町内駄菓子屋決戦の行方
決戦発表の日がやってきた。国立楓は、最終日の20時に店にやってきた。
楓は駄菓子屋スペースをぐるりと見回す。場に緊張感が漂う。
「どうやら頑張って売ってきたみたいね」
空になったきな粉棒のケースには、『もっちりやわらか あま〜いきな粉棒』の商品ポップ。片桐さんの店のメニューを真似て、引きのある商品名を考えてみたのだ。
「残念だけど、結論から言うわ。私はこの一ヶ月で売ったきな粉棒の数は500よ。全部売ったわ。だからあなたたちの結果を聞くまでもなく、店を閉めてもらうわね」
「どうしてニャ。私たちも頑張って売ったのニャ。結果をこれから発表するニャ」
「バカね。まだわからないの。私はあなたたちが”勝てなければ”と言ったのよ。つまり、引き分けでもあなたたちは店を閉めなければいけないのよ」
「引き分けじゃなければいいんだろ」
ついに俺は口を開く。いきなり小学生が反論してきたことで、楓は呆気にとられている。
俺たちは今回3つのことをした。
1つは、きな粉棒の商品名を変えたこと。これは案外反応が良くて、売上は20%くらい伸びた。
2つ目は配置。商品棚の一番目に止まるスペースとレジ横の2箇所に配置した。存在の刷り込みとついで買いの両方にアプローチしたことで、別プロジェクトで客足が伸びたことも相まって大きく売上を伸ばした。
そして3つ目が親だ。子どもたちが玩具スペースで遊ぶのに夢中になった結果、帰りが遅くなった。これを心配し母親達が迎えにくるようになったのだが、彼女らには待っている間、別室で熱いお茶を無料で出した。そこにはきな粉棒を皿に盛り、20円と書いた箱を隣に置いておいた。すると、母親達の会話スペースが生まれ、きな粉棒もどんどん消費されていったというわけだ。
「他にも来海の動画の視聴者キャンペーンのために買い取ってもらったりしてなんとか500」
「ほら見なさい。頑張って売ったことを褒めてもらいたいのか知らないけど、結果は引き分け。あなた達はお店を閉めなきゃいけないのよ」
「いいや、まださ」
「なによ、往生際が悪いわよ」
「メイドのお姉ちゃんは、"今月の”売上本数で勝負しようと言ったんだ」
「それが何よ」
「楓さんがやってきたあの日、午前中に売れてたんだよ。きな粉棒の最後1本だった在庫がね」
「え」
「だから俺たちは今月501本のきな粉棒を売り上げた。だから」
「嘘よ! 証拠を出しなさいよ、証拠を!」
追い詰められた真犯人さながらに、楓が抵抗する。確かに証拠と言われれば弱る。いくらレジを通していたとしても、後から操作しただのとゴネられたら言い返せない。
そのとき、部屋のドアが開いた。叶である。
「勝手なこと言わないでくれる。ここ駄菓子屋ぷぷは歴史ある縋野グループの一事業なのよ」
(え、そうなの?)
「もし不正会計なんてしようものなら信用に関わるわ。第三者機関も使って徹底的に調査しましょう。ただし、もしも貴女のただの言い掛かりなんだとしたら、その時は出るとこ出るわよ」
「そんなの、卑怯だわ。だって、そんなの……」
自分がやってしまった過ちに気がついたのが彼女は顔を真っ青にして駄菓子屋ぷぷから出ていった。外では夏の虫が少し哀しそうに鳴いている。




