2話 みんな兄弟だよ
色々なスキルを吸収したマルスだが、今融合しているスライムと分離した時に吸収スキルが残っていれば成功だ。マルスはスライムと分離してみる。「分離」
マルスとスライムはきちんと分離が出来た。マルスは自分を鑑定してみる。
マルス・ケントレー 男 10歳 レベル5 スキル 鑑定 融合 分離 吸収 火魔法 土魔法 水魔法 風魔法 治癒魔法 光魔法 剣 となんと分離後吸収したスキルがきちんと残っていた。「やったー。」
マルスは嬉しくなりスライムを抱えて生きている魔物を探し回った。すると瀕死のウルフを見つけるマルスはウルフに鑑定をかけて確認する。「鑑定」グレーウルフ レベル6 スキル 噛みつき 俊足 「おおー」マルスは俊足スキルを吸収してみる。
「吸収」マルスはグレーウルフを鑑定し俊足部分を見ている。ダメだ。「あっ。」鑑定しながらグレーウルフに触れていなければ吸収できないのだった。もう一度マルスはグレーウルフに触れ、鑑定しながら吸収スキルを使う。「吸収」すると俊足スキルがマルスの中に入ってくる。マルスは自分を鑑定するとスキル欄に俊足の文字が表示されている。「おーー。」
マルスはスキルに夢中になり昼までに戻る事を忘れていた。
もうとっくに昼は過ぎていた。太陽は真上から少し西に傾いていた。
マルスは大急ぎで村へ戻りみんなの所に走っていった。
「ごめんごめん。遅くなった。」
「もうマルスはどこまで行っていたの、心配したんだからね。」
「ごめんよエミー。それより食料は見つかった。」
「ええ、何とか食べられる物はあったけど。数日分しかないの。後は畑に残っている野菜を掘り起こすしかないわね」
「そうだね、でも村の外に魔物が沢山いたから魔物の肉を干し肉にして食料にしよう。」
「あっ、それいいわね。塩とかは村中からかき集めて来るわ。」
「じゃぁ、塩を集める係と調理する係に分けよう。」
マルスは女の子たちは調理係、男の子たちは塩などの調味料と食料集めに分けてもう一度村の中を回ってもらっう。
マルスは又村の外に走っていき魔物を鑑定して回っていた。
スライムを抱えたままマルスは走り回っていた。何となくこのスライムを気に入ってしまった。最初に融合したせいか愛情がわいてきたのだ。スライムもマルスに抱きかかえられているときは大人しくじっとしている。一度融合しているので安心しているようだ。
マルスはまだ生きている魔物を探していく。死んでいる魔物ではスキルを吸収できない、鑑定では死骸となりスキル自体が消えている。
マルスは生きている魔物を探し回ったがもう生きている魔物はいなかった。スライムは魔物の死骸に集まってきているようでノロノロと進んでいる。スタンビードで魔物の足の速さが違い今頃この場所に到達したようだ。スライムは弱い魔物だが数が多い。中には少し色がついているスライムもいる。マルスは色付きのスライムを鑑定してみる「鑑定」スライム レベル1 付与魔法 「おーー、付与魔法だ」
マルスは色付きスライムから付与魔法を吸収する。この色付きスライムは注意深く観察してみると魔法の種類によって色が違う事が分かった。良く見ないと色の違いが分からない。これだけの集団のスライムがいたから色の違いが分かっただけで、普通1匹か2匹のスライムだけだと気づかないだろう。
マルスは小ぶりな魔物を数頭纏めて担いで村に戻って行った。
「おーーい、魔物を持ってきたぞ、解体しよう。」
「マルス、解体なんてやった事ないよ。」
「僕、俺だってやったことないよ。でもやり方は分かるんだ。解体している所を見たことがあるからね。みんなでやってみよう。」
「そうだね。」
それからマルスは依然見た魔物の解体を思い出しながら魔物の血抜きを行なって皮をはぎ内臓を取っていった。魔物の皮はボロボロになり、血抜きもうまく出来なかった。だけど食べられなくはない。少し臭いがあるが食べる物があるだけましだ。
今日は魔物の肉をみんなでお腹いっぱいになるまで食べた。塩を多めに振って臭いのを誤魔化して食べる。みんなお腹がすいているので少しぐらいの匂いなど関係なしに食べていく。食べられそうなパンと魔物の肉と野菜を煮込んだスープ、村のお祭りでしか食べられないような豪華なご飯となった。
開拓村では肉などあまり食べられない。たまに狩人が魔物などを狩った時に少し分けてもらう程度で後は基本みんな売ってしまう。
「みんな聞いてくれ。俺たちのこれからの事だ。俺たちはこの村を出ていくかこの場所で村を再建するかを考えなくてはいけないんだ。俺を含めてみんな子供だ。他の場所に行けばみんなバラバラになってしまうと思う。だからこの場所でみんなで暮らしていこうと思っているんだけどどうかな。」
「マルス、私もそう思っていたの。まだ小さい子もいるし魔物に襲われて他の町や村も人の事を構っている状況ではないと思うの。それにどこの町に行けば分からないわ。」
「そうだよね。魔物が他の町や村を襲っていないなんてことは無いからね。ここにいた方がまだ生き残れる可能性が高いよね。」
「マルス、俺はマルスに従うぞ。なぁみんな、そうだろう。」
「うん僕もマルス兄ちゃんと頑張るよ。」
「うん」「うん」「・・・・・」
「よし明日からまたみんなで頑張ろう。寝る時は地下に寝るようにして昼間は村を少しずつ直していこう。でも食糧確保が一番だけどね。」
こうしてスタンビード後初めての外での食事が終わり、日が暮れる頃にはみんなで地下に入り就寝した。
マルスは夢を見ていた、その夢はこの世界ではない場所に自分がいる夢であった。大きな建物が立ち並び大勢の人が歩いている。色々な場面に切り替わっているが何となく懐かしい思いがあふれてくる。
知っているようで知らない、なんとももどかしい夢ではあったが、魔物に襲われる夢より数段いい夢であった。
マルスは時々同じような夢を見ることがある。その夢はこの世界ではありえない事が沢山ある。空を飛んだり地下を走る長い乗り物とありえない事ばかりの夢だが楽しんでもいた。奇想天外な夢であるが中々面白い夢であるとマルスは思っている。夢の中の物を工夫すればこの世界でも実現できるかもしれない。
そんな夢も朝になれば現実が待っている。
「おはよう。」
「おはよう、マルス。もう少しで夜が明けるわ。」
「そうだね、今日はみんなで畑を治そうと思うんだ。少し手を入れればまだ何とかなる畑もあるようだからね。」
「畑の事は私たちに任せて。」
「エミー達に」
「そうよ畑仕事はみんな手伝っていたから少しは分かるわ、だけど村の外の事は私たちじゃどうにもできないわ。マルスにお願いするしかないの。」
「そうだね、じゃぁ僕、いや俺は村の外に行って他の場所とかを調べてくるよ。」
「お願いね、近くに大人の人が居ればいいんだけど。近くの村も魔物に襲われて壊滅しているんでしょうからね。」
「この近くには俺達しかいないと思う。人のいる場所までは何日もかかるし小さい子供には無理だと思うよ。だからこの周辺を調べてくるよ。夜までには戻るようにするからね。みんなを頼むね。」
「任せてこれでも一番のおねえちゃんですからね。」
「ハハハ、そうだね。下は5歳からの10人兄弟だね。」
「そうよ村の生き残り10人はみんな兄弟のようなものよ。」
マルスは一人村の外へ向かっていった。