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3話 みんなで協力

マルスは”俊足”を使い走っている。だが10歳のマルスにはまだ体力がない。すぐに疲れてしまい歩くことになる。

「何とか体力をつけないと魔物に襲われたら終わりだな」


マルスはとなりの開拓村へ向かっていた。”俊足”を使えば隣の村なら往復できると考えたのだが体力がなく走る事が出来なくなっていた。

マルスはとなり村へ行くことを諦め周辺の調査に切り替えていた。村には子供たちが居るから日が沈む前に帰らなければならないからだ。


「スタンビートの後って魔物はどこに行くんだろう。」

マルスは独り言を言いながら一人の寂しさを紛らわしている。マルスの村から大分離れたところまで来ているが人の気配も魔物の気配も何もない。もうこの世界に人が居ないのでは思う程であった。


マルスは魔物がいない事を確認するために小高い丘まで来ていた。

「ここから見ても何もないか。」

丘の向こうは草原が広がっている、その草原を抜けると森になるがさすがに一人で森には入れない。魔物がいない状況でも何が出てくるか分からない。万一魔物に出くわしたら森では俊足を活かせないからだ。

マルスは走りながら魔法の練習をするようにしていた。少しでも早く攻撃が出来る様にならなくてはいけない。みんなを守る力を付けなければと思うマルスである。


「何とか他の魔法も覚えないとな。」


マルスは村の子供達も何かしらの攻撃手段を持てないかと考えていた。走りながら色々な事を考え魔法の練習をしながら周りを警戒している。時折リュックサックの中の相棒にしたスライムがもぞもぞする。マルスは少し休憩する事にした。スライムをリュックから出してスライムに向かい話し出す。なぁスライム、おまえはさぁ魔物なのになんで俺といるんだ。普通はいないだろう。このスライムはマルスと融合してからマルスの後をついてくるのである。マルスも最初は気のせいと思っていたが、右へ行けば右に寄ってくる。左に行けば左に寄っていくのだ。マルスもスライムが可愛くなり襲わないのであればいいやと思い連れて歩くことにした。村に置いていくわけにもいかない事も理由である。

まじまじと見るとスライムも色付きであることが分かる。「あれお前こんな色だったか。なんか色々な色に見えるぞ。」

マルスとスライムが休憩していると、別のスライムが寄ってきた。マルスはそのスライムを鑑定してみる。「鑑定」スライム レベル1 スキル 強化 「おーっ強化だ。強化って何が強化されるんだろう。」

マルスはそのスライムに触れて強化を吸収した。吸収したはいいが何も変わらなかった。何が変わったのが分からない。マルスはそのうちに分かるだろうと軽く考えている。

吸収した後、残されたスライムに変化はない。スライムがスキルを使うなど今まで聞いたことがない。スライムはスキルを持っていても使えないのではないかとマルスは予想している。魔物は自分では使えないスキルを所持している可能性があると思っている。

スライムの魔法スキルがいい例だ。スライムは魔法を使えない。言葉も喋らない、知能が低いからだ。それはマルスが融合したから分かった事であった。スライムと融合して一つになった時にスライムは従順になっていた。多分融合したときは知能の高い方が主導権を握れると仮説を立てたのだ。だがマルスは実験をするつもりは無かった。万一人間と融合してりして元に戻れなくなってしまう可能性がある。マルスは融合の研究はしたいが生きることを今は優先していかないといけない。数日先の食料もない状況でそんな事は出来ない。



休憩を終わりにして又マルスは走り出す。人と魔物を探し警戒しながら魔法の練習をする。それを村に着くまで行っていた。マルスの頭の中はオーバーヒートしそうなほど熱くなっていた。


村へ帰るとみんなが待っていた。何も問題は起こらなかったようだ。8歳のトルスとジミーが村の外へ出て食べられそうな魔物を数頭持ってきたと伝えてきた。

「トリス、ジミー凄いじゃないか、良く持ってこれたな、お前たち怪力のスキルでもあるんじゃないか。」

「マルスぅ、10歳にならないとスキルはもらえないよ。教会に行かないといけないんだから。あるわけないでしょう。」

「まぁほら褒めるのはノリと突っ込みだからさ。」

「全然意味が分かんないよ。」

「まぁ気にすんなよ、お前ら凄いって言っているんだからさ。」

「そうだね。俺たちは凄いんだよね。」

「そうだぞ他のみんなも協力していて凄いな。シルクとテミもいっぱいお手伝いしたか。」

「うんしたよ、畑でお芋を引っ張ったの。」

「私もお芋掘ったーー。」

「そうか二人ともえらいなーー。」


「「えへへへへ。」」


「さあみんなご飯にするわよ。」


「「「「はーーい」」」」


みんなで魔物の肉に噛り付き血の残っている肉を食べる。やはりみんなお腹がすいているのか多少不味い肉でも残さずに食べる。マルスはみんなに聞こえるようにエミーと話をする。

「エミー、塩は何日ぐらい分あるの、」

「マルス・・・今の様に使っていたら7日ぐらいでなくなるわ。でも魔物の干し肉があるから塩は無くなるけどまだ大丈夫よ。」

「エミー、俺はとなり村を見てこようと思うんだ。でも1日じゃ帰ってこれない2,3日はかかると思うんだ。その間みんなの事をお願いできるかな。」

「任せて、その代わり塩とか色々と調達して来てね。」

「うん。でもすぐには行かないよ、まずはここに柵を作って少しでも安全にしてからだよ。」

「そうね、じゃぁ明日からは柵作りと畑仕事で別れましょう。」

「みんな男の子は明日からはこの家の周りに柵を作るからね。頑丈な柵を作ろうね。女の子はエミーと畑で頑張ってね」


「「「「おーー。」」」」


「「「はーい」」」


翌日は男の子たちは壊れた家から使えそうな木の板を集めてくることから始めた。崩壊した村でもまだ使える物は残っている。木の板を探す傍らで使えそうな道具や武器になりそうな物は壊れた村長の家に運んでいく。

この崩壊した村には60世帯の家があった。人口も200人を超えたばかりでこれからもっと大きな村になっていく予定だった。それが今は10人の子供だけとなってしまった。

マルスたちは元々村の防衛用にあった柵を使う事にしていた。まだ壊れていない柵を剥がしたりして家までみんなで持っていく。それを一日中修復作業を行っている。


「これくらいの材料があればこの家の周りなら高い柵を作れるね。」

「高い柵だと倒れちゃうよ。」

「大丈夫だよこうやって、今ある柵を利用して支えるように木の板を並べていくんだ。それで丸太みたいな棒で斜めに支えを作れば完成だね。」

「凄いね、これなら魔物も入ってこれないね。」

「これはね魔物だけじゃないんだ。人間用にもなるんだ。今は食料なんかが無くなっている人間の大人が泥棒になるかもしれないから。今の仲間以外はここに入れない様にするんだよ。」

「えっ、大人って泥棒するの。」

「トリス、大人も子供もお腹がすいていたら、目の前に食べ物があったら食べちゃうでしょう。食べ物をわからない様に隠しておくんだ。」

「そっかそうだよね、お腹がすいていたら食べちゃうね。」


マルスたちは数日かけて村長宅の周りを柵で囲んで元々あった柵を補強したような物だが柵の板を2重にしたり横向きので使用していた柵を縦に使用して高さのある物にしていた。

村中を守っていた柵だけあって材料にはこまらなかった。


「何とか形になったね」

「りっぱよこの穴は何。」

「それはね。魔物が来た時に中から槍で攻撃するんだ。こうやってこの穴から木の槍で突き刺すんだよ。だからこの槍を沢山つくっておくんだ。トリス、ジミー、二人にお願いがあるんだ。俺がとなり村に行っている間はみんなを守ってくれな。あとこの槍を沢山作っておいてくれ。先がとがっていればそれでいいから、形なんか気にするなよ。」

「マルス、分かっているよ。俺はもう大人だからな。」

「ジミー、トリスを頼むよ。」

「ええーーーー。トリスの世話だけでつかれちゃうよー。」

「ジミー、何言ってんだ。俺がジミーの世話をしているんだぞーー。」

二人は言い合いをしていたがエミーに怒られてシュンとしてしまった。だけどこの二人が明るくしているおかげで他のみんなも頑張れているようだ。親が魔物に殺され、みんな悲しい中明るい人が居ると元気になる。

みんなで騒いでいる時だけは親が死んだことを忘れられるのかもしれない。




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