違う。半袖のブラウスと黒いミニスカートを身に着けている。襟元の太いリボンは紺色だった。
長い黒髪は普段と同様、後ろで一本の三つ編みにしていた。
「私はご主人様を、より良き世界にご案内することが出来ますよ」
型落ちの彼女の声は少し機械音っぽいものの、見た目は夏服を着た女子高生とほとんど変わらない。
それでも、成型色の肌や若干の傷は生身の少女とは違って見えるし、表情も硬い。
両足の肌は、膝下の黒い靴下で隠している。
劣化した赤色の大きな瞳は、あなたを確実に捉えているようだ。
「常に私は、ご主人様のご命令にお従いいたします。素敵なひと時を過ごしたいですって? はい、分かりました」
あなたは何も指示していないのに、彼女は床の上で正座した。
足の脛をつけたまま、膝から上を角度六十度ぐらいで起こす。
「のけ反ったこちらの体勢の時点で、すでにご主人様には私の下着が見えています」
彼女は自らの状況を説明した。
ミニスカートから少しはみ出ている白い下着。それはショートパンツほどの丈のドロワーズだった。
裾にはレースとフリル、細長いリボンがついている。どれもドロワーズ本体と同じ白色で、汚れは一切なかった。
彼女は膝立ちの状態を維持したまま、スカートを両手で優しく、たくし上げる。
「ご主人様に、私の下着を存分にお見せしています」
見晴らしが良ぐらい、あなたの前でドロワーズがさらに広く晒された。
白いドロワーズは、黒いミニスカートとの対比で非常に際立っている。なお、正面の上部にあるのも、白いリボンだった。
彼女がいつもメイド服の下に穿いてるいものは、丈がもっと長い。今、彼女の見せているドロワーズは、別に用意したものだろうか。
「私の下着は中古の私本体と違い、新品同様です」
客観的に彼女は言う。
ドロワーズはショーツ以上に肌を隠す。際どさは感じられないものの、彼女の繊細な指使いが美しく、見せる様子は素晴らしい。
こんな姿を自分から披露してくれる彼女に、あなたはすごく感謝する。
「ご満足を頂けたのでしたら、どうぞ私にご遠慮なく抱きついて下さい。抱きつく際の力は、私に対する信頼の強さだと私は理解します」
たくし上げをしたままの彼女に対し、あなたはしゃがんでから彼女に両手で抱きついた。
機械人形の彼女の体は硬く、廉価版だから凹凸のある胸部も柔らかくはない。それでもあなたは、なるべく強く彼女を抱く。背中に垂れている彼女の三つ編みの感触は、そこそこ人間に近いかもしれない。
「あっ……」
彼女は小さく声を出した。
あなたの力が強過ぎたのか、彼女の肩から右腕が抜け落ちた。鈍い音を出して床に転がった。
「ふふふふ。安物は、困りますねぇ……。ご主人様、私の腕を拾って、一直線に伸ばして下さい」
あなたは、“く”の字に曲げられていた腕を持ち上げる。重量感のある腕を、彼女の言う通り一直線に伸ばした。その際、鳴ってはいけないような、修理の必要な音がしたが、気にしないでおいた。
膝立ち状態のままの彼女は、片手だけでミニスカートのたくし上げをおこなった。白いドロワーズを再び晒す。
「私の下着に、その手の先を押しつけて下さい」
どうしてそんなことをしないといけないのかと、あなたは聞いてみる。
「腕の再起動の手順に必要となる可能性があります。マニュアルに従って下さい」
あなたは外れた彼女の右腕を見る。機械だと分かる接続部はあまり見たくなかったので、先端のほうに目を移す。
五本指は、まだスカートをつまむ形をしていた。その手の形はそのままに、あなたは両手で反対側を持ち、彼女の下着へと向ける。
しかし、本当に押しつけて良いものか抵抗があり、あなたは躊躇してしまう。
あなたが腕を構えたままでいたら、彼女は膝をつけたまま前進した。ドロワーズに右手の先端を擦りつけた。
「きゃあっ、きゃあっ、きゃあああああああっ!」
想像以上に彼女は大口を開けて喚く。しかも無表情で。
あなたは怖くなり、右腕を落としてしまった。
「何度も落とさないで下さい。壊れてしまいます」
もうすでに思考が壊れているんじゃないかとは、あなたも口にしなかった。
彼女はミニスカートから左手を放していた。ドロワーズの見える部分は、ミニスカートの裾からチラ見が出来るぐらいに戻った。
「ごめんなさい、ご主人様。腕の再起動に、下着への押しつけ行為は98パーセント以上不要でした」
あなたも分かっていた。
「私はご主人様をだましてご主人様に快感を与えるという、高度なプログラムに従っただけでした。よって、私が壊れていないのは明らかです。どうか私を廃棄しないで下さい」
あなたは捨てるわけがないと、きっぱり否定した。
「廃棄の際は、各自治体の区分に従って下さい。処分に関する手続きと手数料はご案内の専用ホームページをご覧下さい」
彼女は何故か処分方法を語った。
ついにあなたは、故障しているのかと直に聞いた。
あなたと彼女との間に、静寂が生まれた。
不意に、彼女は顔を時計回りに動かし始めた。三つ編みも彼女の後ろで一緒に揺れ動く。
「ゆずこしょうをしています、ゆずこしょうをしています、ゆずこしょうをしています、ゆずこしょうをしています……」
一定の速度でずっと繰り返された。無表情で不気味だった。
途中で回転が唐突に止まり、時計逆回りで通常の正面位置に戻った。今の動作も怖かった。
「……ご主人様。判明しました。故障のチェックをくまなくおこないましたが、私の故障は見つかりませんでした。性情です」
あなたは彼女の故障を疑ったが、残念ながら、修理するための出費を出せるほどの余裕はない。
完全に壊れていないことをあなたが祈っていると、彼女は左手で自分の右腕をつかんでいた。
右肩にくっつけるとかと思いきや、献上するかのように、あなたへと右腕の先端を向けてくる。
「ご主人様のお手を煩わせてしまったお詫びに、人間様のお腕を模した孫の手を、ご主人様にお譲りいたしましょう」
その不要な申し出を、あなたは拒否をする。
「分かりました。ですが、とても便利ですよ?」
機械の彼女はぎこちない笑顔を初めて見せた。
「このようなことも出来ます」
外れた腕をミニスカートの中に入れて持ち上げる。
またドロワーズの広範囲があなたへと晒された。
あなたはそんなことをしていないですぐに右腕を元の場所につけろと命令したが、これまでのたくし上げとは違うめちゃくちゃな見せかたに、興奮はした。
「基礎知識をお教えしましょう。右腕は右肩に取りつけることが出来ます」
彼女は右腕をはめた。
かと思ったら、また床に落ちた。
「何度も落とさないで下さい。壊れてしまいます」
自分でやったんじゃないかと、あなたは反論した。
「……ご主人様は私に逆らうのですか?」
全く逆の立場の物言いをした彼女は、急に立ち上がった。
あなたを見下ろしながら、左手で厳しく指差して来る。眉毛を動かして怒りを表現する機能はまだ失われていなかった。
「私を故障させるのでしたら、お帰り下さいませ、ご主人様!」
どこに帰れと?
あなたが反射するかのように応じると、メイドは無表情に戻り、残った左腕で左側だけミニスカートをつまんで少し持ち上げた。
「今の常識あふれるセリフに、別段の意味はございません。私が両足を一定間隔に開いて前で立つことにより、座ったままのご主人様に良き眺めを与えることが出来るのです」
多分故障はしていないのだろうと、ドロワーズを見上げながらあなたは思った。
(終わり)
何度もドロワーズをしつこく見せる内容でした。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。