8話 新たな生き残り6人
翌日
マルスは村の近くにある森の中に入っていく。
マルスは森のを慎重に進む。魔物の気配があるからだ。もう森に魔物が戻ってきている。スタンピードからまだ1月ぐらいしかたっていない。
マルスにはスタンピードの仕組みも魔物が生まれる仕組みも知らない。いや自体が人類が分かってはいない。
スタンピードでは何千という魔物が村を襲い村は壊滅した。その魔物は村の人間を食べつくすと他の場所に移動していった。
その魔物たちはどこに行ったのか、大きな街で騎士に倒されたのかは分からない。だが今この森に魔物が戻ってきている事ははっきりしている。
村では定期的に魔物狩りを行なっていた。魔物を狩らないと増えすぎてスタンピートを発生させるからだ。
マルスは此の侭ではいけないと思っている。魔物の放置は死活問題だ。何とか魔物を狩らなければいけない。
「いやーーー助けてーー。」
森の奥から人の叫び声が聞こえた。マルスは声のする方へかけていく。
そこには4人の人間がゴブリンに囲まれていた。大人の男と女、そして子供が2人大人の男女は必死になってゴブリンを追い払おうとしている。だがゴブリンは10匹以上いるために中々追い払えない。ゴブリンは子供を攫うつもりのようだ。子供を狙い大人の人間をけん制している。
マルスはファイヤーボールをソフトボールぐらいの大きさにして6つ造る。それを一つ一つ投げるような形でファイヤーボールを放っていく。ゴブリンは後ろからの攻撃に気づかず、ファイヤーボールが当たると燃えていく。ゴブリンに当たったファイヤーボールは当たるとゴブリンを包み込むようにまとわりつき炎で包んでいく。ゴブリンは熱と息が出来なくなり死んで往く。
マルスはファイアーボールを6つすべて投げてしまったので、又新たにファイヤーボールを作る。
ゴブリンはマルスに攻撃するために向きを変え走ってくる。マルスはまだゴブリンとの距離があるために冷静である。
マルスは新たに作ってあるゴブリンめがけてファイヤーボールを投げる。投げるというより腕を投げる方向に振っている。腕を振るとマルスの頭上に作られたファイヤーボールが一ずつゴブリンに向かっていくのだ。
6つのファイヤーボールの内5つがゴブリンを燃やしていった。マルスは11匹のゴブリンを倒した。するとマルスの体、いや体の内部に変化が起こった。マルスの体の内側から力が湧いてくるのだ。今までスライムなどを殺してレベルを上げていたがこんなことは無かった。
何か他の原因があるのかもしれない。
だが今はそんな事を考えている暇はない。マルスは襲われていた人たちに声を掛ける。
「大丈夫ですか。」
「あ、ありがとう。」
「君は凄いな、魔法使いは子供でも魔物を倒せるんだな。本当に助かったよありがとう。」
「どうして森の中にいるんですか。危ないですよ。」
「・・・・・いや、今までは魔物がいなくて何とか暮らしていたんだよ。」
「スタンピードで森に逃げたんですか。」
「そうなんだ逃げれたのは偶然だったけどね。」
「普通は森のは逃げませんよ。魔物に向かっていくようなもんですからね。」
「アハハハ、そうだよね。」
「もう一人の大人の女性がマルスに声を掛ける。
「僕はいくつなの、それと森に1人で入ったの。」
「俺は10歳で、マルスって言います。森へは一人で魔物が出てくるか調査に来ています。」
「へっ、本当に一人でこの森に入ってきたんだ凄い。」
「俺も人が居るとは思いませんでしたよ。」
「後二人いるんだ。実はその人たちに守ってもらっていたんだ。」
「そうなんですか、その人たちはどこにいるんですか。」
「手分けして食料を調達に行っているんだよ。」
「そうなんですか、ならその人たちと合流したら俺の村に来ますか。」
「えっ君の村。」
「あ、いや正確には俺の父ちゃんの村かな、父ちゃんはスタンピードで死んだから俺が村を守っているんだ。」
「そうか君は村長の子供なんだね。」
「俺は西13村なんだ。」
「私たちは村の者ではないんだよ家族で行商をしていたんだ。」
「そうなんですか、あとの二人も商人さんですか。」
「いいや二人は冒険者だよ。」
「そうですか冒険者ですか。強いんでしょうね。」
「そうだね、でも君もスタンピードを戦いながら生き残ったんだからね。私たちみたいに隠れて生き残ったのではないからね。」
「そうですか楽しみですね。その二人とはどこで落ち合う事になっているんですか。」
「ここで待っていればそのうちに来ると思うよ。」
「おおーーーい。ゴブリンに襲われなかったか、って襲われたんだな。」
「おいおい大丈夫だったのか。」
冒険者の二人はゴブリンの死骸を見ながら聞いてくる。
「はい無事でした、この子が全部ゴブリンを倒してくれました。」
「おいおいマジかよ。こんな子供がゴブリン10数匹を殺せるのか。」
「魔法使いなんですよ。」
「魔法使い様かなら納得だな。」
冒険者の二人は魔法使いと言ったら納得してしまった。マルスは魔法使いが、貴重な存在とは思っていなかった。
「俺は西13村のマルスです。よろしくお願いします。」
「そうだ、自己紹介がまだだったね。私は行商をやっていた。メイスン、隣が妻のセリルと子供のトムとレミだね。」妻のセリルとトム、レミはお辞儀をしてあいさつする。先ほどのゴブリンに襲われた事からまだ立ち直っていないようだ。真っ青な顔をしている。
「じゃぁ、俺たちの番だな、俺は冒険者でガレイス。」
「俺はモレガだ、宜しくな坊主。」
「メイスンさんこれからどうする、魔物が森に戻って来たからもう森には住めないぞ。」
「その事なんですが、マルス君の村に行こうと話をしていたところです。」
「坊主の村は無事だったのか。」
「無事では無かったですね。俺と他の子供たち10人以外は魔物に殺されましたから。」
「そ、そうか、えーー。子供たちだけなのか。」
「そうです今は隣村の生き残り2人もいますから12人ですけど。」
「マジか、お前凄いな。」
マルスたちは村に向かい走っていた。魔物が出る森ではノンビリと歩いていてはいつ襲われるか分からない。メイスン夫妻の子供はガイレスとモレガが背中に背負い走っている。
マルスたちは2時間以上走り切り森をぬけた。
「森を抜ければ一安心ですね。」
「やっと森を抜けたな。魔物が出なくてよかった。子供を背負っては戦闘出来ないからな。」
「す、すいません、私では背負ってこんなに長時間も走れません。ありがとうございます。」
「いいさ、気にすんな。こんな時は助け合わないとな。いずれ商人で成功したら何か貰うから心配すんな。アハハハ。」
「必ずカレイス様とモレガ様には成功して報酬をお渡しできるようになります。お約束いたします。」
「まぁそんなに気張らなくてもいいから、気楽にいこうや。」
「あそこが俺たちの村ですよ。」
「本当に人がいる。」
「ああ、あれ以来人に会っていなかったからな。人がいるのはなんかいいな。」
「おーーーい、みんな森で人を見つけてきたぞーー。」
「マルスーー、おかえりーー。」
「おかえりーー。」
「本当だ、大人だーー。」
「おー大人だーー。」
「大人だー。」
「おいおい、本当に子供しかいないのか。よく生き残ったな。」
「マジかこんなに子供がいて大丈夫なんか。」
「エミー、この人たちは森の中で暮らしていたんだ。」
「マルス、お帰り。初めまして私はエミーと申します。皆さんお腹空いていませんか、今からみんなで食事なんです、一緒に食べましょう。」
「えっ、食べていいのか、君たちの食料が減ってしまうぞ。」
「大丈夫ですよ、マルスが食料を確保していますから6人ぐらい増えても当分困る事はないですよ。」
「えーーーーー。坊主お前凄いな。」
森で暮らしていた6人は久しぶりに温かい美味しいスープとまともな食事をしたのだった。