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伝説的な腕前

作者: 雉白書屋

 かつて列車強盗を主戦場に、あらゆる悪事で大金を稼いだ大悪党、ザギール。果ては町を丸ごとその手に収め、支配者として振る舞っていた。

 しかし、それに異を唱えた流れ者のガンマンが現れた。彼はザギールに決闘を申し入れ、ザギールは見せしめにせんとそれを受けた。無論、毒を盛る、決闘前夜に手下を差し向け怪我を負わせようとするなど小細工は欠かさなかった。

 しかし、彼はそれを難なく押しのけ、決闘の時を迎えた。

 距離を開け、向かい合う二人。見守る町人たち。風が砂埃を巻き上げ、静寂が広がる。しかし睨み合いはそう長くは続かなかった。風が止んだ瞬間、先に動いたのはザギール。ホルスターから銃を引き抜くと同時に、引き金に指をかけ、そして――

 

 町に一発の銃声が轟いた。

 

 そう、たった一発だけ。倒れたのはどちらか。それを教えてくれたのは町人たちの歓喜の声だった。

 ガンマンの手の銃から白煙が昇る。目にもとまらぬ早業であった。町民たちは彼に駆け寄り、抱きかかえた。凄まじい熱気。夜を越え、何日もお祭り騒ぎが続いた。

 圧政から解放された町民たちは彼を存分に褒め称えた。「いやぁ、すごい腕だ」「あとから抜いたはずなのになぁ」「いやいや、彼の方が早かったよ。おれには見えてたね」「とにかく先に撃ったのは彼だ」「大した男だ」「実に見事だった」そして、「何かコツは?」と聞かれると彼はご機嫌に答えた。

 彼は町の保安官になった。やがて町長に。そして、その名と武勇伝はいつまでも語り継がれたのである。

 そう、いつまでも…………。




「あ、あ、あ、あ、だ、大統領、な、なぜ、か、核ミサイルの発射命令を……」


「いやー……なんか、直感が働いて……」


 と、事の重大さはわかっているはずなのだが、何故か誇らしげに彼の子孫は部下に対し、そう答えたのだった。

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