インフルエンサーを活用せよ
放課後、予告通りに来海がやってきた。
「先輩、どこいきます? 屋上? 図書室? それとも……」
「じゃあうちくるか」
「え、えー/// だって、私たち出会ってまだそんなに、えー」
「嫌ならいいけど」
「嫌なんて誰も言ってませんよーだ」
そんなことを言いながら、二人で校門を出た。来海は折り畳み傘を丁寧に開いて差す。俺は小雨だったから、何も差さずに歩いた。
「はい着いたよ」
「早っ。こんなに近いなら言ってくださいよ。折り畳み傘差しちゃったじゃないですか」
来海は「もうー」と言いながら折り畳み傘のヒダを一枚一枚丁寧に畳んでいく。
「先輩、毎朝何時に出てるんですか」
「8時15分」
「いいなあ。私なんて7時55分ですよ」
来海の家はちょっと遠いのか。帰りの時間は気をつけてやらないとな。
「ただいまー」
「おかえりニャ」
駄菓子屋スペースでチャッピー(老婆の姿)が出迎える。
「こんにちは。へー、ここにも駄菓子屋あったんだ。私は正門側の『スプーン』しか行かないからなあ。って、えっ! この前言ってた駄菓子屋って」
「うん、私の家だよ。宣伝に使わせてもらっちゃった」
「ううー、まさかのPR案件。ステマの片棒を担がされてた」
小4なのにいろんな言葉知ってるんだなあ。インフルエンサーだから大人社会で揉まれているのかな。さっきも折り畳み傘を畳みながら、何気ない会話で場を繋いでいた。こういうのって大人になってもなかなかできるものじゃない。能力高いなあ。
「じゃあ商品開発してるから、なんかあったら呼んで。行こ、来海」
「後でジュース持って行ってあげるニャ」
ありがとう、と言って俺たちは駄菓子屋の隣にある別の空き部屋へと移動した。
「おばあちゃん、猫みたいな喋り方だね」と、開口一番、来海のツッコミをくらったので「結構田舎から出てきたから、昔はああいう方言だったみたい」と適当ににごした。
「で、ここで何するの? さっき商品開発がとか言ってたけど」
「よくぞ聞いてくれた。これから夏に向けての新商品を開発します。だから来海には、商品開発の企画から考えてもらって、商品化までの道のりを動画にして発信してほしいのだ」
「え」
これぞストーリー作り、ブランディング、フォロワーへ拡散という、インフルエンサーマーケティングのフルコンボである。
「案件じゃないですか」
「嫌なら学校で配信してたこと、先生に言ってやろ」
「もうー、優越的地位の乱用〜」
そんなことを言ったり言わなかったりして、来海のインフルエンサープロジェクトが幕を開ける。




