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いい話のように終わったが、政治的にも今回の交渉はなにもかも上手くいった。楓への大きな貸しを作ることができたのだ。
実のところ、うちの駄菓子屋事業はそう長くは続かないだろうと思っていた。パイプがなかったため、卸からではなくド●キのような小売で仕入れていたからである。それを老舗駄菓子屋であるスプーンが、長年の関係性を持って担ってくれる。
俺は張りぼての駄菓子屋事業と引き換えに、正門側の“支店”を手に入れたのだ。他所者が地域に根づいた老舗を手に入れた意味は大きい。
さらに、楓は商店街副会長と言っていたか。まだまだ面白いことができそうだ。がはははは(悪の大王のような高笑い)。
「なんとか一件落着だニャ」
チャッピー(メイドの姿)が安堵の声を漏らす。誤発注の一件は、彼女なりに責任も感じていたのだろう。今夜は叶も呼んで、一緒に夕食を囲んでいた。
「でも助かったよ。あの時、『縋野グループの一事業だ』なんて大見え切ってくれて。あれがなかったら危なかった」
「だって本当のことだもの」
「え」
「あなたたち開業する時に書類をいくつか書いたでしょう。あれ、うちの入社書類だから。あなたたち、とっくに縋野グループの社員なのよ」
(な、なんだとーー)
いつのまにか脱ニートし、いつのまにか立派な企業戦士となっていた。大学生の俺があれだけ苦労した就活とはなんだったんだ。
今回の騒動の中で、俺は三つの大きな収穫を得た。
一つ目は冒頭のとおり、老舗駄菓子屋スプーンへの出資に成功したこと。今後の駄菓子屋事業の発展と地域戦略には欠かせない拠点となる。
二つ目はきな粉棒の処理。1000本の発注をどうしようかと思っていたが、決戦に乗じて楓に半分買い取ってもらうことができたし、便乗してそれなりに話題も作れた。
そして三つ目は、玩具メーカーとの協力体制だ。成果次第で、と仄めかしていた次の展開は、共同開発である。
駄菓子屋ぷぷ(もう駄菓子屋じゃなくなるから名前も変えないと)と玩具メーカー『ユニー』のコラボ玩具を作ろうという企画。
ぷぷから5%の出資と開発協力をすることで、利益の5%を戻してもらう。もし玩具が10億円売り上がれば、5000万円である。
だからスプーンに駄菓子屋事業を譲っても精神的余裕があったのだ。
ただ、一つ大きな問題がある。この5%の出資金はどこから出すか。もし開発費に3億円かかるとすれば、どこかから1500万円を捻出しなければならない。そんな金あったらとっくに……。
叶がさらりと言う。
「1500万くらい作ろうと思えば作れるわよ」
叶様、いやジーザス、いやマリア様がのたまう。
やはり貴女は女神であったか。どんなウルトラCをご準備くださっているのでしょうか。
女神様が続けて言う。
「このアパートと土地を抵当に入れればいいのよ」
女神様のあまりにも現実的で、自傷的な提案に、俺は愛想笑いしかできなかった。
【第二幕:駄菓子屋編】完




