突然の訪問者
「単刀直入に言うわ。この店、即刻撤退しなさい」
突然やってきた知らない女が、いきなり閉店を迫ってきた。この先いったいどうなっちゃうんだー。
ーー前日の夜。
「マスター、ビール!」
俺は片桐さんの店bar C-SHOCKに来ていた。
「はいよ、お嬢ちゃん。オレンジジュース」
小さくなってからもこうして来ては、タダ飯にありついている。片桐さんからすれば、近所の子どもがちょくちょく遊びにきて、大人の真似事をしているくらいに映っているだろう。それでも毎度ジュースとお菓子を用意してくれているところを見ると、集られるのも満更でもないみたいだ。まあ可愛いからな、いまの俺。
カウンター席で足をぶらぶらさせながら、手持ち無沙汰だったので、店のメニューを見てみる。濃厚ポテトサラダ、きゅうりの浅漬け、薫る燻製5種盛り、半熟玉子とカリカリベーコン。当時から変わっていないメニューたち。
こう見えて片桐さんの料理の腕は一級品で、通常メニューとは別に、“気分で作っちゃう”その日限りの限定メニューもある。憶えているのは、蛤のみぞれ蒸し、竹の子の土佐和え、ブリのカマ焼き……もはやバーではなく小料理屋のラインナップである。
今日の限定一品はどうやら冷やし中華らしい。これまた美味しいだろうな。これは是非ともお相伴に預からねば。
などと思っていたら、スマートフォンが震えた。チャッピーからである。
「申し訳ないがすぐに戻ってきて欲しいニャ」
のっぴきならない様子に困惑する。理由を訊く。
「頼まれていたきな粉棒、誤発注しちゃったみたいだニャ」
なにい。そういえば、家を出る前に、きな粉棒があと一本だったから追加で発注をお願いしていたのだった。最近は有能感すら漂っていたチャッピーだが、どうやら久しぶりに本領を発揮したらしい。まあ機械だから、バグくらいあるよな。
「で、何本発注したの」
「1000本だニャ」
「せっ、1000本? キャンセルはできないの?」
「キャンセル不可である代わりに安く売っているネットショップだったから、返品はできないみたいにゃ……」
なんという。これはどうにかするしかあるまい。
翌日の朝、1000本のきな粉棒が詰められた段ボールたちが届いた。




